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天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
319/428

そして、世界規模の全能で考えられることなど一つしかない

「でも、それじゃ矛盾しているわ。ガブリエルは完全な未来視はは不可能だって」


 そこにラファエルが口を挟んだ。


「そう、全能でもできないことはある。矛盾してるだろう? ではその理由とはなんだと思う? 全能者の全能性を否定できるものとはいったいなんだ? なにが、それを実現できる?」


 矛盾した話だった。全能であるのにできないことがあるなど。だが、それがあるとして理由はなんだろうか。いったいなにが全能性を否定できるか。


 そこで、足を組みだらしなく座っていたサリエルが口を開いた。


「……全能か」


「その通り」


 全能を否定するのもまた全能。当然といえば当然だ。なぜならそれもまた全能なのだから。


「全能とは複数ある時点で成立しないものなのさ。たとえば全能同士が勝負をしたらどうなる? どちらかが勝ちどちらかが負ける。その時点で一方の全能性は否定され、引き分けなら両者が否定される。完全なる全能性など存在しないのさ」


 神化を極め神となった者たち。信仰者の黄金期にはこうした者たちもまた何人もいた。真の全能とは唯一でなければその全能性を保てない。天下界ならばなおさらだ。


「そういうこともあって、全能であろうとも全能の起こすことは観測できないんだよ。そうした全能性を否定してくるんだ」


 神でも神は制御できない。観測することもできず、未来を視ることは叶わない。


「そうした観測できない部分は空白となって未来視される。地図に空白の部分が生まれるんだ。そのためなにが起こったのかは分からないが、なにかしらの全能が行使されたのだということは分かる。滅多にないんだがね。仮に世界改変があるとしても支障を出さない範囲に納めるのが常だし、もしくは事前に発表があるのが通例だ。たとえば金融危機を世界改変で直したとしたら、それで財をなした者は損をするということになる。それはそれで混乱を招く。よって、比較的規模が大きい世界改変は国会で議論され事前に発表される。他国にももちろん説明してね。だからこそ、未来視に巨大な空白が表れてようと周囲の状況から内容はおおよそ推測できる」


 全能の行動は先読みできないが、周囲の未来を視れば推測が可能ということだ。未来地図に空白が生まれようと、同じ未来で大きな災害が起きていればその災害復興のために世界改変が行われたのだと考えられる、というわけだ。


「ミカエル」


「おっと失礼。話が逸れた」


 ガブリエルから指摘され話を戻す。


「未来とは複雑であり巨大だ。空白があることもあるが、それでも分かるものだ。困難はあるが視ようと思えば見えるもの。決してなくなったりするものではない」


 そう、説明が長くなったが、未来とは複雑だが視えないものではない。巨大な地図も見ていくのは大変だが決して見えないわけではない。


 どちらも根気があれば見えるのだ。


 だからこそ、次の一言は衝撃的だった。


「その未来が、十日前、完全に見えなくなった」


 それは、あり得ないことだった。


「正確には六年後から先の未来が完全な空白となった。これは、世界規模でだ」


 その未来が、見えなくなったのだ。


 それが意味すること。サリエルが答えた。


「ということは、六年後、世界規模の世界改変、ないし全能者による行動がある、と」


「その通りだ」


 そういうことになる。未来視における空白とは全能が行われた先出しの足跡のようなもの。それが地図すべてを覆ったとなれば、世界中でレジェンドが活動していることになる。


「そして、世界規模の全能で考えられることなど一つしかない」


 いったいなにが起これば全世界を巻き込むのか。世界中のレジェンドが動かなければならないほどの事態とは?


 考えられること。真っ先に思いつくのは一つしかない。


 その答えをラファエルが深刻な顔でつぶやいた。


 それは、最悪の未来だった。


「三柱戦争」


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