10.固定パーティー結成
本日ラスト。読んでくださっている方、ありがとうございます。
俺たちは魂を2つ取り込んで、新たな能力を手に入れた。
俺の場合、風魔法が変化して、新しい魔法になっていた。
〈風魔法:剣戟〉SS(Skill Set)
風属性魔法の派生系。風でできた武器を作り出し、操ることができる。汎用性は高いが、威力は抑えめ。
使用可能魔法
ウインドソード:風の剣を作り出し、相手に振るう。
リザーブ:特定の魔法と同時に唱えることで、魔法の発射を保留する。その後、リリースと唱えれば発射される。
コピー:詠唱開始時点で発動中だった魔法と同じものを発動する。
その分、切断属性の付与が消えていたが、このスキル習得の前段階だったのだろう。
「みんな何かしら能力は手に入ったんだよな?」
「うん。私は〈魔力察知〉と〈指揮〉。」
とレナ。
魔力察知は多分ノイの能力だったんだろうな。
コウのスキルは
「〈隠密ex〉と〈忍式戦闘術〉だね。」
忍術じゃないのか。
「ex?」
「たぶん、チュートリアルで手に入るものの強化版ってことじゃないか?隠密は俺も持ってるし、せっかく魂取り込んで得た能力なのに、チュートリアルでもう手に入れてた、なんてことになったら嫌だろ?」
「なるほどな。俺にもあるぞ。俺の能力は〈鉄壁〉っていう皮膚が硬くなるパッシブスキルと、〈挑発ex〉だ。」
タンクやれってことだな。
「私は〈歩法〉と〈拳闘〉っていうスキルだね。」
名前からじゃわかりづらいが、〈歩法〉は移動速度と回避技能が向上するパッシブスキルらしい。
「私は〈状態異常耐性〉と、…あと、もう1つがとんでもないスキルでした。」
「どんな危ないスキルが手に入ったの?」
「……〈回復魔法〉、です。」
「すげえ!キキョウちゃん最高!」
と興奮するコウ。
今まで魔法は4属性魔法しか見つかっていなかったのだ。新しい魔法、それも、mmoに置いて攻略に必須である〈回復魔法〉ならば、その反響は計り知れない。
「うーん…これは他のプレイヤーにも伝えておいたほうがいいかもねぇ。黙ってたのがばれたときの周りの反応が怖いよ。」
ナツキも思案しているようだ。
俺としても、その意見には賛成なわけで、
「そうだな。見た目が変わっちゃって目立つようになってる以上、何かやったってバレるのは早いだろうし。隠しておくメリットがあまり無い。」
「じゃあ、こうしない?ちょっと提案なんだけど。」
「何だ?」
レナが提案してきたのは、今日の午後の時間を、ネームドモンスターの狩りに使って魂を集め、集まった魂を、他のプレイヤーと交換してもらう。というものだった。
魂の用途についての説明もそこでするようだ。
「ん?どういうこと?」
コウはいまいちわかっていない様子。
ナツキとキキョウも首を傾げている。
「つまり、一旦その人とパーティーを組んで、俺たちは全員が違う種類の魂を出して、その人に合う魂を見つける。見つかったらその魂をあげる代わりに、相手が元々持っていた魂を貰う、ということだろう?」
とタカアキ。
「まだそこまで言ってないわよ…よくわかったわね。私達は自分で魂を集めてもそれを取り込むことはできないから、交換して貰えばいいじゃない?せっかく人が集まるんだし。」
レナが察しのよすぎるタカアキに感心しつつ補足する。
「それで、トウキくん?奥に進むのはまた今度になっちゃうけど、それでもいい?」
「ああ、もともとそんなに急いでたわけでは無いしな。この辺の敵じゃつまんなくなってきてただけで。」
「おお、随分と強気だねぇ。これは今日の狩りは期待してもいいのかなぁ?」
「あー、つってもさっきの魂のおかげで唯一の攻撃手段だった風魔法が変化しちゃってるからな。進む前に弱い敵で試運転しておきたいってのはあるな。」
「あー確かにねー。
ってかさ。今までみんなバラバラでやってたけど、こうなったらもう固定パーティーとしてやっていったほうがいいんじゃない?僕はそうしたいなぁ。」
「私もそれがいいなぁ。賛成!」
「そうね。他のパーティーに引っ張りだこにされそうな人もいることだし。」
「わ、私もそうなるよりはこのメンバーと一緒がいいです。」
「俺も特に異論はない。ここが一番組んでいてしっくりきたパーティーだったからな。」
「俺は他に知ってる人たちがいないしなぁ。願ったり叶ったりだな。」
コウの提案に、俺を含めて全員が賛成した。
「さて、じゃあネームド狩りといきましょうか。基本的には私が索敵と戦術の指示ってことになるわね。軍師だし。
で、見つけたらタカアキくんが〈挑発ex〉で注意を引いて、あとはトウキくんを中心にコウ、ナツキがダメージを稼ぐ。
キキョウはタカアキの回復と、呪詛での支援ってところかな。どう?」
「問題ない。さすが軍師。んじゃ行くか。」
ホームから出ると、枯れた木々の向こうに早速動くものがあった。
「ゾンビね。みんな、さっき言った通りに。トウキくんは識別お願い。」
「「「「「了解」」」」」
〈ゾンビLv.2〉
「レベル2。ネームドでもない。雑魚だな。
ちょっと先制で魔法撃ってみていいか?強化されてるから一撃でいけるかも。」
みんなから了承を得たので、初めて使う魔法を唱える。
『リザーブ・ウインドソード』
自分の眼の前に、薄い緑色の剣が出現する。
そのまま自分を中心に旋回するそれを見ながら、さらにもう1つの新呪文を唱える。
『コピー』
全く同じ風の剣が現れる。
『リリース』
ウインドソードがゾンビに向かって飛んでいく。
スピードはウインドボールよりやや遅いくらい。
ゾンビは途中でこちらを向いたが、もう遅い。
剣は2本とも真っ直ぐゾンビの胴体に飛んでいき、相手の手前で動きを変えた。まるで透明人間がその剣を握って振り回しているような、アーチ型の軌跡が2本描かれる。その軌道上にいたゾンビは一瞬で光となって消えた。
「….うーん。ごめん。普通にウインドランス1発撃ったほうが速かったな。使い方間違った。」
「ウインドランスなら一撃なのね……十分よ…」
「火力は断トツだし、何よりカッコいい!僕もそういうスキルほしいなぁ!」
「火力役としては申し分ないな。その剣だが、前衛に出て振ってみたらどうだ?」
「お、いいねぇ、それ。相手の剣は当たらないけど、自分の剣は当たるってことでしょ。魂2つ取り込んだら、こんなに楽しくなるんだねぇ。私も早く使ってみたいなぁ、自分の能力。」
「私も頑張ります!」
みなさん気に入っていただけたようで。
タカアキの案いいな。やってみようかな。
プレイヤー名:〈トウキ〉
系統:〈不死系〉
種族:レイス
【特性】
〈霊体〉〈無音詠唱〉
【種族スキル】
〈魔素噴射Lv.6〉〈幻影Lv.4〉
【通常スキル】
〈風魔法:剣戟Lv.7〉〈識別Lv.7〉〈隠密Lv.10〉




