表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/304

ステータス確認と派生進化

 

 ログインするといつものように、多くのプレイヤーで賑わっている冒険の町が目の前に広がっていた。部長が気の毒に感じたので昨日のうちに火の町から移動し、こっちでログアウトしたのであった。


『よ、調子はどうだ?』


『ごしゅじん、大丈夫だよー』


 既にダリアの頭の上に乗っている部長は、鼻をヒクヒク動かしながら応答する。冒険の町は暑すぎず寒すぎずな理想の環境であるため、気温変化に弱い生き物でも快適に暮らせそうだ。


『よ、ダリア』


『重い』


 明らかに不満そうな声色で愚痴(ぐち)るダリア。けれども部長に降りろと言わない部分に、姉ポジションとしての気遣いが垣間見える。


 ただ、自分は別だと言わんばかりに肩車しにくる所はブレない。揃いも揃っていい性格してるよ、本当。


 メールを確認すると、オルさんと港さんから謝罪文が送られてきていた。二人共、昨日ログインしていなかった組だ。まずオルさんに部長の武器が作れるかどうかと、地形による負荷を軽減するアイテムの有無を聞くメールを返信、港さんにはレベル上げを一緒できるかどうかの確認を返信しておく。


 二人の他にライラさんから『クリンが新しい召喚獣を呼んだよ!』という内容のメールが、そしてクリンさん本人からも召喚獣が増えたという内容に加え『よかったらアドバイス欲しいです』と一文が添えられていた。


 そこはギルドで話し合ったほうが良さそうだとは思うが……そんな無粋な内容は返せない。彼等のギルドも見たかった所だし、一度顔を出す(むね)を添えて返信した。ライラさんにも何時頃なら都合がいいかを返信し、メール画面を閉じる。


 さてと、食事処でも行って新しい(アーツ)の確認と、掲示板にあった『技能(スキル)の派生進化』も見てみようかな。


「いらっしゃいませ。お客様は三名様でよろしいですね?」


「はい。お願いします」


 基本的に店を決めるのはダリアだ。彼女が犬さながらの嗅覚でもって町中の『肉臭』を嗅ぎ分け、頭を叩いて誘導してくれる。シンクロで会話できているのにも拘らず叩いてしまうのは、昔の名残りだろうか。


 昨日は功労者の部長が寝ていたから、今日はログインして真っ先に食事処を探すと決めていた。実はかなり気を回しているんだが、当の本人はリアクションが薄い。(むし)ろダリアの方が喜んでいる。


 召喚獣が全て食いしん坊というわけではないらしく、前に知ったが好物も当然異なる。ここが親密度に関わるポイントなのかもしれないな。


「二人共、決まったか?」


『決まった』


『きまったー』


 シンクロは心で会話する技能(スキル)だが、口に出すことでも会話は成立する。この場合は第三者に俺の声だけが聞こえる状態なので、対人戦等では作戦が漏れる。現在は二人交互にシンクロを掛けてなんとか会話できている状況だ。グループ通話的な機能が追加されればいいのだが……。


「ご注文をどうぞ」


「ダリアは? ……ステーキ盛り合わせセット一つと、部長は? ……野菜スティック一つ。あとハンバーグカレーお願いします」


「かしこまりました」


 注文表にある写真をささっと指差すダリアと、鼻で押すように野菜スティックを指す部長。

 その姿に店員NPCはクスッと笑いつつ、一度復唱した(のち)、カウンター奥へと消えていった。


 俺が声に出してシンクロを使っている主な理由としては、他人から見た違和感が凄いからだ。

 他人から見える俺たちは無言で黙々と食事をとる集団。ちょっと気味が悪く見える可能性がある。


 運ばれてきた料理を口に運びながら、隣に座る部長の口に野菜スティックを持っていってやる。部長はリスというか、ウサギというか、それら小動物を連想させるように、端からぽりぽりとイイ勢いで食べ進める。テーブルの上に顔だけ乗せ、浮いた前足が何かをかき分けるように動いている。


