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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

男の娘シリーズ

魔王倒して帰ってきた友人と男の娘奴隷がにらみ合ってるんだが

美少女だと思って買った奴隷が男の娘だった


の続きになります。


奴隷の一人称が「私」に変更されております。ご容赦下さい。

 やぁ、俺は中の下くらいの顔をした一般的な日本人だ。

異世界に巻き込まれた者として召喚され、友人の悠君が勇者として旅立った後に城から追い出された哀れな子羊だ。

 それでもそこそこの力は貰ってたみたいで、何とか冒険者として大成したと言えるほどまでには来れた。


 そして、独り身の寂しさを埋めるために奴隷を購入したんだが。


「お兄様、今日のご飯はどうしますか?」


 奴隷のアキは大和撫子ともいえる純日本人を思わせる外見をしている。俺のことをお兄様と呼んでいるのは、アキが俺に対して兄のようだという感想を抱いてたことを聞いたからだ。俺としても弟と言えるほどに馴染んでいるので、この世界での最初の家族として受け入れた。


 元々、アキを購入した理由は性的欲求を満たす為だったのだが。


 まさかのおイタする直前、というか最中にアキが男ということが判明して、俺の息子はギブアップした。

だが後日、やっぱりどうしても可愛くて仕方が無くなった俺は、性欲の限界も相まってついにアキと結ばれてしまった。愛があれば相手の性別なんて関係なかった。気持ちよかったです。


 そんな感じで、アキという子は俺の奴隷兼弟兼恋人、という位置に収まっていた。もう奴隷解放してもいい気がするけど、守るという意味では奴隷のままのほうが便利なこともあるので、そのままでいる。

 別に『お兄様に支配されている感じがするから』と言われたからとか『時折する無理矢理系Hの為』とかじゃないんだからね!


「そうだな、今日は一緒に外食しようか」

「はいっ!」


 眩しいほどに笑顔なアキ。最近は俺と一緒なら何だっていいくらいの気持ちが伝わってくるレベルにまで親密になった。


「おーい!」

 

 外食先を探すためにアキと恋人繋ぎをしながら街を散策していると、懐かしい声が聞こえた。声のしたほうに顔を向けると、そこには長いこと切っていなかったのだろう髪をポニーテールにした悠君がいた。


「おー、悠君。久しぶり!」

「魔王倒してきた僕にそこまで気軽な挨拶をするのは君くらいだよ」


 悠君は苦笑しながらも変わらない人懐っこさのある顔で言った。

 なんと、ついに悠君は魔王を倒すことに成功したのか。生きたりイったりすることに忙しかった俺はすっかりその進捗のことが頭から抜けていた。


「そうだったのか、おめでとう!」

「うん、これでやっと…」


 ん?これでやっと、何だ?悠君は言葉尻を下げながらその視線は俺とアキが繋いでいる手を凝視した。信じられないと言わんばかりに目を見開いている。


「お兄様、この人はどなたですか?」

「ねぇ、この子は誰だい?」


アキと悠君が見たことも無いほどにお互いの顔を憎々し気に睨みながら俺に紹介を迫る。何だ?


「あぁ、この子はアキ。稼いだ金で購入した奴隷だ。俺の身の回りの世話をしてもらっている」

「ふぅん…()()()()()()()を、ねぇ」

「…?で、こいつは悠。俺と一緒に召喚されて、魔王を倒した勇者だ」

「…なるほど。()()()()()()()


 何でそこまで険悪な雰囲気を初対面で出せるんだ君達。困惑している俺を横に、二人は舌戦を繰り広げる。


「そう、僕が彼の1番の親友である悠だよ」

「そうですか、私は彼の恋人のアキです」

「…恋人!?そんな?!」


 何やら優越感に浸っているアキと、絶望したような顔をしている悠君。


「?何も間違ってないが、悠君どうしたんだ?」

「…あのね!この子は男の子でしょ!?恋人ってことはつまり…」

「あぁ、そうだな」

「ほぼ毎晩お互いの愛を確かめ合っていますよ」


 アキのドヤ顔なんて初めて見た。


「なっ…なっ…!つまり君は…女の子よりも男の子のほうが好きだったってこと…!?」

「…まぁ、結果的には」

「そんな…じゃぁ、今までの僕の葛藤は何だったんだ…」


 何やらぼそぼそと呟き始めた悠君。危ない人に見えるからやめて欲しい。どうしてこうなった?あっ、そうか。


「安心しろ、お前が親友であることは変わらんよ」


 昔から何故か俺を独占したがっていたからな、悠君は。そのおかげで碌に友人が出来なかったけど。日本で恋人なんてもってのほかだったし。ここはこういえば安心してくれるんじゃないかと思ったのだ。


