1話 告白
「あの、その、忙しいときに呼び出してごめんなさい!」
刻は放課後。空の色が茜色に変わり始めるちょっとワクワクする時間帯。
僕こと廣瀬雪矢は、女子生徒から呼び出しを受けていた。
場所は階段と屋上を繋ぐちょっとした踊り場、開場されていない屋上に来る人などいないから、公共の場といえど現在二人きりである。
その上彼女は、僕と違うクラスにも関わらず、教室に来るのではなく、僕と廊下ですれ違うタイミングを見計らって声を掛けてきた。それだけでも、この状況をいかに内密にしたいかが伝わってくる。
「そう慌てなさんな。まずは名前を聞こうじゃないか」
「に、二年Dクラスの桐田朱里です!」
「桐田朱里。うーん、聞いたことないなあ」
「そ、そうですか・・・・・・」
何やら哀しそうな表情を浮かべているような気がするが、僕は人の顔を覚えられないので気にしないでもらいたい。
「それで、僕に話って?」
分かっていながら、僕は彼女を煽るように質問した。こんなテンプレにテンプレを重ねたような展開、察しが悪いとよく言われる僕でもこれから何が行われるか推察できる。
そう、これは告白。学生たちの青春を彩る愛の告白に違いない。僕は何度も、今日のように女子から一対一で話すことを求められてきた。
その経験が言っている、今日もまたお前は告白をされるのだと。
「あの、えっと、その……」
僕の言葉に動揺した桐田朱里は、案の定頬を赤らめながら言葉を詰まらせる。どうやら最後の勇気が出てこないらしい。
ははは、そう緊張するでないさ。僕なら慈愛の心を持って待ち続ける。君が勇気を振り絞るその瞬間までずっと。
そんな僕の思考回路が伝わったのか、桐田朱里は覚悟を決めたように僕と眼を合わせ、両手を前に差し出した。
握られていたのは、真っ白にワンポイントだけシールが貼られた手紙。これを差し出されたということはつまり、結論は一つしかない。
「これ、青八木君に渡していただけませんか!?」
――そうこれは、こんな感じに僕が巻き込まれる他人任せのラブコメである。
閲覧ありがとうございます。
もう少し粘って、つまらなかったら切ってください。
我慢はお肌の大敵です。