笑いごとではない!
「やつらがこちらに向かってくる。どうやらペトロがしくじったようだ」
「おやおや、優秀な彼にしては珍しいですね」
ゴルゴダ共和国を見渡す全長三百メートルの威容。芸術的にも美しいその建物の正面には大勢の騎士を連れて聖騎士第二位のヤコブとヨハネが立っていた。扇状に広がる白い階段の中央に二人が立ち隅に騎士が列を作っている。ヤコブも並び立つ騎士同様甲冑を身にまとい、ヨハネはいつもの白の僧衣姿だった。まるで部外者が迷い込んだような光景だがヨハネも一人の戦士としてここにいる。
「最近では失態が目立つがな。どうやらイレギュラーに苦戦しているらしい」
「はははは」
「笑いごとではない!」
陽気に声を出して笑うヨハネをヤコブが睨みつける。
「すみません。ただ共感してしまって。そうですか、ペトロさんでも彼は手を焼きますか」
神愛はいまや慈愛連立、ゴルゴダ共和国の敵だ。それを取り逃がしたにもかかわらずヨハネはどこか嬉しそうだった。
「やつは教皇誕生祭のパレードを襲撃した大罪人だ。なんとしても捕らえなければ我らの威光は地に落ちる。国民からも一日も早い解決を望む声が多い」
「……そうですね」
ヨハネは微笑んでいたが口調が寂しそうなものへと変わっていった。
ここに、自分の生徒たちがやってくる。
敵として。
そして戦わねばならない。慈愛連立の信仰者として、世界を守るために。
ヨハネを天を仰ぎ、そっと弱音を零した。
「これはいったい、どんな試練なのですかね」
今も天下界を見つめているという三柱の神。その一柱、イヤス。この世界を意のままに操れるその神はこの状況をどう思っているのか。
対決の時は、刻一刻と近づいてきていた。




