大戦争イベント最終日⑤
お久しぶりです
再書籍化されます
詳しくは活動報告にて
蘇生し特攻してくるプレイヤー達を範囲攻撃で焼く――一方的な攻撃を可能としているのは、全拠点確保の効果に加え、足元に浮かぶ魔紋の効果が大きい。
「片足入ってれば恩恵あるからね!」
そう言いながら隕石を降らせるOさん。
これはOさんのスキル『描く魔法陣』によるものらしいが、効果については本人もよく分からないらしい。ただ、この上にいる限り範囲魔法強化の恩恵が受けられるとのこと。
「残り何分ですか?」
「今ちょうど5分、ですね」
残り5分――
この数相手に俺達だけでよく耐えている方だ。俺達の仕事は概ね完遂しているが、このまま5分粘れればなおよしといった所か。
『!』
何かに気付くダリア。
視線の先に目を向けると、
帝国兵達の様子に変化が見られた。
「黒の靄?」
機械の体から立ち込める靄のようなもの。
体はガクガクと震え、やがて動きを止める。
夕焼けの空に何かが映った。
『見よ! これがボクの最高傑作! 〝竜を殺す種族〟として生み出した機人族の力だ!!』
どこかで見た顔が声高らかに宣言する。
消えゆく彼の笑い声。
そして確かな変化が生まれていた。
「ステルベン。やっぱりストーリーが絡んできますね」
苦虫を噛み潰したような顔で呟く花蓮さん。
機人族の体に〝何か〟がダブる。
それはまるで亡霊のような、幻のような姿。
宙吊りになったそれらが機械の体に吸い込まれると同時に、帝国兵士達が各々武器を取り出した。
大剣や盾、中には杖を持つ者もいる。
機人族って魔法が使えないんじゃ……?
Oさんの魔法が着弾する。
しかしそれらは帝国兵士達が作った結界や壁によって防がれる。敵の群れに単身飛び込むヘルヴォルが思うように戦えていない。
「明らかに強くなってる」
「それだけじゃない、ですね。本来の力が引き出されてます」
そう言いながら右手を上げる花蓮さん。上空には風神雷神が陣取っており、それは逆三角形の形に見えた。
「デルタ……」
「フォース!!」
放たれた三色の光線が帝国兵の群れに突っ込んでゆく。対する帝国兵士は折り重なるように合体し、それは巨大な鋼の盾となった。
光線がぶつかり――跳ね返る。
「げっ!」
「ぎっ!」
花蓮さんの手を掠める形で通過した光線は、風神雷神を巻き込みながら後ろの王国プレイヤー達に突っ込んでいった。
「撤退しますか?」
やばそうですよみたいな顔の花蓮さん。
風神雷神が消されたことにはノータッチなんだ。
日頃の行いって大事だなぁ。
相手は謎の強化で連携を取るようになり、それまでの動きとは全く違う攻撃・武器を扱う。その上Oさんや花蓮さんの範囲魔法をも凌ぐとなれば――
「……」
俺は反射的にベリルを見た。
流れ弾でやられたプレイヤー達を見つめ、何かを思う彼女。軍師ベリルの初舞台。俺達が残り時間も耐え抜いて、作戦大成功の完全勝利をあげてやりたかったが――ここまでか。
「加勢します!!」
俺達を包み込む黄金の光。
不思議と力が漲るその光は、いつかストーリークエストで見たあの光に酷似していた。
「王国の危機は世界の危機ですよね」
「民はわたくしが守ります」
風に靡くトレードマークのスカーフ。
金色の髪と意志の強い青色の瞳が揺れる。
冒険者ナルハ。
王女マリー。
こうして、火蓋は切って落とされた。