巨大迷宮 インフィニティ・ラビリンス ④
マップで見る限り、ブラック・ドラゴンの部屋から近からず遠からずの距離に飛ばされた俺たちは、他のプレイヤーが宝探しとポイント集めに躍起になってる間、倒せるかもわからない格上のいる部屋に向かっている。
勝てる勝てないは置いておいて、オルさんの言う“勝てるモンスターであるという可能性“には同意見だ。
そして、徘徊するモンスターが落とす用途不明のアイテム。これもかなり臭い。
――なにより、負けたまま引き下がれない。
ミニマップを頼りに、十字路を右に行く。ミニマップには赤点も青点もなく、レーダーにも反応はない。
現在の俺の獲得ポイントは39。
それにしても同時刻に始めたケンヤ達は相当稼いでいたな。
ポイントに関してはパーティで一括りされるため、条件は俺と変わらない筈なんだが……。
T字路を左へ進む。
聞くのを忘れたが銀灰さんの進行具合も少し気になるな。ギルド単位で参加している最前線組の彼等なら、既にブラック・ドラゴン級のモンスターを倒しているかもしれない。
現在攻略するボスのレベルからしても、可能性はかなり低いとは思うが……。
――ミニマップの方に反応があった。
見ると赤点が二つ、この先の道を塞いでいるのがわかる。周囲に青点は無い。
「ダリア、格上相手だったとしても情報が欲しい。戦うことになる」
ごめんな。と言う前に、頭を撫でられた。どうやら、了承してくれるようだ。イベントが終わったらまた、思う存分飯を食べさせてやるとしようか。
剣を抜き身にしつつ赤点に近付くと、袋を背負った小さな鼠型モンスターが二匹、通路をちょろちょろと移動しているのが見える。
【ラビリンス・ラット Lv.10】
どうやら格上ではなさそうだ。
俺は一匹に狙いを定め、飛閃剣を発動。同時にダリアも闇矢を展開し、もう一匹の身体を突き刺した。
「随分と呆気ないなあ」
レベル差を考えれば妥当とも言えるが、あまりにも歯ごたえがない。
低レベルと高レベルの差が極端すぎて、マトモな戦闘ができてないのがもどかしい。
ともあれ、一瞬にして戦闘は終了したものの、ラビリンス・ラットが居た場所にキラキラとした二つの光が残っているのが見える。
――手に取り、確認。
【獲得ポイント[小]】
貢献度ポイントに100追加される。
おお! これは紛れもなくアタリだ!
ラビリンス・ラットは俗に言うラッキーモンスターなのかもしれないな。
そしてもう一つは。
【不思議な石】#イベントアイテム
中に不思議な力が込められている
「これか……」
雨天さんのメールにもあった用途不明の石だろうか。早々に入手できたのは有難いが、説明がなさすぎて何に使うのかすら不明だな。
とはいえ、思わぬ獲得ポイントの増加に顔を緩ませると、ダリアが『集中しろ』とばかりに頭を叩いてきた。
足を進めながら、具現化させた不思議な石を叩いたり齧ったりしていると、レーダーの方に反応があった。
青色の光だ。またしても違う色か……。
ミニマップで言えば、プレイヤーを表す色なんだが流石にこれは関係ないか? 向かった先に空の箱と大勢のプレイヤーとかいたら洒落にならない。
とかなんとか、心の中でぼやきつつも、レーダーの反応に従って歩く。
都合のいいことに、ブラック・ドラゴンまでの距離は徐々に詰められている。
レーダーが指し示す先には右と正面に道があり、正面の方へ反応は向いているようだった。
足を踏み入れる――フリをして、地に足をつけてすぐ引っ込める。すると、
「――うっわ、はは……」
その場所には巨大な落とし穴が出来上がっており、下には槍の先端と、犠牲者だろうか? 夥しい量の骨が待ち構えていた。
古典的な罠だが非常に恐ろしい、落ちればダメージ+閉じ込められる寸法か。
落とし穴が閉じる。念のため、二・三回確認してみるも沈黙している。
一度で終わりの罠なのか?
