表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集9 (401話~450話)

悪魔な存在

作者: 蹴沢缶九郎

一人の男が台に乗り、天井から垂れ下がった縄の輪に首をかけようとしている。この世に悲観し、これから命を絶とうというのだ。

そこへふと、男は誰かの気配を感じ振り向くと、頭からは途中で折り曲がった触角を生やし、背にはコウモリのような羽、お尻からは尖った尻尾と、全身黒ずくめの悪魔が立っていた。

なるほど、人の死の間際に現れるとはあながち嘘ではないようだ。

男は悪魔に言った。


「ご覧の通り、僕はこれから命を絶とうとしている。どうせ願いを叶えてやるから魂をくれとかなんとか言うのだろ?」


しかし、悪魔の言葉は意外なものだった。


「いいえ、滅相もない。それはあなた方人間が勝手に創作した話で、大体毒にも薬にもならない魂を貰って何の使い道があるというのです」


悪魔の口から鋭い歯が覗き、いやらしくニタニタと笑っている。


「では一体何しに来たのだ?」


「今から死にいくあなたがそれを知ってどうなります。どうせ死ぬのだからどうでもよい事ではありませんか」


悪魔の言っている事はその通りだったが、人生の最後にこのような心残りも嫌だった。


「死ねば分かるのだろうが、僕は今知りたいのだ。教えろ、教えてくれ」


「死んでも分からないかもしれませんよ」


「…そうか。よし、では決めたぞ。僕は死なない。どうだ、僕に死なれないと困るのだろ?」


強気に出る男だったが、しかし、悪魔は依然と平静だった。


「あなたがそう決めたのならそれで良い。私が困る事は何らない。むしろ人の命を救った変わり者の悪魔と人気が出るかもしれませんね」


悪魔は一人、高笑いを上げる。どうにもこうにも訳が分からない男は悪魔に懇願する。


「頼む、教えてください。あなたは何故現れたのですか?」


悪魔は相変わらずいやらしい笑みで言った。


「教えると思いますか? 私は悪魔ですよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 軽い落ちでホっとしました。おしえてあげな~いだなんで、かわいい悪魔です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