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心配

 ミルフィアに初めて命令した翌日、俺は屋上の地面に腰を落ち着け頭上に広がる青空を眺めていた。春の陽気が身を包むが感じ入るものは何もない。胸の中は空洞みたいで、まるで穴が開いたみたいだ。


「……くそ!」


 しかし、すぐに苛立たしい気持ちが蘇る。ミルフィアとの決別、それは自分で決めたことだったけど本心じゃなかった。


 本当は、反対して欲しかったんだ。一緒にいたいって、あいつの口から言って欲しかった。

 この苛立ちをどうすればいいんだ、俺には結局友達なんて無理だったのか?


 なにが黄金律だよ馬鹿馬鹿しい。なんも、出来てないじゃねえか……!


「あ、あの、神愛君?」

「恵瑠か」


 そこへ声が掛けられた。授業は終わったらしく、おどおどした口調だけで誰だか分かる。

 恵瑠はひょっこりと顔を出した後扉の外から静かに出てくる。そしてもぞもぞしながらもゆっくりと近づいてきた。


「神愛君、大丈夫ですか? その、ずっと授業に出てこないから……」


 恵瑠の顔は沈んでいる。本当に俺のことを心配しているようだ。


「出たくないから出てないだけだ。お前が心配することじゃねえよ」

「心配しますよ!」

「なんでだよ」

「だって……」


 俺は恵瑠から視線を切って屋上の外を見た。青空と桜がよく見える。


「分かるでしょ」


 すると扉から加豪と天和もやってきた。二人とも俺の心配で来てくれたみたいだ。


「この子、ずっとあんたのことで悩んでたのよ。少しは感謝しなさい」

「そうだったのか、悪かったな」

「いえ! 全然いいですよ!」


 慌てて顔を振りツインテールの髪が大きく揺れる。単純だけど優しいよな。


「お前らも心配で来てくれたのか? ありがとな」

「まあ、ね」


 三人ともミルフィアの件は知っている。だからこうして来てくれたんだろう、加豪は難しい表情で視線を落としている。実際どうすればいいのか彼女だって分からないんだろう。俺だってそうだ。解決策なんて浮かばない。


「宮司君。ミルフィアさんのことだけど、気にすることないわ。……分かんないけど」

「はは……」


 きっと天和なりの励ましの言葉なんだろう。天和らしいといえば天和らしい言葉だ。

 俺は立ち上がり、三人を見つめた。


「ありがとうな三人とも。でも悪い、今は一人にしてくれ」

「神愛君……」


 恵瑠が寂しそうな顔をする。そんな表情を見るのが、辛かった。

 三人の視線から逃げるように屋上から離れる。恵瑠が大声で呼び止めるが無視して階段を下りていった。


 三人から離れたいという思いからか気づけば正門の前に来ていた。両側に並ぶ桜は花弁を大方散らし、寂しい枝木を晒す変わりに地面は桃色の草原と化している。


 そこで俺は立ち尽くす。心配からとはいえ、せっかく来てくれたあいつらを拒絶した後ろめたさにため息が出た。


 俺は、どうしたらいいんだ……?

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