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天下界の無信仰者(イレギュラー)  作者: 奏 せいや
第1部 慈愛連立編
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調理

 ミルフィアとの話はその後もしていたがけっこう長引いてしまい、気づけばかなりの時間が経っていた。

 それからどうするという話になったが、まずは泊めてもらうだけでは申し訳ないということで夕食を作ることになった。ちょうどカレーの材料が揃っており、菜園で取れた野菜を使ったカレーライスだ。出来上がるころには外は暗くなり、テーブルには人数分のカレーライスと付け合せのサラダ。オニオンスープが並んでいた。


「ふぅ、なんとか出来たわね」

「はい。上出来だと思います」

 テーブルに並んだ料理を前に加豪(かごう)とミルフィアが自慢げに話し合っている。調理の大部分を加豪(かごう)とミルフィアが行なっており、天和(てんほ)と俺はおまけくらいのものだった。一応あいつらが頑張っているのにただ眺めているだけというのも心苦しいので俺も参加していた。

 初めての共同作業にも関わらず息の良さを発揮したミルフィアと加豪(かごう)ペアは調理を振り返り話が盛り上がっている。


「以前にカレー作ったことあるんだけど、具材を鍋で炒めてたら焦げついちゃって。今回はフライパンで炒めてから鍋に移したから失敗しないでよかったわ」

「分かります。物によっては焦げ付きやすですからね。私は以前煮込み過ぎで荷崩れを起こしてしまいました」

「分かる分かる。カットの大きさとか火加減で崩れちゃうもんね」

「…………」


 女子力たけえなあ~。

 かなり眩しい。そんな二人を俺と天和(てんほ)は隅から見つめていた。

天和(てんほ)、お前なにしたんだ?」

「じゃがいもの皮剝き」

「すげえな」

宮司(みやじ)君は?」

「たまねぎの皮剝き」

「やるわね」


 俺たちは席に着く。隅から俺、その隣にミルフィア、加豪(かごう)と座る。俺の対角の席に天和(てんほ)が座り、対面二つの席は空いていた。

 そこへ奥から親父が出てきた。

 瞬間気持ちが下がる。


 やっぱりだめだ、親父や母さんを見るとどうしても暗くなる。

 そんな俺とは反対に親父はテーブルに並んだ料理に興奮していた。

「うわー、これはすごい。これを君たちが?」

「はい。加豪(かごう)にもだいぶ手伝ってもらいました」

「私もしたわよ」

「すみません。勝手に使わせてもらって」

「ううん、自由に使っていいと言ったのは僕だからね」


 親父はテーブルの料理ににこにこしながら俺の対面の席に座った。

神愛(かみあ)君うらやましいなぁ。こんな料理上手な女性に囲まれて」

「……そうだな」

 乗り気のない声で相槌を打ちなるべく親父を見ないようにする。

 すると親父の後に続いて母さんも出てきた。俯き加減で、雰囲気はかなり暗いというか乗り気ではなく、嫌そうな感じだった。


 そこへ加豪(かごう)が声をかける。

「お邪魔しています。加豪(かごう)切柄(きりえ)と言います」

薬師(やくし)天和(てんほ)

「すみません、ご挨拶が遅くなってしまって」

 天和(てんほ)は相変わらずだが、加豪(かごう)は礼儀正しく挨拶している。いつも思うがこういうのは丁寧だよな、育ちがいいのか。


 すると俯いていた母さんが顔を上げた。

「いえ、私こそごめんなさい。お客さまがいらしているのに顔も出さないで。神愛(かみあ)のお友達ですってね」

「はい」

 加豪(かごう)の挨拶に母さんが微笑んでいる。弱々しい笑みではあったが、そこに嫌そうな感じはなかった。着席するとカレーに目を下ろす。


「おいしそうね。ありがとう」

 母さんは小さくつぶやいた。加豪(かごう)から「口に合えばいいのですが」と言われるが、「きっとおいしいわ」と小さく笑っていた。

 そんな母さんの様子は珍しい。お客だからとはいえ笑顔を浮かべるなんて。

 そっか、母さんも笑うのか。加豪(かごう)と談笑を交わす母さんの姿を見てると別人のように思える。

 それはそれで、なんだか寂しかった。


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