32.仮面と光苔
ストックがやばい……
今日は月曜日。仕事を終えて帰った俺は、晩飯と風呂を終え、ゲームにログインした。
現在は8時。3時間くらいが限界かな。
ログインすると、視界の右下に、封筒のアイコンが点滅しているのがわかった。メールが入ったようだ。
何とキキョウからだ。珍しい。
『渡したいものがあります。私の墓の前に来て下さい。』
渡したいもの?何だろう。
早速向かうことにしよう。
円形に広がるホームエリアの中央、元は教会があった場所に千日楼閣を建設しているのだが、プレイヤーの墓場はその北側に位置する。
俺の墓は西側の千日楼閣の近くだが、キキョウの墓は千日楼閣の北東に少し歩いたところにある。
10分ほど歩いてキキョウの墓に到着。
「来たぞー。渡したいものって?」
「これです。つけてみて下さい。」
差し出されたのは真っ黒な仮面。
「俺は触れないだろう……霊体だっつの。」
新手の嫌がらせかよ、とジト目でキキョウをみる。
目はないけど。
するとキキョウは笑って言った。
「例の木材を使って作ったので触れますよ。」
「えっ、本当だ。見た目からじゃ全然わからないな。」
仮面には、赤く不気味な細長い目が描かれ、口の部分は開いている。
曲面は凹凸もなく綺麗で、手触りはサラサラしている。
艶消しがしてあるようで、光沢もない。いい仕事だ。
「どうでしょう?結構な自信作なんですけど。」
ドヤァ、って聞こえてきそうな声色だな。
そんな関係ないことを考えたりもしたが、
「その仮面をしていると、若干だけど詠唱短縮効果があります。よければ使って下さい。」
〈精霊の仮面〉品質C+
精霊の好む素材でできた仮面。これに集まった精霊たちが魔法を補助してくれる。
[詠唱短縮・微]
「…えっ?」
それって結構やばい強化じゃないですかねぇ…
前から思ってたんだけど、こういうとんでもない発見の発端ってだいたいキキョウだよね。
回復魔法にしろ墓守にしろ。
つかキキョウもそうだが、どんだけ万能だよ月張の木。
これそこら辺に生えてていい木じゃ無いよ絶対。
「あっでもそれつけてる時は顔に物理攻撃来た時は避けてくださいね。壊れやすいので。」
「あ、ああ。わかってる。すげえなこれ、ありがたく使わせてもらうよ。」
お礼として、俺がいつも行っている月張の木がある場所を教え、光源を作るために自分の仕事場(墓石前)に戻った。
まず試したのは、蒸製した月張の木材を球状に加工してみたものだ。光るには光るが、弱い。
というか夜なら千日楼閣自体が光るんじゃないか?
壁に使うって言ってたし。
今夜だし、見に行ってみようか。
まあ、それは置いといて、もし要らなくても提灯はあっていいと思う。その方が趣がでるし。
そのまま生産を続行。
「さて、取り敢えず光苔とムーンドロップを錬金してみようかね。」
困った時のムーンドロップ。
すごく無駄遣いしている気がするな。
錬金用の皿を3つ出し、1つにムーンドロップを取り敢えず3滴。
もう1つに光苔を盛っておく。
残りの1つには錬金後の物が現れるのだ。
『錬金』
出来上がったのは少し光量の増えた光苔。
それもすぐに消えてしまった。
じゃあ土に植えてある状態なら長持ちするかも、と思って、インベントリから魔土と新しい光苔を取り出し、植える。
さっきは10分程で消えたが、今回は10分過ぎても光が衰えない。
ひたすら消えるのを待つ。
1時間経過。まだ消えない。
1時間半。まだまだ。
2時間でも消えなかった。これは夜の間は消えないかもな。一応観察を続けるが、このまま何もせずずっと待っているのも暇だ。
おれは魔土と光苔の入った鉢を持ち上げ、(錬金の道具は持てるのだ。)千日楼閣の様子を見に行った。
まだ壁に月張の木を貼り付けてはいないようで、内装の壁も光っていない。
「おーす。調子はどうだ?」
「今3階の内装をやってるところだね。ところで手に持ってるそれが提灯の明かり?」
「まだ完成じゃないが、長持ちさせるのは簡単だった。今どれだけ光が続くか観察中。因みに今植えてから2時間ちょいくらいだが、恐らく夜はずっと光ってるだろう。これができたら、明日は光量を上げる。」
「おお。」
「あと知ってるとは思うが、例の木材って夜だと光るぞ。提灯の明かり要らない気がしてきた。つくるけど。」
「知ってるけど、やっぱりあった方が雰囲気でるじゃん?」
わかってらっしゃる。
その後、4階部分の内装に取り掛かるところになったあたりで、ログアウトしに墓に戻った。
だが、その前にやりたい事が少し。
まずは今もひかり続けている光苔にムーンドロップを錬金。光が強くなり、時間が経っても光量が落ちない事を確認した。
つぎはもう1つ同じものを作り、片方は土に混合肥料を混ぜた。
明日の夜にどちらの交流が多いか比べてみるのだ。
やる事も終わったのでログアウトした。
11時半になっていた。




