65.復活と逆襲
遅れてすいません。
レナ視点です。
…どんどん表現が拙くなっていっていることにはお気付きの方もいらっしゃるでしょうが、見逃してください…
「すまん。待たせた。」
ようやく来た!
「遅い!他の人はとっくに戻ってきてるよ!」
最初の斬撃で死んじゃった人たちが戻ってきてから数十分戻ってこなかったから、ログアウトしちゃったのかと思ったけど、そういうわけでは無かったのね。
「すまん。ちょっと試してたことがあってな。」
「試してたって…それね。そんな鎌作ってもらってたの。」
「魔武器、だってさ。本当にいいタイミングだった。まあ、これ使って今までいなかった分は埋合せますよ。だから遅れた分は勘弁してちょうだい。」
魔武器って、掲示板で見かけたけど、どうせデマだろって叩かれてたやつね。私も嘘だと思ってたわ。本当に存在したのね。
「いいなあ、パワーアップして返って来るって、すごくヒーローっぽい。」
コウの言うこともわからなくはない。
3時間あったとはいえ、今回のイベントに参加していなかったおかげで、デスペナを受けていなかったプレイヤーの中に、そんな凄腕の鍛冶師がいたことがまず驚きだし、その人に作ってもらったものが魔武器になったこともそうだし。
よっぽど運が良くないとそんな都合のいい展開にはならないでしょう。
そんな私達のことは気にもせず、やる気に満ちたトウキはスキルを繰り出す。
「じゃあ、いっちょやったりますか!『戦賢転換!』からの、『武装召喚!』」
武装召喚で現れた武器を見た私を含めたユニオンメンバーはそろって絶句した。
「・・・・・・・・」
現れたのはブラッククレイモアと同じデザインの大剣…
大剣…と言っていいのかしら。
これはもはや大剣とは言えないと思ってしまった。
でもサイズが桁違いでしょうが。
私3人分位の長さない?
幅もそうだし。
魔導アーマーの持ってる剣よりも大きいと思う。
巨剣っていう表現がしっくりくるかも。
それが、2本。
「もっかい。『戦賢転換!』」
センケンテンカン?さっきも唱えてたわね。
新スキルなんだろうけど、どんな効果なんだろう。
「どんくらい効くかね…」
トウキがそう呟いた。
その直後。
ギィィィィィィィィ………ンンンンンンンン…
ガシャァァァァ!
2本の巨剣が、今までのトウキからは考えられないスピードで動き、
拳士のアーマー1体が吹き飛んだ。
その先にいる別のアーマーも巻き込んで。
「よっしゃ、いける。」
トウキが小さくガッツポーズをとる隣で、
「ウソぉ!?」
私は思わず叫んでしまった。
周りのプレイヤーが叫ぶのをこらえたことを、その時の私は純粋に尊敬した。
びっくりしてこっちに気を取られたせいで、陣形の崩れたユニオンがいくつかあったようだけど。
そんなことを考えて周りを見ている間に、トウキは拳士アーマー2体を始末してしまった。
「やばいやばいやばい!拳士アーマーのタゲ全部取ったっぽい!」
敵にとって、一番危険なモンスターはトウキだと判断されたのかな。
そう思うくらいに、さっきのトウキの攻撃は凄かった。
さっきまでプレイヤー達に攻撃を仕掛けていた拳士アーマー達が、一斉にこちらへ向けて走ってくる。
その数なんと3体。
そんな状況、普通のプレイヤーである私に乗り切れるとも思えないので、
「御愁傷様です。申し訳ないとは思うけれど、あなた以外は生き残れなさそうだから、私も逃げるわ。」
さっさとここから離れましょう。
「あーもうヤケクソだよちくしょう。『戦賢転換!』『過負荷!』『武装召喚!』からの『戦賢転換!』」
さすがにトウキもオーバーロードを使ったか。
2本の剣は拳士アーマー達を迎え撃った。
真正面から。
魔導アーマーを、トウキの巨剣が圧倒している光景はとてもいちプレイヤーが起こしているとは思えない凄まじさだった。
さっきは2本同時に打ち込んで相手を吹き飛ばしていたのに、オーバーロードを使った後だと1本で同じことができるようになっている。
HPがすでに低かった個体がものの数秒で沈んだ。
これでトウキに迫る拳士は2体。
そこからはもう蹂躙としか言えない戦いだった。
トウキはオーバーロードを発動してから3体全て倒すまでを20秒弱でやり切った。
そして、最後の10秒でとんでもない事をしでかしたのだ。
「はぁ…疲れた。ここからはちょっと手抜き気味でいくよ。…置き土産は置いていくけど。」
トウキの剣が風切り音をたてながら凄まじい速度で飛んで行った。
それを追った私の目に入ったのは、編隊を組み、鉄壁とも言える防御を敷いた衛士アーマーと剣士アーマーの姿。
黒の巨剣はシールドに突き刺さり、透明な障壁にヒビが入る音がした。
そして、ガラスが砕けるように、あっけなく、シールドは消滅、魔導アーマーを巨剣一本につき一体。つまり2体仕留めた。
その攻撃で耐久力が尽きたのか、巨剣は砕けて消え、トウキのオーバーロードも時間切れ。
結局、新武器の大鎌は一切使ってないでしょとか、センケンテンカンって何とか、つっこむ気力は無い。
つっこんでも疲れる気しかしない。
私の気力は何とかこの戦争クエストを終えるための分で精一杯なのだ。
聞くのは後!
私はすっぱり切り替えた。
いえ、問題をなかったことにした。
現実逃避がこんなに役に立つなんて、初めて知ったわ。




