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天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
340/428

……候補者が見つかった

「問題は」


 ミカエルがつぶやく。やることは決まったがそれには解決しなければならない、構造的な問題がある。


 それこそが、彼女の存在だった。


「ウリエルの捜索か」


「…………」


 その名前にラグエルの目が大きく開かれた。


「まずはウリエルの捜索から始める。会議は以上だ」


 ミカエルから閉会の宣言がされみな席を立っていく。ラグエルも立ち上がるがその姿はやつれて見えた。ゆっくりとした足取りで部屋を出ていく。


 頭が混乱している。未来消失。三柱戦争。それだけでない、ヘブンズ・ゲートの再開まで視野に入ってきた。


 なにより。


(ウリエル様)


 あの日、あの夜、無人となった町で彼は彼女を見送った。


 悲しい顔をして、人類を悼む裏切り者の最後を見たのだ。


 彼女まで、この騒動に巻き込まれる。


 これ以上彼女を悲しませたくない。


 運命は、いったいどこまで彼女に厳しいのか。



 ミカエルたちの会議が終わってから、ガブリエルは自室へ戻るため廊下を一人で歩いていた。


「待って」


 そこへ声が掛けられる。


 振り返ればそこにはラファエルがいた。敵対的というわけではない。けれどいつもの穏やかな雰囲気ではなかった。


 ラファエルはガブリエルを呼び止めると近づいてくる。背の高い彼女をやや険を帯びた目で見上げた。


「どういうこと? ヘブンズ・ゲートを開けるなんて。あなたらしくないわ」


 ヘブンズ・ゲートは開ける開けない以前に禁忌だ。使用するという選択肢がそもそも存在しない。それを無理矢理開けるなどそんなやり方は彼女らしくない。


「さきほど言ったとおりだ。このことに関しては天羽長であるミカエルに決定権がある」


 が、答える彼女はいつも通り平然としている。厳格な彼女のままだ。


「その独断が通じないよう門には四つの鍵が掛けてある。四つの鍵とは四つの意思、四つすべての同意によって開けるもの。その理屈は通じないわ」


 ガブリエルの答えに彼女も食い下がる。ここで引くわけにはいかない。


 ミカエルに決定権があるという消極的な理由。やはり彼女らしくない。ガブリエルとは二千年のつき合いだ、なにかあるに違いない。


「ガブリエル。教えて。どうしてヘブンズ・ゲートを開けようと思ったのか。なにか理由があるんでしょう?」


 それが知りたい。いったいヘブンズ・ゲートを開けようとする理由とはなんなのか。


 ラファエルの質問に誤魔化せないと悟ったか、ガブリエルは視線を若干下げると、小さな声で答えた。


「……候補者が見つかった」


「候補者?」


 言われてもなんの候補者か分からない。それで聞き返すが、ガブリエルは今度はラファエルの顔を見て答えた。


 それだけに、これは重大なことだった。


「ルフィアの系譜だ」


「!?」


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