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天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
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ガッデム!


「くそッ、どうなってんだよ?」

 俺は牢屋の壁を蹴った。ヨハネ先生が出て行ってからだいぶ経つが外の様子はどうなってるんだ? さっきから断続的に続いてた建物の揺れはなくなったが。もしかして悪化してるなんてことないよな?

「まさか、建物が崩れるとか……」

 こんなでかい建物が崩れるなんて想像したくないが、だがもしそんなことになれば。

 俺潰れる!?

「いやだぁああああああ!」

 俺は牢屋の入口に駆け寄った。


「おいいい! 誰かいないのか!? 俺を出せ、生き埋めなんてごめんだぞ! どうせ死ぬなら肉をたくさん食って死にたい!」

 俺は廊下の奥に向かって叫ぶが反応はない。それとも防音とか?

「ガッデェム!」

 俺は一段と強く赤い壁を蹴った。

「どうなってんだよ……」


 本当なら居ても立ってもいられない。すぐにでもここから出て確かめたかった。

「あいつら無事なんだよな?」

 こことは別の場所にいるミルフィア、加豪、天和。それにここから戦いに行ったヨハネ先生。なんでも神官長派の連中が攻めてきたとか。大丈夫かよ。ヨハネ先生だってそりゃ強いし簡単に倒れるなんて思えないけど、昨日激しく戦ってるし。まあ、それは俺のせいだけど。


 それに、神官長派といえば恵瑠と同じ天羽(てんは)が高官をしている勢力だ。それが攻めてきたってことは、あのガブリエルやラファエルたちが来てるのか? あいつらなら恵瑠がどうなっているのか知っているはず。

「聞くしかねえか……!」

 恵瑠のことを知ってるのか知らないのか、そんなの聞けば分かることだ。それに、どの道あいつらがいるいないともかく、ずっとここにいても仕方がない。こんな非常事態でちんたらなんてしてられるか。

 俺は牢屋の入口、赤い壁に近づいた。空間の固定化。動かない空間というのは目に見えない壁のようなものだ。おまけに本物の壁とは違って壊しようがない。


 だけど。

「そんなの関係ねえ!」

 俺は右手に黄金のオーラを纏い強化した拳で殴りつけた。本気でこの壁をぶち抜こうと全力でだ。

 だが駄目だった、ビクともしない。

「ちぃ!」

 力が強いとか弱いの問題じゃない。空間にすら影響を与えるほどの、別次元の力。それがないとこれは壊せない。

「……よし」


 俺は構えた。そしてもう一度拳を王金調律で強化していく。

 やっていることは変わらない。ただ力を強くするのではなく次元を上げていくのを意識して強化していく。むしろこれは強化というよりも神化だろう。力を強くするのではなく神に近づくことで空間を突破する。

 俺の拳を纏うオーラは吹かすエンジンのようだった。黄金の粒子を排気して発射の合図を今か今かと待っている。蓄えた力が震動となって拳を震わせてくる。

「ぶち破れぇ!」


 俺は殴りつけた、赤い壁へと向けて。それは、砕け散った。

「しゃああ!」

 俺は廊下に向かって走った。まずはあいつらを見つけて合流しないと。

「で、あいつらどこにいるんだよ!?」

 場所が分からん、おまけに俺がどこにいるかも分からん。しらみつぶしに探していくしかないか。

 俺はまずはこの階の部屋を見て回った。けれどミルフィアたちの姿はなかった。仕方がなく下の階へと降りていきそれらしい部屋がないか探していた。

「にしても誰もいねえな」


 こうして堂々と脱獄しておいてなんだが追手が来る様子もない。そしてどの階にも人がいない。けれどもっと下の方から人の悲鳴がかすかに聞こえてきていた。

「みんなは先に下に行ってわけか」

 シャレた天井、左側は全面ガラス張りの廊下を走っている。教皇宮殿正面にある広場を上から覗いてみれば入口付近で聖騎士と銃で武装した騎士たちが戦っていた。

「あれは、ヨハネ先生か?」


 そこには神託物であるカマエルを出し騎士たちを守りながら戦っているヨハネ先生の姿があった。こうしてはいられない!

「助けに行かないとッ」

 方向転換。まずはミルフィアたちと合流するつもりだったが見つけちまったもんは仕方がない。探し回っても見つけられず、無駄な時間を使うよりヨハネ先生を助けないと。もしかしたらミルフィアたちの情報を持っているかもしれないし。


 俺は目的地を広場に切り替え走り出した。

「ん!?」

 その時だった、ガラスの向こうから黒いヘリが飛んできた。それが正面を俺に向け、搭載している機銃が回転し始めたのだ!

「うそだろおい!」

 急いで走る。直後、まるでミシン機を千台同時に動かすかのような激しい連続音が響き渡った。ガラスが粉々に砕け俺の背後に迫ってくる。


 俺は前に体ごと飛んだ。地面にうつ伏せになった後、上を銃弾が通過してくる。

「くっそが、俺がお前らになにしたんだよ」

 全身に降りかかったガラスの破片を払いながら起き上がる。最悪だ、こんなの戦争だぜ。いや、そうなのかもしれない。今まで恵瑠のために戦ってきた俺には個人的な戦いでしかなかったけど、教皇派と神官長派の全面衝突となればそれは内戦と変わらない。

「えらいことになってんだな」


 それもこれも、もとは天羽(てんは)の侵攻だ。神の使命だがなんだか知らないがいい迷惑だ。

 人間は神様のペットじゃないんだ、ほっとけっての。

 するとプロペラの音が再び聞こえてきた。戻ってきたか。


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