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天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
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神の一撃

 情熱が、消えていく。


「くそ、があああぁ……!」


 なんとか己を奮い立たせようとするのだが布教による弱体化は肉体、精神を蝕んでいく。妨害と弱体化が合わさり、束縛と負担は圧倒的なまでの鉄壁を見せる。


「ミカエルウウウウ!」


 そこへ神愛が突撃した。身動き取れないミカエルへ、拳を打ち出した。


「がああ!」


 さらに攻撃を放つ。左右の拳を幾度となく叩き付ける。ミカエルの体は黄金のオーラに固定され成す術なく受け続ける。


「うおおおおおお!」


 打つ。打つ。打ち続ける。この拳一つ一つに勝利を込めて、全力で殴りつける。


「がああああああ!」


 神愛が放つ神拳がミカエルの体を打ちのめす。その衝撃をミカエルは一身に受けていた。妨害により防御すら取れず、一方的に殴られる。


 痛みが、衝撃が止まらない。


(馬鹿な……馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な!)


 全身から伝わる痛みに脳内を支配されながらもミカエルは考えていた。なんだこれは? どういうことだ? 勝つはずだ。勝つのは私だと。こんなはずじゃない。こんなことはあり得ない。


 無敵のはずだ。勝てるはずだ。勝利して当然だと、敗北する可能性を想像したことすらなかった。


 だがこれはなんだ? なぜ自分は殴られダメージを受けている? 全身を襲う痛みが混乱を加速させていく。


 だがその間にも神愛の攻撃は続き、最後の一撃を振りかぶった。右手を覆う黄金が限界を超える神拳になる。


「うおおおおお!」


 烈火の気合いとともに叫ばれる、全力全開の一撃。


 それが直撃した。


「があああああ!」


 無数の星が同時に爆発したかのような衝撃にミカエルはとてつもない勢いで吹き飛ばされていく。自身が星に激突したことすら分からない。終わらない衝撃は減速を許さず三桁にも及ぶ星々を一瞬で塵にした。破壊の光が宇宙に一筋の道を浮かび上がらせている。


 ここにいるのは真の神。黄金を身に纏うデュエットモードの神愛のみ。


 自分を信じ、仲間を信じ、未来を信じた。その想いが今形になる。


 黄金の拳。


 神の一撃。


 これが、神愛最高の攻撃だ。


 自分の望む未来を掴むため。


 ミカエルと星との衝突が終わった後、ミカエルは欠片となった星と共に宇宙を漂っていた。まるで難破した船の残骸と一緒に海を流れるように、ミカエルは体を横にして無重力の中をゆっくりと移動している。


 その中で、彼は目を開いた。しかし視点は動かない。宇宙の輝きを茫然と見つめながら自分の状況を把握していた。


 体は全身がしびれて動かない。もう、どこを怪我しているのかも分からないくらい体中で痛みを発している。


 なにより、唖然となるほどの衝撃にミカエルの思考は飲み込まれている。信じて疑うことのなかったセフィラーを突破され、五次元操作によって呼び出した幾多の星をぶつけても相手は無傷。攻撃しようにも妨害と弱体化の双肩が完璧な防御を見せる。どうすればいい? このままでは敗北してしまう。


(敗北……?)


 脳裏によぎる二文字に背筋が震えた。あり得ないはずのそれが現実味を帯びている。


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