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水族館に来たよ その2

 


 かなりの数のペンギンが、ヨチヨチ歩いたり泳いだりと楽しそうにしているペンギンエリア。


「さて、ベリルはどこだ?」


 恐らくここが水族館で一番人が集まっている場所だし探すのも一苦労――と思いきや、彼女は水槽の〝内側〟にいたのですぐ見つかった。


「あの楽しみ方は盲点だったな……」

『かしこい』


 眠った部長が電車の外で並走している姿から学んだのだろうか。この機械には障害物という概念がないため、子供達は邪魔されず自由に歩き回れる。だからベリルのように内側で楽しむのもアリのようだ。


 大量のペンギンの群れの中に、何かモニターを出して必死に打ち込む少女の姿が確認できる。

 本来なら通報案件だが、当然他の人には見えていない。

 彼女は例のごとく掲示板かなにかで調べ物をしているようで、俺たちに気付いていない。


〝ペンギン 仲良くなりかた〟

〝ペンギン 好きなもの〟

〝ペンギン 世界のペンギン〟


 確認できた検索ワードはこの三つ。

 仲良くなる方法を必死で探しているっぽいな。


『なんで鳥なのに泳ぐの』


「んー、たしか陸地より海の割合が多いから、飛ぶより潜った方が餌がたくさんある〜みたいな理由だったかな? むしろ彼等は鳥なのに飛べない。たぶん泳ぐために進化したんだよ」


『進化……』


 目をキラキラさせてペンギンを見つめるダリア。部長はダリアを回収した辺りからもう眠ってしまっている。


『ダリアも行ってくる』


「ん、いってらっしゃい」


 内側から見られるなんてVIPみたいでいいなぁとか思いながら眺めていると、二人がこちらに手を振ってきた。


 その後、色々ポーズをとりながらペンギンと一緒に何かやってる二人。


「写真撮ってんのか……?」


 掲示板を自由にできる時点で何も驚くことはない。

 しかも自撮りっぽい感じで撮ってる。

 イマドキ女子だな……成長を感じるよ。


 するとタイミングよく飼育員さんが入ってきて、何かを察して群がるペンギン達。同じようにヨチヨチ近寄る二人の前に、餌の魚がポイポイ投げ込まれた――餌やりタイム開始だ。


 口を開けてグァグァと待機するペンギン達。

 両手を広げて同じように待機する二人。

 なんとも異質な空間だ。


 餌やりのペンギン目線が飽きたのか、二人は飼育員さんの手前に陣取る形で移動し、まるで自分達が餌をやってるような状況で楽しみ始めた。正直写真撮っててほしい。超見たいです。


『ただいまー』

『色々写真撮れました』

「ナイス!!」


 写真は撮ってくれたらしい。

 後で現像して部屋に飾ろっと。







 ベリルを回収してしばらく歩いていると、外へ続く扉の方でチョイチョイと手招きするアルデの姿があった。


『いいもの見せてあげる!』


 青吉がいないことが気になるが、得意げに走るアルデに着いて行くと、少し離れた場所に演習用のプールがあった。


 そこでは二匹のシャチが練習を行っていた。

 その横で巨大な竜が同じ動きを行っている。


『シャチのショーに参加する気だ』

『あっくん凄い……偉いッ!』

 

 青吉の勇姿に感激するお姉様方。

 アルデは飼育員さんの動きを真似ている。


『拙者達はシャチのショーに出ます!』

『ご期待ください』


 改まった口調のアルデと青吉。

 ちなみにイルカショーの後にシャチのショーがあるみたい。

 

 普通の水族館の楽しみ方とは全然違うけど、水槽の内側に行ったり、ショーに参加したりと、かなり斬新な発想に驚かされる。


「シャチより迫力ありそう……」


 他の観客にも見せたいくらいだが、今のところ俺たちだけの特権だ。デバイスを同期させたら同じ景色が見られるらしいし、今度謙也と椿にも教えてやろうかな(買わないと思うけど)。







 そしてその日の夜。

 俺は自宅――ではなく、水族館近くのホテルに泊まっていた。


「せーの、いただきます」


『『『『いただきます』』』』


 部長の願いを叶えるため、夜景が一望できるいいホテルで今日一日を締めようと思う。流石にお風呂は一緒に入れないので、さっさと済ませて夜ご飯を一緒にとることにした。


 ホテルのディナーは和食を選んだので、煮豆や鰯田綱巻きなどの前菜から始まり、鯛の造り、塩焼き、茶碗蒸しなどが続く。


 子供達のご飯もそれに合わせて用意した。

 今日はテーブルで仲良く食事開始だ。


『青吉! ショーは毎日三時間おきだ! 体力を付けなきゃ!』

『うん。明日も頑張る』


 明日はフルタイムで頑張るつもりの二人。

 明日は水族館行かないんだけどな……。


『魚を見た後に魚を食べる背徳感』

『それは気にしない方がいいと思います……』


 焼けた魚に哀れみの目を向けるダリアと、苦笑しながら食べるベリル。


「いつもと違う場所での食事もいいなぁ」


 ホテルの食事はもちろん美味しい。

 それ以上にこの時間が至福すぎる。


 食事の後もショーの成功を労うアルデと、誇らしげにする青吉。

 ダリアとベリルは撮った写真を見て楽しんでいた。

 部長は一足先に夜景が見える高級ベッドで夢の中だ。


「明日も早いしそろそろ寝るか」


『『『『はーい』』』』


 ベッドはダブルをくっ付けているため、大人四人でも余裕で眠れるくらいに広い。それに、高級ホテルなだけあって寝心地もなかなか良い。

 ベッドの上でしばらく談笑した俺たちは、早々に潜って目を瞑る。

 子供達に囲まれながらの睡眠は初めてじゃないけど、現実世界では初めてだ。


 おやすみ皆――


 明日起きて帰宅、ではない。

 明日は遊園地が予定されている。

 持ってくれ俺の体よ……。

 

お色気シーンも何もない淡白なホテル編が読めるのはFrontier Worldだけ!

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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ面白かったです。更新楽しみにしています!
[良い点] 久々出会ったとても面白い小説です! 文章も読みやすく展開も面白いです。 更新がないようなので、残念ではありますが、続きを読みたいととても思ってしまう作品です。
[一言] (ゲーム世界での知り合いに遭遇しろー)という念を送っておこう
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