57.笑えない冗談
やべえ、詰め込みすぎた上に切れなかった。
分量1.5倍くらいです。
ごめんなさい読みづらいかも。
日曜日です。
ログインしました。
時間を確認したら8時でした。
もうこの早さにも慣れてきた気がする。
敵軍到着までの時間を確認してみると、あと3時間。
11時スタート?なんで中途半端な時間だよ。
「おお、もう結構来てるのか。おはよう。」
「まだバクたちは来てないよー。学生っぽかったし、中々朝早くからゲームっていうわけにもいかないでしょ。」
そっか。
ここにいるのは社会人が多いのね。
今更だけど。
まあそんなことは置いといて。
しばらく学生組を待ち、みんなが集合したので作戦会議、かと思いきや。
「こんにちは皆さん。」
神経を逆撫でする口調というか発音。
来た。例の攻略組の忌魔。
「そういえばあの時は自己紹介もせず、失礼しました。私はアズールと言います。」
「…こんにちは。何か用かしら?貴方が和解を望んでいるとは到底思えないし、冷やかしにでも来たの?」
レナの声は非常に冷たい。
絶対零度と言ってもいい。
スノウの姉御も同様。
その名の通りの雰囲気です。
「いえいえ、そんなことはございません。ただ、もうこの流れは変えられません。素直に身を任せた方が良いだろう、と伝えに来た次第です。」
マジこいつ腹立つなぁ…
こいつのいう流れとは、クエストを進める上で和平を結ぶか、殲滅するかについての話だ。
どちらにするか、掲示板でかなり白熱した議論が交わされたらしいのだが、殲滅派と和解派で全く折り合いがつかなかったのだ。
しかもどちらかというと殲滅派の方が有力という結果に終わった。
こいつらがなぜか攻略組として認知され始めており、その意見に賛成するものが多いのだ。
掲示板の中ではこいつらは完全に相手にされていない。
なのになぜいう事を聞くプレイヤーが多いのだろう?
ホームの雰囲気は非常に剣呑だ。
文字どおり、殺る気に満ちている。
こうなってしまうと和解派にとっては非常にまずい。
自分達が和解しようとしている間も、殲滅派は敵を殺し続けるわけだから、交渉は間違いなく成り立たない。
仮にだ、無理に交渉しようとして、殲滅派よりも先に相手方の指揮官を人質として取ることができたとしよう。
殲滅派が敵軍と接触した時点で戦闘開始&交渉決裂。
俺たち幻影持ちはそのまま袋叩きにされるか、卑怯者として人間からの印象はかえって最悪になるというわけだ。
こいつはわざわざそれを言うためだけにここに来たのか?
「いえいえまさか。私の用事は全く別のことについてですよ。」
なんだ?
嫌な予感しかしない。
とりあえず、呆れる準備はできた。
さあこい。
「レギオンマスター就任を目前に控えましたので、皆様にご挨拶を、と思いましてね。」
「…………………」
しばらくなんの声も出なかった。
他のみんなも同様らしい。
それでも数秒後、ガイがハッとした様子で口を開いた。
「そうか…アズールって名前、どこかで聞いたことがあると思ったが、レギオンの役職を決めるスレで出てきてたマスター最有力候補ってのが同じ名前だったはずだ。」
「ええ、それが私です。トウキさん、貴方がレイスであるにも関わらず、剣士の魂を吸収してレアな魔法を手に入れたことに関しては、掲示板の皆さんも思うところがあった様です。何かを隠しているに違いない、と煽っただけで、簡単に貴方たちへの敵対心を植え付けることができました。」
そんな馬鹿な。
根拠のない発言に惑わされるものがいるとは思えない。
他に何かしやがったな。
「そうですねえ。あのスレには私たち攻略組がもともと多数いたのですよ。私の意見に彼らが同調するだけで場の雰囲気を変えることができました。あとは今回の戦争クエストで戦功をあげ、レギオンマスターに相応しい実績を手に入れれば目的達成、というわけです。」
レギオンマスターは志願制である。
志願に必要なのは、まずは一定以上のレベル。
これはレギオンメンバーのレベルが上がるにつれて基準も上がる。
次に推薦人。
一定以上の推薦人が必要なのだが、これもレギオンメンバーの人数により基準が変動する。
現在必要なのは50人。
