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天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
318/428

スパルタ帝国の度重なる示威行為。だが、我々はその理由を知っている

 これは、世界的な危機だ。緊張感は風船のように膨らんでいきいつ破裂するか誰もが恐れている。


 そのことについての会合。そのことについての会議。


 そして、そのことについてミカエルは口にした。


「スパルタ帝国の度重なる示威行為。だが、我々はその理由を知っている」


 衝撃的な発言だった。これが記者会見なら並ぶ記者全員が立ち上がってマイクを向けるだろう。


 だがこの場は平静としていた。その答えはすでに全員が知っていた。静かな緊張感を残しつつ誰しもが自分の姿勢で座っている。


 スパルタの軍事行動。世界情勢を危ぶませるその行為の動機はなんなのか。


 その理由を、ミカエルはつぶやいた。


「未来消失だ」


 未来消失。聞き慣れない言葉だ。民衆なら一度もないだろう。政府関係者でも一部しか知らない。


 ミカエルは続ける。


「実は、その未来消失に最近大きな動きがあってね」


「動きって?」


 ラファエルが尋ねるが、答える前にミカエルは話を切った。


「その前に未来消失についておさらいをしておこうか。誤解があっては大変だからさ」


 ここにいる彼らに限ってそのようなことはないだろうが、しかし万が一ということがある。それだけ重要なことだ。


「未来消失。意味はそのままの通り。未来に観測できない領域が表れた」


 それが未来消失。単純明快だ。だが、だからこそ分からない人には分からないだろう。そもそも未来とはなんなのか、どうやって観測するのか、できない領域とはどういうことなのか。


「この現象は実は十数年前から確認されていてね。そもそも、未来視とはそう珍しいものではない。時間操作を可能とする四次元のオラクルなら差はあれ大抵はできるものだ。ただ、未来というのはとても複雑でね。視るにしても簡単じゃない。いわば巨大な地図を渡されるようなもの。もらったところで全部が分かるものではないし、また未来とはあくまで可能性であり不確定なものだ。せっかくの地図も秒単位で形を変えていく。程度はあるがね」


 ミカエルは続けていく。


「たとえば散歩をしている老人が曲がり角をどちらに進むか、なんて意味のない選択は安定しないが、国会などの大きな行事はたいてい未来通りに行われる、内容に多少の差はあれど。大きな出来事ほどそれは未来においても確かな位置を占めるのさ。まあ、未来視とはやろうと思えばできるがとても手間のかかるものだと思ってくれていい」


 それが未来。そして未来の観測である未来視だ。


 信仰者の黄金期とも呼ばれる現代において四次元のオラクルというのは何人もいるものとなった。高次元の能力を行えるにも関わらず世界中ともなれば百人近くいるだろうか。それくらい多い。


 すさまじい時代といえる。超人の比率が高い。現に国会議員にあたる神官はみなが四次元のオラクル以上であり、未来視を行える者たちで議論を行っているのだ。


 未来視のあり方についてラファエルがガブリエルに確認した。


「そうなの、ガブリエル?」


「まあな。私でも完全な未来視は不可能だ。ただし、その要因は他にもある」


「他?」


 ガブリエルは内容を肯定しつつも新たに別のことを付け加える。


 その説明はミカエルが引き継いだ。


「ここで話が一旦変わるが、今のは四次元のオラクルの話だ。では、レジェンドであればどうだろう? レジェンドとは全能だ、すべてができるということだ。そこには当然未来視も含まれている。完全な未来視ができなければ全能足り得ない」


 全能とは読んで字の如く全てが可能であるということ。よって未来が分からない、ということはあり得ない。四次元のオラクルでは不完全でもレジェンドでは完全な未来視ができる。


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