 ちょっと待ってほしい。


 ――これは明らかに誰かに食べさせてもらう前提のスタンスである――


 ダリアは相変わらずで、ナイフとフォークを器用に使って山盛りのステーキを食べ進めている。最初はフォークで突き刺し食べてた()が成長したものだ……口元を汚すのはお約束となっているが。




 食事も終わり、二人がデザートを食べている間にステータス確認を済ませることにする。

 運ばれてきたパフェを部長がどう食べるのか横目で確認していると、ダリアがいそいそと俺の代わりにスプーンで食べさせてやっているのが見えた。


 幼い姉妹を見ているようで微笑ましいな。


 気を取り直し、メール画面を覗くと、ライラさんから『20時くらいなら大丈夫だと思う』という内容のメールが返ってきていた。視界右上にあるデジタルの時計には19:36と表示されている。丁度いい、ここで時間を潰して行こう。

 とりあえず集合場所を決めてほしいという内容を返信し、改めてステータス画面を表示した。




名前 ダイキ

Lv 33

種族 人族

職業 存在愛の召喚士

筋力__77 (55)【132】

耐久__42 (210)【252】

敏捷__42 (3)【45】

器用__71 (175)【247】

魔力__46【46】


※【 】内が総合計値



技能(スキル)


【召喚魔法 Lv.30】【火属性魔法 Lv.4】【採掘術 Lv.9】【片手剣術 Lv.31】【片手盾術 Lv.28】【鼓舞術 Lv.26】【技術者の心得 Lv.30】【野生解放 Lv.22】【統率者の心得 Lv.18】【シンクロ Lv.8】


控え【調教術 Lv.1】【魔石生成 Lv.4】【錬成術 Lv.5】


特殊技能(スキル)【炎攻撃付属】




 灼熱の盾の装備により筋力、そして耐久が大きく上昇し、さらに特殊技能(スキル)の炎攻撃付属が追加された。

 炎攻撃付属は、この盾が相手に接触した場合、打属性の他に火属性も追加される。これはただ剣を防いだだけでも適用され、低確率で状態異常『火傷』を与える事もできるようだ。


「で、これが派生進化ってやつか」


 ステータス画面を見ると、技能(スキル)の中に色の変化した項目を見つけた。レベル30を超えた『片手剣術』と『技術者の心得』の二つだ。


 召喚術もレベル30ではあるが、これはまだ進化できないらしく、色が変わっていない。


 タップしてみると片手剣術は『片手剣術Ⅱ Lv.1』へ、技術者の心得は『技術者の心得Ⅱ Lv.1』へと進化する事が出来るとあり、内容を見るに元の(アーツ)は引き継がれるようだ。


 進化できるなら、進化するべきだろう。特に何も考えないまま承認を押し、二つを進化させる。




【片手剣術Ⅱ Lv.1】

一定の領域へとたどり着いた者だけが得られる技能。より高度な剣術を扱う事ができる。



【技術者の心得Ⅱ Lv.1】

一定の領域へとたどり着いた者だけが得られる技能。技術的補助に補正がかかる。器用補正(中)



【片手剣術Ⅱ Lv.1】#追加(アーツ)

黄の閃光剣イエロー・ライトソード / 赤の閃光剣(レッド・ライトソード)

青の閃光剣(ブルー・ライトソード)


【片手盾術 Lv.28】#追加(アーツ)

盾投擲(シールドロブ)




 進化した技能(スキル)達――技術者に関しては効果が小だったものが中へと上がっていた。

 そして片手剣術Ⅱに追加されたのは三色剣の進化技。三光剣(さんこうけん)とでも呼ぶのだろうか? 効果としては三色剣の上位互換であり、その分SP消費量は増加していた。


 片手盾術には新しく盾投擲(シールドロブ)が追加され、盾による遠距離攻撃が可能となった。フリスビーのように返ってくるらしく、盾紛失という笑えないトラブルの心配は無さそうだ。


 炎攻撃付属も(あい)まって、なかなか強い(アーツ)となっている。




名前 ダリア

Lv 30

種族 中級魔族

状態 野生解放

筋力__49[27]【76】

耐久__49[27](14)【90】

敏捷__49[27]【76】

器用__49[27]【76】

魔力__138[39](121)【298】


召喚者 ダイキ

親密度 58/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能(スキル)強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ



技能(スキル)


【火属性魔法Ⅱ Lv.1】【闇属性魔法Ⅱ Lv.1】【魔法強化Ⅱ Lv.1】【魔力回復Ⅱ Lv.1】【オーバーマジック Lv.23】【怒りの炎 Lv.14】【竜属性魔法 Lv.1】




 ダリアの技能(スキル)は火属性魔法が『火属性魔法Ⅱ Lv.1』に、闇属性魔法が『闇属性魔法Ⅱ Lv.1』に、魔法強化が『魔法強化Ⅱ Lv.1』に、魔力回復が『魔力回復Ⅱ Lv.1』に進化した。実に四つの技能(スキル)が進化し、大幅なパワーアップが期待できる。


「って……あれ? ダリア、『竜属性魔法』なんて覚えたんだ」


『……』


 技能(スキル)の項目に現れた新たな魔法属性。ダリアに聞いてみても、何故か黙っているが……まあ、強くなるに越したことはないか。




【火属性魔法Ⅱ Lv.1】#追加(アーツ)

灼熱地獄(ボルケーノ)


【闇属性魔法Ⅱ Lv.1】#追加(アーツ)

闇の五重奏(ダーククインテット) / 黒の光線(ブラックレーザー)


【竜属性魔法 Lv.1】

竜の息吹(ドラゴンブレス)




 進化したことにより追加された(アーツ)がいくつか出てきた。まず火属性魔法Ⅱの灼熱地獄(ボルケーノ)は強力な範囲系魔法で、火炎地獄インフェルノの上位互換だと考えられる。進化して覚えた(アーツ)なだけに、かなりの威力が期待できそうだ。


 闇属性魔法Ⅱには闇の四重奏(ダークカルテット)の上位互換である闇の五重奏(ダーククインテット)と、威力と貫通に特化した黒の光線(ブラックレーザー)という(アーツ)が追加された。これも上と同様に、かなり期待できる魔法であると予想できる。


 そして知らぬ間に追加されていた竜属性魔法には、竜の息吹(ドラゴンブレス)という範囲系魔法が存在し、全体に確率で麻痺(パライズ)の効果を与えるとあった。


 他の技能(スキル)が充実しているだけになかなか使い辛そうだが、上手く育てていってもらいたい。




名前 部長

Lv 26

種族 魔鼠族

状態 野生解放

筋力__28[24]【52】

耐久__41[26](20)【87】

敏捷__28[24]【52】

器用__42[27]【69】

魔力__86[32](25)【143】


召喚者 ダイキ

親密度 28/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能(スキル)強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ


技能(スキル)


【回復魔法 Lv.12】【強化魔法 Lv.16】【弱体化魔法 Lv.15】【魔力強化 Lv.16】【魔力回復 Lv.17】【アイテム効果上昇 Lv.14】【分配 Lv.23】【回復魔法の心得 Lv.9】【支援魔法の心得 Lv.14】【緊急睡眠 Lv.2】



 身の丈に合わないフィールドでのレベル上げにより大幅にレベルの上がった部長。技能(スキル)のレベルが徐々にだが上がっているものの、まだまだ低いと言わざるを得ない。そして緊急睡眠は回復までに相当な時間が掛かるのも考慮すると、実戦向きとは言い難い。



【弱体化魔法 Lv.15】#追加(アーツ)

魔法防御弱体化マジックディフェンスダウン



 (アーツ)の追加は弱体化(デバフ)の魔法防御弱体化。主砲がダリアであるうちとしてはかなりのサポートになる(アーツ)といえる。

 ダリアに魔法攻撃強化を掛けつつ、相手に魔法防御弱体化を掛ければ相当優位に立てる事がわかる。



 ダリアがキリのいいレベル30となったものの、種族の進化や新しい召喚獣の追加等は無いらしい。その辺りの法則性は未だ不明だが――ともあれ、何よりも二人の親密度が急上昇しているだけでも、俺には十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ダリアが部長にパフェを食べさせてあげてるシーンでダイキはスクショを撮るべきだった。貴重なシャッターチャンス…っ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