「…ばかぁあぁぁぁぁぁ!」


 悠君は俺の言葉に安心するどころか、さらなる絶望を浮かべてこの世の終わりのような顔をして城のほうに逃げていってしまった。


 このまま放置するのは悠君対応マニュアル的にNGだ。追いかけなくては。


「あー…。ごめんアキ、ちょっと悠君追いかけてくるわ」


 そういってアキの手を離そうとするも、がっちりと掴んで離してくれない。


「…アキ?」

「お兄様は私より彼のほうが大事と言うのですか…?」


 今にも泣きそうなアキが上目遣いで俺を見てくる。やめてくれ、そのモーションは俺に効く。


「アキと同じくらい、あいつも大事なんだよ」

「…はぁ。そうですか。なら一緒に行きます」


維持でも手は離さないアキ。そういえばこの子は奴隷なんだ。きっと捨てられると思って怖くなったのだろう。空いてるほうの手でアキの艶やかな髪を崩さないように丁寧に頭を撫でると、落ち着いてくれたようだ。


「分かった。行こう」






「お前らが…お前らが彼を城から追い出すから!」


 悠君を追いかけて城に入ると、激怒した悠君の声が聞こえた。何やら俺を城から追い出したことを怒っているようだ。因みにここに来るまでに止められることはなかった。護衛しているはずの騎士がいなかったからだ。


「悠君!」


 声が聞こえた扉を開けると、今にも悠君が王族たちを殺そうと殺気を放ちながら剣を構えていた。騎士たちは悠君を取り囲んでいる。なるほど、だからここに来るまで騎士がいなかったのか。


「…!…ねぇ、何で彼もいっしょにいるの?」


 俺が追いかけて来る度に見せる嬉しそうな顔を一瞬浮かべたが、隣にいるアキを見て途端に不機嫌になる。


「アキはお前と同じくらい、大事なんだ。街中に放ってくることなんてできない」

「・・・何で!僕は君の、唯一になりたいのに!」


 悠君は1番が二人というのは御気に召さなかったらしい。親友というのはかくも難しい物なのか。


「取り合えず、剣を収めて。いくら何でも王族に剣を向けるのは良くない」


 まだ俺の言葉を理解する理性は残っていたのか、悠君は剣を収める。不機嫌な雰囲気はそのままなので、周りの騎士たちは納刀しながらも包囲は解かない。


 えっ、こんな王族と騎士が居ながら説得しないといけないの?


 途端に気恥ずかしくなってきたが、悠君は関係ないとばかりに言葉を紡ぐ。


「何で!?どうして!?僕はいつも一緒にいたのに!いつも君のことを想っていたのに!どうして今隣にいるのが僕じゃなくて彼なのさ!」

「俺も悠君の安否を想わなかった日は無いよ。でもな、俺は城を追い出されてからずっと独りだったんだ。悠君は仲間と一緒に旅立ったけど、俺には仲間もいない、悠君もいない。そんな中で、俺は孤独を紛らわせる為にアキを買ったんだ」

「何で男の子なのさ!女の子ならまだ…それでも嫌だけど…!まだ、分かるのに!」

「結果的に男の子だっただけだよ。見てよアキの見た目、悠君は初見で男の子って分かったみたいだけど、ぱっと見は可愛い女の子にしか見えないでしょう?俺は女の子だと思ったんだよ」


 男の子だと分かったときは今度こそ女の子を買おうかと悩んだけどな。


「なんでだよぉ…女の子だったら…まだ諦められたのにぃ…」


 悠君の顔が涙でぬれる。不謹慎だけど、綺麗で心がざわついた。

 

