B.B達の秘密工房
短めですが、キリがいいので
砂の町――
メールに添付されてきた座標の場所まで行くと、そこには胸にサラシを巻き、炎がプリントされたニッカボッカを履いた獣人族の姿があった。
「お、きたきた。ういーっす!」
覇気のない声量で手をひらひらさせる獣人族。
俺達は合流すると、自己紹介を済ませた。
「今日はよろしくお願いします《B.B》さん」
「んーにゃ、そんな堅苦しくなくてえーよ」
愉快そうに笑ってみせるBBさん。
ダリアはボーッと眺めながら一言、
『射的のひと』
と言った。
* * * *
砂漠の真ん中を進む俺達。
BBさんは奇妙な銃のようなものを肩に乗せながら、先の方へとずんずん進んでゆく。
「お客さんは久しぶりだなー! まっさかあの〝九曜〟が会いたがるなんて」
襲い来るサンド・デビルを撃ち倒しながら、楽しそうに笑うBBさん。それについて行きながら、九曜という名前を脳内人物図鑑で必死に探す。
「竜の戦士でしたっけ?」
「うんそうそう。あれうちのギルメンなのよ」
「なるほど、何度か会った事があります」
二つ名ばかりが流れてくるが、以前アリスさんがそう呼んでたなと思い出す。
金色の目の黒い竜人族。
日本最強のプレイヤー。
一度PK集団から助けてもらっている。
「本当は冷やかすだけ冷やかして会わない事が多いんだけどね、まぁ奴がお気に入りらしいからさ」
「なるほど。なぜそんなに贔屓にしてくれているのか分かりませんが、冷やかしじゃなくて良かったです」
「あの盾は鬼性能すぎるから見せびらかしたいだけだったんだけどなぁ……」
耳をぺたりと伏せ、ため息をつくBBさん。
何もない砂漠の真ん中まで来ると、彼女が何かを上げる動作をしてみせ――それはハッチだったらしく、轟音を響かせながら何かが迫り上がってくる。
『うおおーー!』
『なんでこんな場所に……』
アルデとベリルが反応を示す。
青吉は暑さで、部長はいつもの如く、ぐったりしている。青吉にはショップで〝冷え冷えガム〟を買って食べさせているが、単純に暑いのが嫌いなようだ。
「ここ、見えないけど床あるから!」
BBさんはそのまま目の前にある透明の床に乗ると、俺たちに向かって手招きした。
それに続く俺たち――
『高い』と怯える青吉の目を塞ぎながら待つと、透明の床はゆっくり降りてゆく。どうやらエレベーターになっているらしい。
「さ。我らが秘密工房へようこそ」
「これは……すごいですね」
ハッチの下にはスチームパンクのような景色が広がっており、いたるところから蒸気が噴き出し、物々しい機械が忙しなく動いている。
「これはなんの機械なんです?」
「んにゃ。ただの飾り」
誇らしげに見下ろすBBさん。
男心をくすぐられるその光景に視線を移せば、目を輝かせるアルデと、冷ややかな視線を送るダリアとベリルの姿があった。
性格出るなぁ。
俺は無言を貫く。
エレベーターが底の底まで辿り着くとBBさんは上機嫌で降り、施設の奥へと進んでゆく。すると床から扉が迫り上がり、BBさんはそのドアノブを回した。
扉の奥は施設の向こう側――ではなく、また別の空間に繋がっているらしく、今度は培養室のような白を基調としたガラス張りの部屋が広がった。
「すごい仕掛けですね」
「そうだろそうだろー?」
そのままBBさんは鼻歌を歌いながら進んでゆき、ガラスの檻に入った何体もの動物型モンスターの横を抜け、今度は本人認証で開く鉄の扉の前で立ち止まる。
眼球の認証、指紋認証、全身のスキャンの後「ヒラケゴマ」の声認証によって分厚い扉が開いてゆき、その奥には闇が広がっていた。
「ようこそ! ここがうちの拠点だよ」
BBさんが電気をつけると、そこには八畳ほどの空間にこじんまりとした工房が収まっている物置のような空間が広がる。
「ここは?」
「ん? ここが本拠点」
「ええと、今までの施設は何だったんですか?」
「え? だから飾りだよ?」
首を傾げ不思議そうに見つめ返してくるBBさん。横でベリルの『無駄遣い』という呟きが聞こえた。
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