とりあえず大きく助走をつけ、飛び越えるようにして落とし穴の罠をクリアーする。が、
「ちょ!」
盛り上がった岩の壁が俺を押しつぶそうと動き出す。その一瞬の揺れに反応し、咄嗟に飛び退いたのが功を奏し、サンドイッチは免れた。
――落とし穴に続いてサンドイッチか、なかなかにエグい。
即死かどうかは確認したくもないが、足元から槍が突き出すだけの罠に、最初引っかかっておいて良かったと胸を撫で下ろす。
特にサンドイッチなんて一撃ゲームオーバーも大袈裟じゃないだろう。
もし仮に罠に嵌ったとしても、ダリアと俺は一心同体だから、簡単に再スタートが切れるけれど、これがプレイヤー六人で構成されたパーティの場合、欠けた部分はどうしているんだろうか。
脱落したメンバーを見捨てて先に進むのか、それともわざと死んで再スタートを切るのか……。
雨天さんからのメールには誰か一人だけ死んだとか、その手の情報は無かったな。無事だといいが――
二つの罠をやりすごした俺は、目の前に部屋があることに気がついた。
ミニマップで確認すると、既に全貌が見えている。ということは、あまり大きくない。
部屋内には犬のような狼のような、電撃を纏いながら佇む獣が、足を踏み入れた俺たちに攻撃の意を示している。
【ライトニング・ドッグ Lv.24】
レベルで見れば相当な強敵。その上小型となれば、敏捷値もなかなか高そうだ。
「いくぞダリア」
盾と剣を構える俺と、定位置から降り立ち杖を向けるダリア。
ライトニング・ドッグはそれを攻撃開始の合図だと悟り、放電しながらこちらへ飛びかかってきた。
すかさず盾弾きの構えを取る――が、背中に嫌な汗が流れ、すぐに回避行動へと移る。
直後、ライトニング・ドッグの着地地点に雷が落ち、頑丈な岩の地面を抉る。属性の力関係だと地属性は雷属性に強いはずだが、この威力はなんだ?
水の中に火を灯そうとしても失敗するように、電撃で岩を焼く事はできない。
「なにか特殊な技能持ち……?」
弱点貫通なんてハチャメチャな技能も、もしかしたら存在するのかもしれない。ともあれ、今の攻撃を受けていたら良くても感電だ。
「『猛攻の布陣』『鉄壁の布陣』『疾風の布陣』『降魔の布陣』『野生解放』」
強化をありったけ重ねると、ダリアはそれらを待っていたかのように杖を振るう。
火炎弾が二発、ライトニング・ドッグに迫るも、自身の身体に雷を落とし、超スピードでそれを避ける。
――速い。
――正直、目で追うのがやっとだ。
電撃の線と残像を残しながら部屋を駆けるライトニング・ドッグ。
ダリアもスピードのある闇矢で追撃を図るも、一向に当たる気配はない。
攻撃を当てない事には始まらない。か。
感電覚悟で、ライトニング・ドッグに向け隼斬りを発動。
隼斬りを使った俺はライトニング・ドッグを上回る速度で接近し、剣を振るう。
「っく!」
攻撃は通った。しかし、奴の身体に纏わりつく電撃は、微量だがダメージ判定があるようだ。
斬り飛ばされたライトニング・ドッグは一回転し体勢を整え、怒りを露わにする。
そこにダリアがすかさず火炎の海を発動。俺とライトニング・ドッグの周囲の床を炎の地面へと塗り変える。
何かを感じ取ったライトニング・ドッグは炎から逃げるため大きく退くが、ダリアは連続して火炎の海を展開していく。
「……なるほど。歩けば歩くほどダメージを受ける火炎の海で敵の動きを制限するわけか」
あっという間にフィールド全てが炎に埋まり、逃げ場を失ったライトニング・ドッグはヘイト値の上がったダリアへ襲いかかる。
「やらせん! 『磁石盾』」
今にもダリアに食いつきそうなライトニング・ドッグと盾を銀色の線が繋ぎ、空中にいたライトニング・ドッグは盾の方へと吸い寄せられる。
――追いつけないなら、引き寄せればいい。
ライトニング・ドッグは吸い寄せられるままに標的を俺に変更し、電撃を纏う。
もう一度ダメージ覚悟でやるしかない。
盾弾き発動に伴い技術者の心得が反応。ライトニング・ドッグに、拡大と縮小を繰り返す光が出現する。
――早い。やはり器用値が足りていないか。
ガツン。という鈍い音と共に盾弾きは失敗に終わり、雷の牙が俺の肩を貫く。
「っが……!」
減ったLPが27%程度で済んだのは、奴の攻撃力自体の低さか、俺の耐久の高さ故か――。
ともあれ、状態異常の気絶は五秒間相手を動けなくする凶悪な効果を持つ。
ライトニング・ドッグは俺に噛み付いたまま、首を左右に振ってしつこくダメージを与えてくる――が、ダリアの魔法を察知し、素早く飛び退いた。
目の前を黒色の球体が横切る。
「すまんダリア!」
今のでダリアのMPが20%を切るも、野生解放に伴う感覚のマヒで、MPを気にする素振りも見せず、次々に闇矢を放っていく。
ライトニング・ドッグは炎の地面で着実にダメージを受けていくものの、闇矢を最小限の動きで避けている。
――チャンスだ。
俺は一気にダリアへ駆け寄りMP回復薬 Lv.4を二つ浴びせ65%まで回復させつつ、自分のLPの回復も済ませる。
少々乱暴だが、野生解放時のダリアは攻撃以外の行動を取らない。
「『磁石盾』」
敵視値は常に俺に向けておく必要がある。再び俺の盾に引き寄せられていくライトニング・ドッグは、爪に電撃を集め飛びかかってきた。
――今度こそ!
