表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
269/428

やれると信じているんだ。お前にだって勝てるってな!

 数が多い。ミルフィアは必死に撃ち続けるが、ついには撃ち漏らしが生じてしまった。迎撃行動の網を抜けいくつもの星が迫り来る。


「ふん」


 だがそれで終わりではない。まだ本命がいる。


 神愛は腕を振るった。その衝撃波だけで迫りくる惑星が爆発、巨大な花火となって消え去った。


『主、すみません!』


「気にせず続けろ」


『はい!』


 星々の氾濫はまだ終わっていない。それどころか破滅の流星群はその勢いを増していく。


 ミルフィアの魔法陣が次々と放火を上げていく。歯向かうものを弾圧し、殲滅していく。破壊の衝撃は銀河を超える光の渦となり回転していった。しかしその光の中から星々が突き抜ける。後続が止まらない。


「うおおおおお!」


 神愛は拳を打ち続けた。打撃を空間転移で飛ばし星にぶつける。迫りくる星々を相手に一歩も退かず、己の力を振るっていった。


 連続する超爆発。一体どれだけの質量とエネルギーがこの場に密集しているのか。宇宙全域から見てもここは異常事態だ。


 二人は懸命に迎撃していくが、しかしそれでも間に合わない。ミカエルが送り出す星の数は圧倒的だ。追い詰められていく趨勢(すうせい)に表情が歪む。


 数で負けている。速度が足りない。


 時間が邪魔だ。


 なら停止させればいい。


 神愛は時間を止めた。それにより迫りくる星々も動きを止める。


「なに?」


 その隙にミルフィアと神愛は猛攻した。黄金の光と神の拳が流星群を襲う。止まった軍勢など案山子も同然。すべて殲滅される。形勢は逆転し神愛たちは攻防を制していた。


 ミカエルは五次元の超越者(オラクル)だ。走れるのなら歩けるという理屈通り、時間という下位次元も当たり前のように超越している。時間が停止したこの世界でも問題なく活動でき、神愛たちの前に現れた。


「しぶとい」


 彼の声には苛立ちが含まれている。表情も侮蔑を露わにし、未だ倒しきれないイレギュラーを心底嫌そうに見つめていた。


「なぜ抗う? 私の力は知ったはずだ。不可能なんだよ、誰であれ。私を倒すことはね。そんな可能性は存在しないんだ」


 完成美は傷つかない。無敵の力だ。敗北はなく残された勝利を手に入れるだけ。


 だからこそ分からない。神愛がなぜ戦っているのか。勝てないと言っている。証明もした。ならなにを求めて戦っているのか。なにを信じているのか。


 分からないのだ。


 なぜ、諦めないのか。


「なのになぜだ。お前はなにを信じて戦っている? 勝利か? 奇跡か? それとも自棄になっているだけか?」


 ミカエルは尋ねる。戦う意義を。そこになにがあるというのか。あるのは敗北だと知ってなお戦う気概はどこから出てくる。


 嫌悪と疑問の眼差しが神愛に向けられる。


 それに対し、神愛は揺るぎない決意を見せた。


「聞こえなかったか? お前はなにも分かっていない」


「私が?」


 神愛は思っていない。考えてもいない。あるのは初めから変わっていない燃え滾る想いだけ。


 無敵。敗北。どれほどの言葉が並ぼうと神愛の気持ちを変えることはできない。


 強いのだ。それほどに。


 神愛は言う。不安も迷いもない、折れない意志を輝かせながら。


「ミカエル。俺が信じているのは可能性なんかじゃない。俺と、仲間そのものだ! 俺たちならやれるって信じてる。たとえ誰にゼロパーセントだと言われても。やれると信じているんだ。お前にだって勝てるってな!」


「なにを」


「俺は信じるぜ! 俺たちが進むこの道を! そこに絶望したりしない!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