 思わずアキと繋いだ手をほどいて悠君に駆け寄る。そして悠君を抱き寄せる。


「あっ…」


 その声は抱きしめた悠君からだったのか、手を離したアキだったのか。


「泣かないでくれ。これからはまた一緒に居られる。今は長旅で疲れて不安が一気に押し寄せただけだ。だから…な?休もう?」

「うっ…ひっぐ…じゃぁ…僕と一緒に日本に帰ろう?」

「…それは、出来ない」

「えっ…」


 悠君が再度絶望したような顔を浮かべる。だが、俺にはもう帰るという選択肢はない。


「この世界で、もう俺はアキという繋がりを作ってしまった。だから、俺は、帰らない」

「そんな…」

「だからさ、もし、悠君が俺と一緒に居たいなら、こっちで暮らそう?家族に別れを告げられないのは寂しいけど、もう俺は別の家族を手に入れてしまったんだ」

「お兄様…」


 日本に帰る可能性はアキには伝えていなかった。初耳だったはずだが、俺がアキを選んだことが嬉しかったのか、声は弾んでいた。


「…分かった」

「ありがとう」


 悠君は大分落ち着いてくれたようだ。


「もう、諦めないから」

「…ん?」


 俺の胸に顔を沈めていた悠君が俺を見上げる。長い髪が揺れて、今まで泣いていた瞳が濡れたまま決意を示している。やはり綺麗だと感じてしまう。


「僕はね、君が好きなんだ」

「知ってるけど?」

「うぅん、友人としてじゃないんだ」

「…え?」

「僕はね、君に恋してるんだよ。昔から、今日まで。ずっと」

「…そうだったのか」


 アキを好きになったからだろうか。俺は好きと言ってもらって嬉しく感じた。


「日本ではさ、やっぱり男同士って言うのは変な目で見られるし、僕もおかしいと思ってたから。せめて友人としてずっと居たかったんだけど」

「…俺がアキを好きになってたから?」

「うん。君が男を恋人に出来るんだっていうのが分かって、嬉しかったんだけど、でもその立場は僕じゃなかったから。…悔しかった。彼が羨ましくて、憎かった」

「…そうか」


 俺のために想いを秘めていてくれたのに、俺のせいで傷ついてしまった。


「ごめんな」

「うぅん、大丈夫。これからはいくらでもチャンスがあるから」

「えっ?」

「だって、一緒に暮らすんでしょう?」

「…んん?」


 何で?あれ?俺そんなこと言ったっけ?


「一緒に居るなら、こっちで暮らそうって」

「あー…言ったな。さっき」


 こっちで暮らしていれば、いつでも会えるって意味で。同居って意味ではなかった。俺の中では。でも悠君の中ではそうじゃなかったらしい。これはもう撤回できない。


「だからね、別にアキ君と恋人のままでもいいんだ」

「いいのか?」

「本当は嫌だけど…同じ人を好きになった子を、無下には出来ないよ」


 こういう部分は男ならではなのかもしれない。女性だったら、きっと俺の預かり知らぬところで血で血を洗うような陰口合戦やらが繰り広げられたのかもしれない。(偏見です)


「だからね、僕は必ず君に好きになってもらって見せる」

「そうか…。すまんな、今は、まだ、俺の中では親友の域から出てない」

「大丈夫!時間はこれからいくらでもあるから!」

「…ありがとう」

「ん…?」

「俺のことを想ってくれて、ありがとう」

「…うん!これからもよろしくね!」

「あぁ」

「アキ君も、ライバルだけど同士だからね!よろしくね!」

「…はぁ。お兄様を独り占めしたいのですが、そうもいかないのでしょう。ですが1番になるのは私です。負けません」


 今の話を聞いていたアキは、それでも俺と一緒に居てくれるらしい。きっと二人は仲良くなるだろう。


 そして、俺はきっと、そう遠くない内に悠君に堕とされるだろうと思う。そういう目で見られて、そういう目で返さないなんてことはありえないと、既に1度経験しているから。


 なんとも俺は軟派者だと密かに自分に呆れながら、これから3人で暮らしていくことを楽しみにしている自分もいた。

お読みいただきありがとうございます!


男の娘ヒロインの話はもっと増えていいと思う。

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