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三人の女の子

 神愛が去った屋上では残された恵瑠と天和、加豪が扉を見つめていた。


「心配ね」

「はい」


 加豪がつぶやき、それに呼応して恵瑠もつぶやく。共通の友人はこの扉を通り出て行ってしまった、その理由を知っているだけにほっとけない。


「神愛君、ミルフィアさんと仲良くなるためにあんなに頑張ってたのに、お別れなんて寂しすぎますよ。なんとかならないですかね?」

「うーん」


 加豪は腕を組んで考えるが妙案は浮かばない。そもそももう出てくるなと命じた相手とどう仲良くすればいいというのか。


「天和さんはどうですか?」


 そこで隣の緑髪の少女にも尋ねるが彼女は相変わらずなにを考えているのか分からない。


「それよりも、さっきから気になってたんだけど」

「なんですか?」


 と、意外にも彼女の方から話題を振ってきた。


「机への嫌がらせはあの琢磨追求の人の仕業だったわけだけど、宮司君に植木鉢を落としたのも彼なのかな?」

「それなのよね」


 それを聞いた加豪も同じことを思っていたようで考えている。


「未だに続く事件の犯人は別にいる。それがクラスメイトだとして、なんであいつはあんなに怯えていたんだろう。ミルフィアと戦ったのが尾を引いていると言えばそれまでだけど、なんだか気になるのよね」


 熊田銀二の不可解な犯行にいまいちすっきりしない。彼は単独犯なのか、真犯人との共犯なのか。考えるが謎は深まるばかりだ。


「それはそれとして、今宮司君今一人でしょ? 危険だと思う」

「あ」


 その指摘に加豪も恵瑠もハッとなる。今神愛の傍にミルフィアはいない。もし襲われたらお終いだ。


「しまった! なにボケっとしてるんだ私ッ」

「もう! 天和さん気づいてたならもっと早くに教えてくださいよ~!」

「そこには気づけなかったわ」

「気づいてください! じゃあ早く神愛君を見つけないと!」


 神愛は今一人、犯人からすれば絶好のタイミングというわけだ。

 恵瑠は一刻も早く駆け付けようとするがその前に天和がフェンスの向こう側を指さした。


「宮司君ならそこにいるわよ」

「え?」


 指さす先を見れば、正門の前に神愛の姿がある。


「良かった。まだ無事みたいですね」

「見張っていれば犯人がやってくるかも」

「そうしましょう!」


 三人は正門へと急ぐ。全速力で駆け付け、玄関口まで来ると遠目に神愛の姿が見えてきた。


 玄関口の扉から顔だけを出して神愛を監視する。三人の視線の先には神愛が寂しそうに佇んでおり事情を知っているだけに恵瑠の表情が落ち込んでいく。普段勝気な加豪ですら寂し気で反対に天和はいつも通りだ。


 そこで、赤い瞳が動いた。


「あ、人影」

「どこですか!?」


 天和の視線の先は校舎の角であり、見れば確かに影がある。しかし気づかれたのかすぐに消えてしまった。


「追いかけましょう!」


 消えた人影を追って走り出す。姿は確認出来ないが足音は聞こえていた。校舎と校舎の間を通り、渡り廊下を超え、その先は体育館だった。足音はすでに聞こえず見れば扉にうっすらと隙間がある。


「扉が開いてる?」

「ここに逃げ込んだんでしょうか?」

「気を付けて、犯人だとしたら危険な相手よ」


 見渡しても隠れられる場所はここしかない。加豪は二人を背後に置き扉を開けていく。重たい鉄扉がギギギと擦れながら開き、三人は中に入る。


 電球は点いていないため暗い印象があるが天井付近の窓から差し込む光が全体をほのかに照らしている。舞ってる埃がきらりと照らされ使われていない空間はひっそりとして寂しさを覚えるほど静かだ。

 ただしそこには誰もいなかった。


「誰もいないですね、こっちじゃなかったんですかね?」

「それか逃げられたかしら」


 恵瑠や天和は無人の体育館に犯人を見失う。せっかくの手がかりだったのでこれは痛い。


「いや、いる」


 けれど加豪は違った。鋭い視線は戦士か兵士のそれであり戦場を見渡すかのような洞察力は僅かな異変も見逃さない。その目が体育館の側面、扉を覆うカーテンで止まる。そこに僅かな膨らみがあることに気づいたのだ。


「そこにいるのは誰!? 出てきなさい!」


 気勢が乗った加豪の声がカーテンに突き刺さる。気づいてしまえばそこに誰かがいるのは明白で、加豪だけでなく全員の視線が一点に集中する。


 神愛を襲った事件の犯人、逃すまいと力が入る。出てこないなら引っ張り出すかと加豪が一歩を踏み出した、その時だった。


 カーテンが揺れ、中から人が出てきた。

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