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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
6章上 学園祭と決断

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13話 動物と地名

夜の長い戦いを終え、ようやく一息つくことができた。


梅雨からの連絡で予想より早くデートのアポイントを取ることになったが、退路を塞いだという意味ではこれで良かったのかもしれない。


次のデートで恋人を作る、それくらいの気概で取り組ませてもらう。


それなら来週ではなく今週末に誘えと思った諸君、浅はかである。


デートの知識がほとんどない僕に即席で良いプランを作れと言われてもどだい無理な話だ。


デートをする以上、相手に楽しんでもらう必要がある。その為には事前に傾向と対策を練って臨むべきである、これは勉強と同じだ。


というわけで、明日は街の探索に努めようと思う。世の中の若者たちがどういったところで遊んだり食事を取ったりするか調査だ。


勿論それだけではない。僕に協力してくれる有志たちを召喚し、街を回りながらアドバイスをもらう算段である。


既にアポイントは取っており、承諾は得ている。今日誘ったというのに翌日を空けてくれる心意気、我ながら熱い友情魂に泣けてくるぜ。


まあ結果が出る前に喜んでいても仕方がない、僕は明日の前哨戦に向けて英気を養うのだった。



ー※ー



「……」


現在10時10分前、目的地に到着した僕は既に疲弊していた。


理由は2つあり、1つは休日も容赦なく電車が混んでいたからである。通勤や通学する人たちが減るというのにどうしてこんなに人がいるのか、おそらく電車に乗っているだけで快感を覚えてしまう特殊な方々が5割くらいいるんだろう。そうでなきゃやってられん。


そしてもう1つの理由。


「ふー、久々に来たな」


僕の隣に立つ、男子高校生といえばとAIに質問したら名前が出てくるランキング1位、青八木雨竜のせいである。


今日の会合に誘ったとき、雨竜はすんなり了承したのだが、乗る電車も変わらないため一緒に行こうと言われたのだ。


特に断る理由はないと思っていたが、僕は雨竜の発光具合を舐めていた。夜に集るハエの如く、女子どもの視線が飛んでくる飛んでくる。一緒にいる僕まで値踏みされているようで居心地悪いことこの上なかった。そのフェロモン、佐伯少年あたりに売ってはどうだろうか。奴なら間違いなく、大金を叩くだろう。


そんな青八木フェロモンの犠牲になった僕のテンションは低かったが、いつまでも沈んではいられない。


「ここが若者の街、渋谷か」


初めて訪れる土地に少しずつ気分が上がってくる僕。人が多すぎるのが玉に瑕だが、東京なんてどこも似たようなものだ。活気が良いと前向きに捉えようじゃないか。


「若者は渋谷を若者の街とは言わないけどな」

「……」


そして話の腰を折らせたら日本一の男は、容赦なく僕のやる気を削いでくる。コイツは本当に僕を友人だと思っているのだろうか。


「じゃあ若者はなんて言うんだよ」

「渋谷だよ」

「お前、犬に犬って名付けるのか」

「なんで飼い犬と地名が同じ扱いなんだよ!」

「秋葉原はアキバって言うじゃねえか!」

「3文字が5文字みたいに扱えると思うなよ!」

「3文字の全てに謝れ! 謝ってから渋谷の愛称を言え!」

「渋谷だよ!」


ダメだコイツ。自分が今立っている場所を全く理解していない。こうして土地に感謝できない奴が増えていくのか、とても悲しい現実である。


「僕は決して見捨てないからな、ぶーやん」

「ぶーやんって……」


雨竜がぶつくさ言ってくるが無視、僕は待ち合わせ場所になっているワンコロの像へと向かう。


そこは僕ら以外の待ち合わせにも使われているようで、人が集まっては散ってを繰り返していた。これだけ人が多いと合流するのも一苦労だからな、ワンコロは良い仕事をしている。


「さて、待つか」


追いついてきた雨竜が僕の隣に立って待つ。


そして再度放たれる青八木フェロモン、異性のチラ見をこれでもかと言わんばかりに引き出してくる。


「雨竜、お前ちょっと離れろ」


何度も犠牲になりたくない僕は、雨竜に移動するよう声を掛ける。


「なんでだよ。固まってないと捜すの手間だろ」


だがしかし、自分のフェロモンの存在を信じていない雨竜からは否定の意が飛んできた。


この野郎、サラッと人間アピールしたつもりか。それじゃあバカは騙せても僕は騙されないからな。


「お前と待ってると女子の視線が刺さるんだよ、値踏みされてるようでいい迷惑だ」

「値踏みと言えば、足を踏みつけて確かめるってことから評価するって意味になったんだよな」

「人の話聞けよ!」

「うるさいぞ雪矢、人の視線集めるからな?」


ムカつくムカつくムカつく! なんで僕が怒られなきゃいけないの!? 悪いのこの池杉面座右衛門のせいじゃん! 僕の真っ当なツッコミを蔑ろにしやがって、終いには暴れるぞコンニャロ。



「……あなたたち、ホント分かりやすいわね」



いつから僕らのやり取りを見ていたのか、どこか呆れたような声を漏らす女子が寄ってくる。


紺のカーディガンに青のデニムというシンプルな出立ちながら、しっかりと着こなし脚の長さを強調させている。


勉強合宿の時とはまた違った服装ながら、好みがなんとなく把握できるのが面白い。


「ごめんなさい遅くなって、人の波が思ったより激しくて」


謝りながら僕らに合流してくれたのは、我らが2年Bクラスの委員長である御園出雲だった。

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