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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
1章 桐田朱里と蘭童殿

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14話 散歩

「何? 雨竜の真似は止めてほしいだと?」


蟻の話で10分ほど盛り上がった後、桐田朱里からの提案に僕は驚嘆した。

嘘だろ、昨日あんなに練習したんだぞ? 嫌がる雨竜に気遣い講座をさせて、実践を元にあれだけの完成度へ持っていったというのに、それが必要ないだと?


「うん。だって廣瀬君が青八木君の真似してたら、笑っちゃって対策どころじゃなさそうだし」


気持ちは分かるが、そこまでドストレートに言わなくてもいいんじゃないだろうか。

そりゃ君を最終的に笑顔にすべく取り組んだ内容だが、こんなクスクス笑ってもらうつもりはなかったんだぞ? 笑い違いなんだぞ?


「でも、青八木君が言いそうなことは言ってほしいかな、不意打ちがやっぱり1番怖いし」


こやつ、僕の優しさにつけ込んでどんどん要望を出しやがる。雨竜とのデートを成功させるための今日のデートだし、呑めるところは呑むべきなのだろうが。


「……分かった、それで手を打ってやる」

「ありがとう」


腑に落ちない部分はあるが、昨日の特訓が半分は活きるわけだし良しとする。寛容な師であることに感謝してほしいものだ。


「とりあえず方針決まったしどこか行くか。行きたいところあるか?」


時刻は13時半ちょっと前。喫茶店行くには早い気もするが、そもそも駅の周りは気楽に散歩できる場所じゃない。人は多いし、キャッチもそれなりにいるしな。


「えっと、少し歩いてからどこか入るって感じでいいかな?」

「任せる。公園の方へ行く感じか?」

「そうだね、ぐるっと回って駅前に戻ってこられればいいかなって」

「了解だ、途中でどこか行きたくなったら言ってくれ。付き合うから」

「……うん」


ざっくり散歩コースを決めた僕たちは、ようやく交番前から脱出することができた。

警察の方、蟻について語らっていた男女のことは忘れてあげてください。不審者ではありません。


さてと、このままビル風を感じながら歩いても良いがそれではデートの意味はない。雨竜風に言うなら、共通の話題を振ってみるのがいいだろう。

僕と桐田朱里で何が一致するかなんて分からないが、学校が同じなのだからそこから幾らでも話題を探すことはできる。


「君は、どうして茶道部に入ったんだ?」


初手、僕は部活動の話を切り出すことにした。茶道部室で会話したこともあったし、そこまで不自然な導入ではないだろう。


「えっとね、最初は消去法というか、運動が苦手だから文化系にしようと思って」

「――――すまん、ちょっと」


話し始めた桐田朱里を遮り、彼女の進行方向へ身を乗り出す僕。

直後、歩きスマホをしていた男の肘が僕に当たった。

男は頭を軽く下げるだけで何も言わずそのまま去って行く。クソ野郎が、ちゃんと前を向いて歩け。ただでさえ道が狭いのに、お前みたいなのがいるから事故や諍いが多発するんだ。


「悪かった、話を遮って」

「……」


一発睨みをきかせてから桐田朱里へ視線を戻すと、目を丸くした彼女とバッチリ目が合った。そして、思ったより距離が近かったことに気付く。間に入ったのだから当然だが。


「……今のは、()()()の行動?」

「はっ?」

「ううん、何でもない! ありがとう、庇ってくれて」

「あ、ああ……」


桐田朱里は思い出したように距離を取ると、こちらを見ずに小さな声でお礼を述べた。

相手に気持ちを伝えるときは顔を見て言えと指導を入れたかったが、その前に彼女がスイッチを切り替えて笑みを見せる。


「えっと、部活の話だったね!」


そして、何事もなかったかのように会話を再開する桐田朱里。実際何もなかったわけだが、先ほどとは微妙に空気が変わったように感じた。僕の考え過ぎだろうか。


それにしても、さっきの質問の意味が分からん。

どっちの? 何と何の比較? 行動でいうなら僕以外あり得ないがなんで2択?


覚えておけ全人類よ、質問しておいて自己完結は最大級の悪だ。完結できた理由をちゃんと話すように。


「……廣瀬君、話聞いてた?」


あなたのせいで聞いてません。

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