アズールは掲示板を掌握し、これを確保したわけだ。
最後の条件は実績。
レギオンクエストによる貢献度が一定以上であること。
前回のレギオンクエストであるゲートキーパーと病魔の討伐に参加していなかったアズールは、新たなレギオンクエストの発生を待っていたというわけだ。
因みに、俺たちのパーティーメンバーは全員既に貢献度がある程度上がっており、今回のレギオンクエストで条件を達成することはほぼ確実だ。
俺はガラじゃないから絶対にやらないが。
「で、レギオンマスターに就任したら、この前の要求を自力で通せる様になるわけか…強引だな。」
レギオンマスターにはレギオン内での行政権が与えられる。
王政にするか、民主制にするかも、実はレギオンマスターが決めるのだ。
ふざけているが、システムとしてそうなってしまっている以上、どうにかなる話ではない。
任期は次のレギオンクエストまで。
いつ次が起きるかわからないのだ。最悪、1ヶ月以上起こらないことだってあるかもしれない。
ホーム内での奴のチーム、自称攻略組の優遇政策。
そんなものが実現されたら、プレイヤー間に明確で理不尽な格差が生まれる。
そうなってしまえばゲームとして死んだも同然だと思う。
「ふふっ、さあ、どうでしょう?…おや、そろそろ準備もありますので、この辺りで失礼しますよ。」
みんな浮かない面持ちでホームから出て、戦場である二層に向かう。
レギオンクエスト開始まで、あと15分。
最早秒読みの状態だ。
それでもこの胸糞悪い気分を振り払うのには時間がかかりそうだった。
「………こうなったらよ、もうやるしかねえんだ。覚悟決めるぞ。」
「んなこと言ったってよ…」
ガイが励ましてくれるのは有難いが、あいつがレギオンマスターに就任か…ゲーム辞めるレベルで嫌だ。
考えてみれば、俺たちがあちらから特別何かされて不利益を被ったわけではないのだ。
しかし、あの態度、考え方には、どうにも嫌悪感を感じずにはいられないのだ。
あの人を食った様な態度。
苦手というレベルではない。無理。
理不尽な理屈かもしれないが。
だが、その後のガイの一言は、完全に盲点となっていた最終手段を提示してくれた。
「行政なんて国家的なシステムが導入されてるんだ。最悪、みんなで亡命とかもできそうなもんじゃねえか?」
………
「そうだな。やりようはある、か。」
「…よし!もう切り替えよう!」
「ほらほらみんな!もう時間もないよ!頑張ろう!」
なんとかみんな立ち直ったか。
「見えてきたよ!ガムラン王国ぐ…………」
ナツキの声に従って前方を見る。
確かに見える。
白い甲冑に身を包み、剣と盾を持った軍団が。
だが。
「……え?」
〈ジェネラルアーマーLv.25〉
〈魔導アーマーLv.20〉
〈魔導アーマーLv.20〉
〈魔導アーマーLv.20〉
〈魔導アーマーLv.20〉
・
・
・
・
魔導アーマー。
その姿は、身長は、どこからどう見てもあるものを思い出させた。
かつて、8パーティーでようやく2体を倒しきった、理不尽なまでの力の権化。
ゲートキーパー。
それにそっくりな甲冑が、少なくとも50体。
下手したら100。
「はは…」
レギオンマスターの一件を先送りにしてやる気を入れた直後にこれだよ。
「こんなに引きつった笑みが出た冗談は初めてだよ、ちくしょう。」
半ばヤケになりつつ、黒鉄の剣を展開したのだった。
プレイヤー名:〈トウキ〉
系統:〈不死系〉
種族:忌魔Lv.22
HP…440
MP…400
str…13(+7)[+24]=44
int…48(+6)=53
vit…13
agi…23[+8]=31
dex…21(+3)=24
soul…9
SP…0
【装備スキル】
[詠唱短縮・小]
【特性】
〈忌まわしき者〉
【種族スキル】
〈幻影Lv.22〉〈禁術Lv.5〉
【通常スキル】
〈武装魔法Lv.3〉〈識別・改Lv.10〉〈魔力遮断Lv.20〉〈錬金術Lv.6〉〈剣術Lv.7〉〈自然体Lv.6〉〈残心Lv.1〉
武器1:鉄の剣
武器2:なし
盾:なし
頭:賢樹の仮面
胴:(霊王の外套、霊王の袴)
足:装備不可
装飾品:精霊の鞘、賢樹の数珠




