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天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
263/428

宇宙激闘(コズミック・バトル)

 地上で二人が見守る中、天下界の未来を左右する戦いは遠い宇宙で行われていた。二人が空間転移した理由。それは地上では二人の戦いに耐えられないからだ。神愛とウリエルの戦闘で街が傷ついたように、この二人が戦えば星そのものが傷ついてしまう。


 それほどの激闘を、神愛も直感的に理解していた。


 神愛の全身から発せられる黄金のオーラが周囲に広がっていく。草原のように広がるそれは宇宙を塗り替えそこからいくつもの噴水が上がっていく。世界を黄金に染め、その中心で神愛は決意と共に拳を握り込んだ。


「俺は絶対にこの戦いに勝たなくちゃならない。今も戦ってくれている仲間のためにも。そして、あいつを取り戻すために! ミルフィア、力を貸してくれ」


『当然です、主』


 神愛の背後にはミルフィアがついている。黄金の粒子体となったその姿は半透明であり服装も胸元にリボンがついたコート姿だ。腰より下はなく上半身とロングコートの裾だけで顕現けんげんしている。


 神愛に仕える神造体としての真の姿を現し、その様は神聖を超えた別次元の創造性を持っていた。あらゆるものが破格の原初の創造。ミルフィアは、この宇宙において本当の特別だ。


 その彼女が、女神に等しい言の葉を告げる。


『あなたに勝利を』


 柔らかく、同時に決意が込められた声音が宇宙に広がる。まるで運命が言葉を持ったように、その誓言は世界を震わした。


 神愛は今、ミルフィアと一体となっている。約束の歌が二人を結び付け原初の力が渾然一体となり発揮されていた。


 背後にミルフィアを携え、神愛はミカエルと対峙する。どちらも尋常ではない。この戦い、常軌を逸したものになる。


 そして始まる、人類未来をかけた、神域の戦いが。


「終わりだイレギュラー! この一撃でお前を倒す!」


 ミカエルは八枚の翼を大きく広げ神愛から距離を取った。空間転移で離れた距離は数百万キロメートル。神愛の姿はもう見えない。なんとか黄金の光が粒として見える程度の超長距離だ。ここまで離れてしまったら攻撃など当てられない。


 普通ならそうだろう。


 そんな常識はこの戦いにおいて一瞬で瓦解がかいする。


「負けられないのは私の方だ! この戦いに勝利するのは、この私だ!」


 ミカエルは片手を頭上に掲げた。直後、世界に異常が発生する。事実、この時ミカエルの頭上では宇宙に穴が開いていた。


 神理を信じる者は神に近づく。それは神化と呼ばれる。


 二千年前にはなかった力。この力、神化によってミカエルは超越者(オラクル)となっていた。超越者(オラクル)の必須条件である次元操作、空間転移が出来るのがその証拠。だがミカエルの神化はこれだけに留まらない。


 ミカエルの神化は五次元の超越者(オラクル)だ。五次元、平行世界と呼ばれる別宇宙。それに干渉、操作することが出来る者は五次元の超越者(オラクル)と認定される。ミカエルはその力を使い平行世界と自分たちのいる宇宙をつなぎ合わせた。そこからあるものを取り出す。空間転移ならぬ、五次元転移だ。


 そして、彼が転移させたものがこれだ。


 出現すると同時に宇宙の闇がかき消えた。熱は宇宙の極寒を吹き飛ばし、核融合の鼓動音が響き渡る。


 太陽だ。


 でかい。あまりに巨大。その直径約百四十万キロメートル。ウリエルが作り出した炎の球体とは比較にもならない。熱量は表面温度で六千度、内部では千五百万度を誇る。放射線は言うまでもなく即死の量。人類だけでなく全生命体にとって掛け替えのないその光はしかし破滅の側面を持つ。善悪などという概念を超越した圧倒的なエネルギーだ。


「終わりだ!」


 それを、ミカエルは投げ放った。


 迫る恒星。信じられない光景だ。太陽が、宇宙を疾走している。


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