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大戦争イベント2日目

 


 いつ以来(ぶり)だろうか――。


「っは、は、ッ……!」


 脇腹に鈍い痛み、踵には鋭い痛み。

 押し潰されるように痛む胸。


 時刻は夜の9時半をすでに回っていた。


 イベント2日目である今日、俺は鬼のような仕事量を捌いて帰路についていた――全力疾走で。


「走るのが、久々、すぎて、走りかた、わからない!」


 息も絶え絶えになりながらやっとの思いで自宅に着くと、着替えるよりも先に〝Frontier World〟を起動。光が灯るのを横目で確認しながら急いでジャージに着替え靴下を脱ぐ――踵は靴擦れによってマメのようなものができていた。


 

 * * * *



 俺が王都に降り立つと、

 心配した様子で見上げてくる子供達。


「ごめん、遅れちゃった」


 そう言いながらメニューを操作しイベント欄から参加ボタンを探す――と、同時に目の前に現れた〝2日目結果〟画面を見て、俺はガックリと肩を落とす。


 間に合わなかった。

 残業のバカ。


『時間切れですか?』


「そだな。よし、気持ちを切り替えてご飯でも食べに行くか」


『大賛成』

『やった!!』

『魚!!』


 間に合わなかったことをクヨクヨしていても仕方がないので、俺は子供達を連れて近くのレストランに入っていく。レストラン内にプレイヤーの姿は無く、「ほとんどのプレイヤーがイベントに参加しているんだなぁ」と改めて実感できた。


「3日前の大戦争で頑張ってくれたし、最後の日も頑張ってもらわなきゃだからな。好きなのを好きなだけ食べていいよ」


『ダイキ 太っ腹』

『わたしコレとね、あとコレ』

『甘い物ぜーんぶ!!』

『それよりも最終日の作戦を……』

『パパの隣に座る』


 その欲望のままに食事を堪能する子供達。俺は「ログアウトしたら夕飯食べなきゃだな」と考えながら、コーヒーを片手にイベント結果に目を通していく。



 大戦争イベント2日目 結果


 王国 9,147,442 P(敗北)

 帝国 18,720,372 P(勝利)


 累計ポイント


 王国 26,827,955 P

 帝国 35,091,818 P



「2倍近く差をつけられて負けたのか……」


 2日目はイベントの仕様を把握した状態でのスタートとなるため、ここまで大敗となると帝国側の作戦にハマった可能性はあるな。


 詳細を見ると、女神像も最後に取られてしまったことが分かる。最終日にこのスコアをひっくり返すのはかなり骨が折れそうだ――。



王国個人ポイントランキング

全体 9,147,442 P

一位 Oさん(17,032)

二位 花蓮(16,683)

三位 マイヤ(14,077)

四位 ハロー金肉(10,365)

五位 若(10,290)



 王国側はやはりOさんと花蓮さんが大健闘してくれている。1日目に無かったマイヤさんの名前があるが、これが撃破によるものか〝蘇生〟によるものかは分からないが――この負け方からして後者の可能性は高い。


 ハローさんもほとんどスコアを落とさずにランキングに載っている。最後の一人の名前だけ分からなかったが、やはり1日目に比べて全体的にスコアがやや落ちている。


 それに比べて……


「帝国の上三人が止まらないな」



帝国個人ポイントランキング

全体 18,720,372 P

一位 九曜(42,724)

二位 ナハト(38,206)

三位 レオ(27,696)

四位 King.F(17,333)

五位 赤蛙(12,047)



 九曜さんもナハトさんも、2日目は1日目よりもさらにポイントを伸ばしている。そして、俺達を倒したレオというプレイヤーも順調にポイントを稼いだようだ。


『最終日、何かしっかりと勝てる作戦を立てて王国側全員で共有しなければ厳しそうですね』


 掲示板に書き込みをしながらパンケーキを頬張るベリルが言う。


 気付けばテーブルの上には空いた皿と追加で運ばれてきた料理が山を作っており、ダリアは肉、部長は野菜、アルデはスイーツ、青吉は魚と、好みのメニューを頼んでいた。


 皿に残っていた唐揚げを一口。

 それを見たダリアが俺に肘を一撃。


「こんなにあるならいいでしょ」


『それは食後のデザートだったやつ』


 肉の箸休めに肉を食べるやつがあるか。


 そんなやり取りをしていると、

 こちらをじぃと見つめる視線に気付く。


 アルデだった。

 

『最終日は全力で行ってもいい?』


 俺に力をセーブされ不完全燃焼だったんだろう――アルデの瞳は闘志に燃えていた。


「最終日の流れが掴めれば要所で使ってもいいとは思うけどなぁ……なんにしても、使うなら後半からにしよう」


 前半から飛ばした場合、最悪狙い撃ちにあう可能性がある。


 俺達の完全蜃気楼(フルミラージュ)は分析されていると考えていいだろう。解けるタイミングを狙われて倒されたわけだからな。


 手の内を安易に晒すのは避けたい。

 使う時はそうだな、戦況が動く時か――。


「まぁアルデに限らず、全員の力を借りなきゃいけない場面がきっと来るさ。その時まで英気を養うためにも、今は食べよう」


『うん!』


 元気よくそう答え、両手のフォークでスイーツを交互食べするアルデ。


 真名解放で食欲も増したような……気のせい、かな?


 

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― 新着の感想 ―
[一言] ゲーム内でどんなに最強の勇者様でも勝てないラスボス…リアル事情 まぁ最終日不参加よりはだいぶマシなので… リアルと言えばいい年してそうな廃人たちはみんな子供部屋おじさんだと思ってよろしいか?…
[一言] まさかの二日目不参加。三日分全部書くと長くなりすぎるという判断でしょうか。 ともあれ三日目は魔王術ついに解禁なるか。 そして九曜との約束は果たされるのか。 楽しみに待ってます。
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