4.チュートリアル後半
チケットはチュートリアルが終わってから使うことにした。
【チュートリアルクエスト4:戦闘訓練】
クリア条件…モンスターの撃破
現れたのは、こちらを覗く落ちくぼんだ目。
革鎧に覆われた胴体から生える、肉のない白く細い手には、木製の片手剣とラウンドシールドが握られている。
何も着けていない足は、とてもこれだけの装備を支えられるようには見えないほどに頼りない。
しかしその魔物、スケルトンは出現するなり、歯を打ち鳴らしながら、その姿からは想像できないほど速い動きでこちらに切りつけてきた。
〈【ジョセフ】スケルトンLv.1〉
その不気味さに一瞬たじろぐが、すぐに立ち直り、〈風魔法〉を詠唱する。
物理攻撃の効かない身体であるにもかかわらず、何度も切りつけてくる姿は一瞬滑稽に映るが、生前の技能を引き継いでいるのか、その剣さばきは洗練されており、すぐに考えを変えた。
詠唱が完了したあとは、盾をすり抜け、風魔法を頭蓋に打ち込めば終わりだったが。
〈識別〉をして、〈風魔法〉を数発撃っただけなので当然だが。
しかし識別の情報の少なさは予想以上だった。
レベルアップでマシになればいいが。
プレイヤー名:〈トウキ〉
系統:〈不死系〉
種族:レイス
【特性】
〈霊体〉〈無音詠唱〉
【種族スキル】
〈魔素噴射Lv.1〉
【通常スキル】
〈風属性魔法Lv.1〉〈識別Lv.1〉〈隠密Lv.1〉
【クエストクリア_チュートリアルクエスト:戦闘訓練】
クリア報酬…とある剣士の魂
『これにてチュートリアルは終了です。ホームエリアに転送します。』
ようやくチュートリアルも終わりか。
長かった。
しかしなんだろうこれは。
用途がまるでわからない。
すごく重要なアイテムである気はするのだが。
気になってあれこれ考えていたとき、部屋の壁にひびが入ったことで、俺の思考は一旦中断された。
ひびは瞬く間に部屋中に広がり、壁がはがれ落ちていく。
壁の隙間から見えてきたのはは墓地。
あたりにはいくつもの墓石が、無造作に地面に突き刺されたように配置されている。
壁が崩れ、部屋が消えた。
俺は1つの墓石の前にいた。
その墓石には〈トウキ〉と書かれていた。
俺の墓じゃん。
他のプレイヤーだろうモンスターが周りに何人かいた。
ここは「何匹」と呼んでもいいかもしれないが、中は人なので、「何人」と数えることにする。
とりあえずチュートリアルも終わったので、勝に連絡を入れることにする。
『おーす。終わったぞー。』
『おお、ようやくか。俺はショウって名前にしたからこっちではそう呼んでくれ。』
ちなみに勝の読みは「まさる」である。
字はそのままに、読み方を変えたようだ。
俺と同じ名前のつけ方だな。
『そか、俺はトウキにした。苗字の読み方変えただけだ。』
『了解。そんでさトウキ、種族どうなったよ。
俺はコボルドになった。』
『ほお、コボルド。亜人系か。
こっちは不死系でレイスだな。見た目は紫の光の玉。』
『うはぁ、まだ詳細聞いてないうちから曲者臭漂うモンスターを。どんな奴なの?』
『物理判定無効化で、お互いの物理攻撃が当たらない。魔法特化。ただ足は遅い。』
『一瞬スゲー強そうって思ったけどそれ攻撃手段魔法オンリーだよな。で、逃げることもできないと。ジリ貧じゃねえか。』
『察しがよろしいことで。チュートリアルはスケルトンだったから、物理攻撃だけだったおかげでよかったけど。』
『そりゃよかったな。こっちは人型で、お前と違って武器を持てるって位しか報告するほどのことはなし。あ、ホームは洞窟の中だった。出口はどっかの山の腹にあるんだが、お前のホームから山って見える?』
『んー…いや、ホームの外は瘴気が漂ってて視界が悪くて何も見えない。これは合流は少し先かもな。こっちは墓地だ。いかにもって感じの。そっちからそれっぽい霧みたいなのは見え…いやたぶん見えないだろうな。』
『そうだな。こっからじゃ遠くて下の様子はあんまりわからない。人里っぽいのが見えるんだが、山の麓に1つだけだ。結構離れた場所だろうな。まぁ当分別行動、出会えたらラッキーくらいのスタンスで行こう。』
『わかった。こっちはこっちで頑張ってみることにするわ。』
『おう。』
ふう。
頑張ると言ったはいいが、何をすればいいのかわからん。
辺りを見回してみると、森の木々の上に屋根がはみ出しているのが見えた。人はみんな別の方向に進んで行っているので人は少ないだろうし、ホームエリアの中なので危ないこともないだろう。とりあえずそこに向かってみることにする。