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大戦争イベント⑤

 

 その後、二度の戦闘(ダリアと青吉が一撃で終わらせている)を経て目標とする石像の処まで到着した俺たち。


『石像か。遠くで見るのと全然違うな』


 足元の部分に立ってみると、その巨大さがよく分かる。高さで言えば電信柱ほどはあるし、幅も鑑みて一軒家と同等の大きさがあった。


 しかもこの石像、何かを模している。

 人型の、武器を持った誰かに見える。


『黄色の反応が四点。青色が一点。石像を挟んだ二時の方角です』


『OK。遠隔からダリアとベリルと青吉で攻撃できそうか?』


 俺の問いに、ダリアと青吉が頷いた。

 ベリルは光線での攻撃が主であるため直線上にいる相手には滅法強いが、遮蔽物があると目視できるまでは攻撃できないようだ。


 ダリアは炎の竜を模した炎柱を、

 青吉は水の竜を模した水柱をそれぞれ纏う。


『《操火龍》』

『《命宿る水》』


 火と水の二匹の竜は、火が九時側へ、水は三時側へと伸びてゆき、黄色い四つのシルエットにそれぞれ襲い掛かった――その中で一人だけは生き残ったのか、石像裏からこちらへと飛び出した。


「不意打ちとは卑怯な――!」


 騎士風のプレイヤーの腹を貫く光の線が駆け抜けると同時に、そのプレイヤーも地面に倒れ伏し動かなくなった。


『卑怯? 騎士道を重んじるような戦争はもう古いんですよ』


 両手の指で四角を作った形を向け、

 宙に浮くベリルが吐き捨てるように言う。


 なんかちょっと怖い。

 俺は心の中でそう呟いた。


『最後の味方もちょうど間に合わなかったみたいですが、今からでも蘇生可能ですね』


『はーい。《蘇れ(レザレクション)》』


 部長の蘇生魔法によって倒れていた合計五人の王国軍プレイヤーが一人ずつ蘇生されてゆくと、皆一様に感謝の言葉を述べてくる。


「いやあ助かったー」

「失効ポイント結構えぐいもんね」

「わ! もしかしてお義父さん!?」

「やあああん次女ちゃん!!!」


 女性陣に部長が拐われて行くのを眺めながら、最後に蘇生された最後まで戦ってた男性プレイヤーに声をかける。


「すみません間に合わなくて、10%失効しちゃいましたよね」


「いやいいんですよ! こうやって仇討ってくれた上に蘇生までしていただいて」


 そう言いながら立ち上がる男性は俺達全員を見渡し、照れるようにして頭を掻いた。


「それにしても戦闘不能(ダウン)中に見てましたけど、火属性に水属性に光属性と、蘇生まで兼ね備えてるって……言い方アレですけど便利ですね」


「実質一人で一つのパーティ分の戦力が賄えますからね。でもまぁ、僕がやられたら全員共倒れなので、一概にどっちが有利とかは言えませんけどね」


 などと交流もしつつ、石像が自分達の拠点になるのを待つ俺達。男性プレイヤーがその石像を見上げながらポツリと呟く。


「これ、たぶん英雄神殿にある石像ですよね。この顔はノクスかな?」


 そう言われてみれば、見たことある。

 かつてマイヤさんと初めて会った〝剣王の墓ダンジョン〟に眠ってた英雄ノクスの顔だ。


 なら、これ全部神殿の英雄像なのか――。

 となると色々読めてくるな。


「これボーナスの《攻撃力アップ》とかも、英雄像と紐付けられてそうですね。ノクスのスタイルから鑑みるに、物理攻撃力とか剣の補正とか、ですかね?」


 俺がそう予想すると、男性プレイヤーはテンションが一気に上がったように表情を明るくさせた。


「おおおお確かに確かに! といっても、鍛治士のオーガンとかはなんのステータスに補正が掛かるんですかね? 戦闘職じゃないですもんね」


「単純な筋力とか、器用さとか……ですかね。単なるモニュメントってだけじゃなくストーリーと絡めてくるの良いですね!」


「ですです! いやあ、マリー様出現とかも囁かれてたりもしましたし、こういうの胸熱ですよね――っと、じゃあ僕等は次の石像取ってきます!」


 そういいながら、ノクス像が青色に輝いたのを確認した男性プレイヤーは、先程の四名を連れて遠くに見える石像の方へと向かっていった。


 俺達もしばらくそこに滞在した後、

 次の目標物を決めて動き出す。


『マリー来るの?』


 そう尋ねるダリア。

 アルデも期待したように鼻を膨らませている。


『そう言ってたけど、どうなんだろう。でも戦場はとても広いし、会うのは難しいんじゃないかなぁ』


『そっか』


 そう言って、ダリアは残念そうに黙る。


 ストーリーキャラが現れるにしても、特定のプレイヤーの前ではなく、全体の局面が動くような場面で一瞬現れるような〝ムービー〟っぽいものを予想しているが、どうなんだろう。


 そんな事を考えながら、俺はあまり注目していなかった〝王国チャット〟へと目をやる――するとそこに、見知った人物が登場している事に気付いた。



匿名:まじかよ…


アリス:これから参加しますよと


匿名:蘇生ヨロ!!


匿名:紋章マスターきた!


匿名:武器壊れるとかまじか


匿名:不在だった軍師様来たぞ〜


匿名:パーティ募集中


アリス:適当に倒しまくるイベントでしょ?


匿名:蘇生欲しい方いませんかー?



 アリスさんの登場でチャットに統一感が出てきたけど、流石にまだ見難いな――アリスさんに紐付けされてるチャットだけを抽出する……と。



匿名:藻 ませてください


アリス:え?私やらないよ


匿名:セクハラ草


匿名:おいマスターそりゃないぜ


匿名:軍師めちゃいるけど小粒すぎて誰も相手にしてくれんのやが


匿名:紋章の主が統率とらんとじゃない?


アリス:別に誰がとってもいいじゃんか


匿名:だから小粒すぎて相手にry


匿名:初日はルール説明の後速攻で戦場に投げ出されたし仕方ないとこはある


匿名:向こうなんか固まり始めたぞ?


アリス:私この後普通に用事あってちょっと経ったら途中退場するし、2日目は出られないよ?


匿名:ちょ姐さん!!


匿名:教祖様ぁ!!


アリス:暴れるだけ暴れるつもりではいるからポイントの方で貢献する!!すまん皆!!



 なるほど……皆、勝手にアリスさんが来たらアリスさんが作戦の軸を決めるものだと思ってたのか。でもリアルの都合もあるし、初日というのもあってここから持ち直すのは難しそうだ。


『とりあえず俺達は初日に石像を取れるだけとって、その周囲の敵を倒せるだけ倒そうか』


『了解』

『はーい』

『承知した!』

『了解しました』

『任せて』


 軍師が出現する期待を早々に諦めた俺は、再び石像占拠に向かう。次の石像は召喚獣を従えた女性の像――ウェアレス様の像を狙う。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 >次の石像は召喚獣を従えた女性の像――エルローゼ様の像を狙う。 となってますが、エルローゼ様も召喚士ですか? クラスアップの時はウェアレス様が出てましたけど。
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