技術者の心得によりタイミングを知らせる光が出現するも、やはり速度は速い。
「これならどうだよ! 『気絶殴打』」
――弾くのではなく殴る。
顔の位置がちょうど盾と被るタイミングで裏拳の要領で盾を繰り出す。
顔に盾の攻撃が入ったライトニング・ドッグは「ギャン」という悲鳴と共に吹き飛ばされた。
これで奴は気絶状態。ともあれ、俺への攻撃もしっかり入れていたのは流石と言うべきか。
だとしても、俺が気絶になろうがその間相棒がフリーなら問題はない!
気絶によって動けないライトニング・ドッグは火炎の柱に飲み込まれた。
オーバーマジックによって威力の上がった火炎柱は、ライトニング・ドッグのLPを大きく削る。
小技小技で削っていたが、ダリアの大きな攻撃が入ったのはこれが初である。
残り30%程まで一気に減ったライトニング・ドッグのLPを見るに、敏捷特化ならではの耐久の低さが窺える。
「ラスト! 畳み掛かけるぞ!」
[迷路]イベント攻略情報 Part.33 [転載禁止]
1.名無しプレイヤー
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◯ツギハギ開拓マップ
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◯徘徊モンスター情報
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◯アイテム情報
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◯プレイヤー情報
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次スレ>>980
661.名無しプレイヤー
どこいるんだよレベル50はよ!!
662.名無しプレイヤー
>>661 未だ目撃情報無し。レイド組乙
663.名無しプレイヤー
人食い宝箱とかマジ基地
664.名無しプレイヤー
http://**********
ここら辺のマップ無いっぽかったのでうp
665.名無しプレイヤー
不思議な石ってなんぞ?
666.名無しプレイヤー
>>664 サンクス
667.名無しプレイヤー
30人レイド組が殺し合い始めてて草
668.名無しプレイヤー
>>661「皆で50レベ狩るンゴ!頑張るニキ!」
>>661「限界ンゴ!味方殺してポイント奪うンゴ!」
669.名無しプレイヤー
>>668 世紀末すぎて草
670.名無しプレイヤー
>>668 マジなんだよなぁ…
671.名無しプレイヤー
>>665 換金アイテムという説が濃厚。なお消費型攻撃アイテムだと思ったワイ、格上の後頭部に石を投げつけ無事死亡
672.名無しプレイヤー
>>671 換金アイテムなら獲得ポイントと重複するってあれほど
673.名無しプレイヤー
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スクショの丸がかかれてる部分にレベル31の鳥型モンスター有り。雑魚プレイヤーは注意
674.名無しプレイヤー
>>673 サンキューザッコ
675.名無しプレイヤー
>>673 もうそいつでいいや!!
676.名無しプレイヤー
>>675 ヤケクソで草
677.名無しプレイヤー
>>675 レイド組んだならもっと粘れよw
678.名無しプレイヤー
死に戻り一時間放置プレイ地味にキツイ
679.名無しプレイヤー
>>678 迷路内部、ボス級モンスターが見つからなくてピリピリしてるからプレイヤーに会ったら即逃げしな
680.名無しプレイヤー
みんなで協力すればいいのに
681.名無しプレイヤー
>>680 宝箱は再湧きなし・モンスターの湧きも悪い・獲得ポイントはプレイヤーを殺しても手に入る
これでも状況が理解できないならおじさんとパーティ組もうか(ニッコリ
682.名無しプレイヤー
運営相変わらずで草も生えない
683.名無しプレイヤー
イベント前お前ら
「ボスの首とったるぜ!」
イベント中お前ら
「プレイヤーの首とったるぜ!」
684.名無しプレイヤー
宝箱から色々拾えたし俺は別にいいけどね
685.名無しプレイヤー
http://**********
こんな破格性能の宝もあるから止められない
686.名無しプレイヤー
>>685 チートですやん……
687.名無しプレイヤー
>>686 それをリアルチートの銀騎士様が装備しちゃうんすよ
688.名無しプレイヤー
まだ一つも宝箱見つけられてないんだが…