召喚獣達の休日
大変長らくお待たせいたしました。。
ストーリーに区切りがついた数日後。
俺は四季の楽園の広間に子供達を集めていた。
「どこか行きたい所ある?」
唐突にこんなことを言ったのには訳がある。
大規模イベントに、複雑なストーリー攻略とフル稼働だった子供達。それぞれの役割も明確になり、なにより完全蜃気楼の破壊力を試せたのも大きかった。
大勝を収めて子供達の士気も高い。
余談だが最近仕事の調子もいい。
有難いことに来期から昇進も決まった。
順風満帆。まさにそんな感じだ。
ただ足りていない――圧倒的に。
「癒しが足りない……」
そう、遊ぶ時間が足りてない。
子供達は俺が何もしなくても楽しそうにしているのだが、戦闘や仕入れのためのエリア移動ではなく、たまには観光や遊ぶためだけのエリア巡りもしてみたい。
という訳で三連休をもぎ取った俺は、今回趣向を変え、こちらから提案するのではなく、それぞれがしたいことを聞いてくことにした。
『空中散歩してみたい』
まずそう答えたのがダリア。
両手を横に広げて飛行機のマネをしている。
『皆でお昼寝ー』
次に答えたのが部長。
相変わらずの睡眠欲求だ。
『怪獣がたくさんいる所!』
アルデのは珍しい注文だった。
曰く『恐竜を鑑賞したい!』とのこと。
絶対戦闘になりそうだけど仕方ない……。
『別にどこでも……』
興味なさそうに素っ気なく答える青吉。
『皆の行きたいところが自分の行きたい場所』だからと、色男みたいなことを言っている。
ふむふむ、なるほどなるほど。
見事にバラバラだが問題なし。
なんせここはバーチャルな世界。
できないことの方が少ないからな。
空中散歩なら飛行船に乗ればいい。お昼寝には葉月さんのお店の近くが最適だし(いつも行ってる場所にはなるが……)、怪獣も出現エリアを調べれば解決できそうだ。
『どこでも、ですか?』
と、しばらく悩んだ様子で手を挙げるベリル。
「うん、どこでもいいよ」
『そうですか。なら――』
◇◆◇
『結構綺麗にしてる』
『お布団フカフカだー』
『拙者の部屋よりも狭いぞ!』
『お風呂で泳げるかな』
「まさかこんな事になるとは……」
現在、子供達は俺の部屋に来ている。
ダリアと部長はベッドに、アルデと青吉は走り回っており、ベリルは眉間に皺を寄せ空中を漂っている。
『カップ麺のゴミが多いです。ちゃんと料理を作るか惣菜を買ってください。ジュース、お酒も体に悪いです。消化を助ける烏龍茶にしましょう。カーテンがちゃんと閉まっていません。男性とはいえ防犯の観点からも――』
ベリルが楽しそうなので良しとするがこの機械――8万円しました。とほほ。
〜以下回想〜
某家電量販店にて。
「あの、すみません」
「はいなんでしょう?」
店員さんを呼び、タブレットの画面を見せる。
「V.Room 1800ですね?」
「はい。在庫はありますか?」
「ございます。ご購入でよろしいですか?」
ご購入でよろしいですか?
その言葉に、俺は一瞬躊躇した。
V.Room 1800とはFrontier Worldを開発運営する会社が発売した最新型「仮想プロジェクター」である。四つの機械を家の四隅に設置することで、仮想世界と現実世界をリンクさせることができる装置だ。
俺がゲームにいられない時も、子供達が自分の意思で俺の部屋に遊びに来れる機能がついている。防犯上の観点から、設定で来れる人を制限したり、部屋から見える景色を消したりすることもできる。
付属のメガネ型デバイスを使うことで、更に様々なことができるようになるという。
お値段なんと8万円。
「現金一括でお願いします……」
「ありがとうございます。お持ち致しますね」
痛すぎる出費だけどまぁいいさ。独身貴族だから貯金だけはあるんだ。貯金だけは。
〜回想終わり〜
マスターの世界に遊びに行きたいです。
これがベリルの注文であった。
無理だろうと思ったが、調べてみると可能だった。今の世の中、金さえあれば大抵のことができるようだ。
ベリルの注文を皆が賛同し、現実世界で全部の希望に応えろと言われる始末。空中散歩とかどうすればいいんだ……。
『ダイキ殿。今日はまた随分と防御の低そうな服を着ているな』
「これは部屋着だよ。あぁそうか、こっちには怪物がいないから、こんな装備でも生きてられるんだよ」
『ほえぇ……ってことは拙者の希望は無理ってことか!?』
「いやいや、なんとかできると思うよ!」
などとやり取りしつつ、子供達が部屋を物色している間に、俺は三日間の慰安旅行のスケジュールを決めていくのだった。
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コミカライズ一話も電撃コミックレグルスさんで連載中です(12/30に二話目が更新されます)。可愛いのでぜひ読んでみてください。
休日編は完成次第、随時更新していきますのでよろしくお願いします!