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大戦争イベント最終日⑧

 

 赤、黄、白、青の宝石が踊る。

 アルデの体が大人の女性へと変わる。

 

 九曜さんの体がメキメキと竜の姿へと変わってゆき、金色の目をした黒竜が羽ばたいた。


 完全蜃気楼(フルミラージュ)――残り時間約20秒


『おりゃあああ!!』


 アルデが黒竜に向かってゆく様は、さながら神話を見ているかのようで、俺はただただそれを固唾を飲んで見守っていた。


 ギギン!! ギギン!!


 竜の鱗に阻まれ上手く攻撃が通らない。

 残り時間10秒と少し……!


 凄まじい熱気の青い炎を吐く黒竜。

 アルデはその炎を刀に纏わせ、肩から腹にかけてを力の限り切り裂いた!


《魔法武器付属》


『魔法の炎なら纏えるよ!』


「ッくそ!」


 九曜さんの変身が解けた――!

 地面を滑るように駆けるアルデ。

 二人の大剣と刀がぶつかる!


「パーティ合計のパラメータじゃどう転んでも倒せねえ。ならコレしかねえな!!」


 そう言ってアルデと大きく距離を取った九曜さんは、大剣の腹を撫でるようにして深呼吸を一つ――体からは燃えるように黒の湯気が立ち込め、その湯気は竜の形を成してゆく。


「闘気と竜魔法を混ぜた《竜闘術》。現状で(・・・)竜人族プレイヤー最強の技!」


 黄金の瞳が光を放つ。


 バヂヂッという電撃にも似た音と共に、一瞬のうちに移動した九曜さんがチェーンソーの大剣を振り下ろした! アルデはそれを刀の腹で受け止めるも、HPが一気に7割減少する。


 顕現時間残り5秒――


 アルデの魔王術強欲が解放される。

 背中には彼女が所有する武器が羽根のように浮いており、その全ての数値が刀に上乗せされている。


『全力じゃなくてごめんね』


 彼女は技を発動させた。


 刀の腹を滑らせるように大剣を流してゆき、がら空きになった胸元への一閃――一連の動きがとてもスローに見え、交差し、刀を突き出した形で止まるアルデが呟いた。


『《返し術 竜閃》』


 ドンッ!! という音と共に大きなダメージのエフェクトが弾け、討たれた九曜さんは大の字になってその場に倒れ込んだ。


『いてっ』

『ふーギリギリだねー』

『間に合ったああ』

『固有技はクールタイムがありますからね』

『流石まま』


 完全蜃気楼(フルミラージュ)が解けるや否や、ぐでーんとその場に散らばる子供達。


「勝った、のか?」


 やばい。俺だけ蚊帳の外で実感が湧かない。

 勝ったんだよな? アルデ達が九曜さんに。


 イベント終了まで残り40秒――


 完全蜃気楼(フルミラージュ)でMPもカラカラ、アルデのダメージも頭割りで皆ボロボロだ。ひとまず部長に回復してもらってからだな。

 

 ギイィィン!!

 けたたましい金属音が響き渡る!


 俺の後ろで馬に乗った大男と、

 銀色の騎士がぶつかっていた。


 大男の矛を盾で受けながら騎士が振り返る。


「ナイス一騎打ち! 見応えあったなぁ」


「銀灰さん!」


 それは、女神像防衛にいたはずの銀灰さんだった。


 大男の方はまた俺を狙っていたようだ。

 戦闘後だとどうしても気が抜ける――青吉やアルデが稼いでくれたポイントが無駄になるところだった。


「これも筋書き通りか?」


 不服そうに笑う大男。


 ズドン!! と大きな音と共に銀色の竜が男を潰し、光に包まれた竜が人の姿へと変わっていく。


「いいえ、アドリブよ」


 髪をふわりと払い、アリスさんが微笑んだ。


『大戦争イベント全日程が終了となります。ポイント集計のため発表は明日の正午12時とさせていただきます。5秒後に通常ワールドに転送されます。尚、転送場所は〝王都〟か〝帝国〟になりますので、ご了承ください――』

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― 新着の感想 ―
[一言] ずっと待ってました。続きが読めてうれしいです。これからのお話も楽しみに待ってます。お体にお気をつけて。
[一言] これ漫画やアニメ化したらもう少し動きが増えそうでちょっと楽しみだな
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