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訓練場



 フレイルさんに先導された俺達は、体育館程度はありそうな、かなり広い空間に出た。


 床はタイルのような電子パネルが並んでおり、不可思議な電子記号が泳いでいる。壁から天井までは半球体のような形で、俺は今は懐かしいプラネタリウムを想像していた。


 入り口側の壁には使い込まれた武器や盾が立て掛けてあり、奥に通ずる道に筒状の妙な機械が見える――城内は石造りなのに、この部屋だけ妙に近未来チックなのはなぜだろうか。


 しかし、その疑問はすぐに晴れることとなる。


「名前も出したくねえが、ここはW・ステルベンが作った騎士の訓練場だ」


 舌打ちしながら語るフレイルさん。


 なるほど、機人族を作った研究者の施設ならばこの世界観も肯ける。


「彼が帝国に寝返ったからって無闇に破壊せず、施設の利便性を優先してここを残すのは合理的ですね」


「忌々しい限りだが、フィールド(その辺)に出て敵を転がすより何倍も効率がいいからな」


 そう言いながら、入り口にあるパネルを操作しはじめるフレイルさん――その手慣れた動きに、彼がここをよく利用している事が何となくわかる。


「とりあえず細けぇ話を聞くのは面倒だから、軽く20回くらい戦ってみせろや」


 ぶっきらぼうにそう言いながら、フレイルさんは入り口付近の壁に寄りかかる。


 しかしなぜ20回?


「20回とは、何の数字ですか?」

「あるだろ? 王都の施設利用パス。それの上限いっぱいまでここを使えば、少なくとも新入り二人の差は縮まるぞ」


 そう言いながら不敵に笑うフレイルさん。


 王都の施設利用パスといえば、トーナメントの最終日に景品として貰ったアイテムだ。

 俺の手持ちにそれがあったから、今回ここに連れてこられるイベントが発生したのか……今の今まで使わず終いだったが、なるほどこういう場所で使う物なのか。


 前回はこのイベントが発生しなかった。

 俺は、フレイルさんの中の条件を満たしていなかったんだ。


〝後少し腕を磨くんだな。そしたらお前にもアドバイスしてやる〟


 フレイルさんの言葉を思い出す。

 召喚士のレベルが60を超えるか、三次職にクラスアップした事がトリガーなのかもしれない。


 実力を示すイベントか――


『やるの?』

「うん、俺も説明するよりこっちの方が早いと思うから」


 尋ねてきたダリアの頭を撫でながら、俺がそれを肯定すると、子供達は少し前にみっちり特訓した戦闘体制を取った。


「よし、作動させる!」


 フレイルさんの掛け声が響く。

 筒の間から奇妙な機械の兵隊が数体現れ、俺たちを見つけるとゆっくりと槍を構えて近づいて来る。


 なるほど、紋章ギルドの完成形技能(スキル)試験場はこれと同一の施設か。ちゃんとこの世界観に沿ったものだったようだ……などと考えながら、俺達はフレイルさん達が見守る中、機械の兵隊達との戦闘を開始した――!



 * * * *



 20回の戦闘を終える頃には、青吉とベリルのレベルは58まで上がっており、俺のレベルも70目前のところまできていた。


 この施設、経験値効率が狩場の比じゃない――流石は20回の挑戦制限のある施設。


 最終的な俺たちのレベルは、


ダイキ レベル69 力を統べる召喚士

ダリア レベル68 上級魔族

部長  レベル66 純血魔族

アルデ レベル64 小人族

青吉  レベル58 海竜族

ベリル レベル59 機人族


 こうなっている。


「青吉もベリルも進化無しか」

『でも背は伸びたよ』


 ドヤ顔を見せる青吉。

 言われてみれば、子供達最大の身長を誇るダリアを超える勢いである。流石は唯一の男の子。


「海竜と機人なんて進化しなくて当たり前だ。前者は既に最終進化形態だし、後者には進化の概念がない」


 難しい表情を貼り付けたまま、俺の目の前までやって来るフレイルさん。ダリアから部長から、全員を見わたしたあと、ベリルの所で視線を止めた。


「まずはすまなかったな、黄色いの。こいつが言うように、お前はこのパーティに不可欠な存在だという事が分かった。俺様の見極めが間違っていた」


 そう言い、素直に頭を下げる。

 ベリルが気にしてないというジェスチャーをしてみせると、フレイルさんは「そうか」とバツが悪そうに額を掻きながら頭を上げた。


「まぁ、俺様からお前達へ与えたい課題は二つ。まず〝奥義〟の一つ目(・・・)完全蜃気楼(フルミラージュ)だが、多様性や火力も申し分ない――ただ召喚士であるダイキの魔力が足りないがため、顕現時間がとても短い。何かで補うべきだな」


 俺自身も懸念していたMP枯渇問題。

 これについては俺に考えがあるため、近いうちにある程度改善できると思う。


「それと、やはり決定打は多いに越したことはない。現状で、手っ取り早く最も大きな強化が期待できるのは――海竜のボウズと、剣士の嬢ちゃんだな」


 指をさされたのは青吉とアルデ。


「なぜこの二人なんでしょう」

「海竜のボウズは現段階で最終進化形態だ。進化が進むたび、召喚獣は強く強く育ってゆく――なら、その強さはいわずもがなだろう? 剣士の嬢ちゃんには生まれ持った武器がある。あれの力を引き出せれば、だな」


 フレイルさんはアルデに視線を向けた。


「まずは嬢ちゃんの〝故郷〟を探すことで、強さへの近道になるはずだ。まぁ俺様から言えることはこのくらいだな」


 そう言って、フレイルさんは「パスが無いなら出るぞ」と、手をひらひらさせ出口に向かう。


 それに続く俺たち――

 俺はその時、アルデの顔が少し曇っていることに気付いていた。

 

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