戦闘訓練開始!
葉月さん達とのイベントが終わってしばらくした後――俺達は次の運営イベントのため、紋章ギルドにある〝完成形技能試験場〟へとやって来ていた。
「じゃあ遠慮せず好きに使ってね」
「助かります。一時間程を予定してます!」
頑張ってね。と、立ち去る銀灰さんを見送りながら、俺達はその真四角の部屋へと入った。
「ここなら俺達の完成形が明確になってくるだろ? この中なら、青吉とベリルのレベル不足も問題にならない」
『名案です。さっそく試しましょう』
この場所は紋章ギルドが巨額を投じて制作した、その名の通り〝技能を最高の状態で試せる〟施設だ。
レベル上げよりも先にここに来た理由は、ベリルが考案した俺達が確立すべき戦闘体制をここで慣らす事で、レベル上げの際もその形を意識して戦闘をこなす事ができるからだ。
イベントまでまだ時間があるためか、銀灰さんはすんなりここを貸してくれた。
限られた時間ではあるが、やれる事は全部試したい。
(まず現在の全員のレベルは……と)
ステータス画面から、俺たち全員の現在のレベルをざっと確認する。
ダイキ レベル68 力を統べる召喚士
ダリア レベル66 上級魔族
部長 レベル64 純血魔族
アルデ レベル62 小人族
青吉 レベル18 海竜族
ベリル レベル22 機人族
俺からアルデまでの平均が65だから、青吉とベリルのレベルもイベントまでにそのくらいまで上げたい所だ。
Frontier Worldは牽引が可能であるため、レベル60近い狩場でもあればすぐに合流できるだろう――もちろん、安全性優先だが。
そして全員が持つ技能は、
《ダイキ》
○装備
【召喚魔法Ⅵ Lv.12】【片手剣術Ⅳ Lv.49】【片手盾術Ⅲ Lv.15】【鼓舞術Ⅲ Lv.8】【技術者の心得Ⅲ Lv.16】【野生解放Ⅳ Lv.22】【統率者の心得Ⅳ Lv.3】【空間認識の目Ⅱ Lv.21】【シンクロⅢ Lv.39】【完全蜃気楼 Lv.8】
○控え【調教術 Lv.1】【魔石生成Ⅱ Lv.16】【錬成術 Lv.14】【火属性魔法 Lv.4】【採掘術 Lv.28】【大家族 Lv.1】
《ダリア》
○装備
【火属性魔法Ⅴ Lv.6】【闇属性魔法Ⅳ Lv.27】【魔法強化Ⅴ Lv.28】【魔力回復Ⅴ Lv.14】【オーバーマジックⅣ Lv.8】【怒りの炎Ⅳ Lv.33】【竜属性魔法 Lv.16】【魔力強化 Ⅴ Lv.36】
《部長》
○装備
【回復魔法Ⅳ Lv.7】【強化魔法Ⅳ Lv.18】【弱体化魔法Ⅳ Lv.9】【魔力強化Ⅳ Lv.10】【魔力回復Ⅳ Lv.37】【分配Ⅲ Lv.19】【回復魔法の心得Ⅳ Lv.7】【支援魔法の心得Ⅲ Lv.27】【緊急睡眠 Lv.20】【魔王術〈怠惰〉 Lv.2】
○控え
【アイテム効果上昇Ⅱ Lv.22】
《アルデ》
○装備
【武器術Ⅳ Lv.31】【筋力強化Ⅳ Lv.9】【反応速度強化Ⅲ Lv.23】【魔法武器付属Ⅱ Lv.16】【急所見切りの心得Ⅱ Lv.47】【重撃Ⅲ Lv.36】【殺意Ⅲ Lv.36】【闘気Ⅲ Lv.36】【魔装Ⅲ Lv.12】【魔王術〈強欲〉 Lv.2】
○控え【強靭 Lv.37】
《青吉》
○装備
【人化 Lv.27】【固有属性魔法Ⅱ Lv.20】【竜属性魔法 Lv.1】【水の癒し Lv.1】【竜の眼 Lv.16】【片手剣術 Lv.1】【片手盾術 Lv.1】【脱皮 Lv.1】【拡散強化の陣 Lv.16】【海竜神の加護 Lv.-】
《ベリル》
○装備
【妨害電波 Lv.1】【弱体音波 Lv.1】【ヘイター Lv.1】【短縮化システム Lv.1】【自動追撃システム Lv.1】【バルバロイ・メガ】【ジャスティレイ・テラ】
とりあえずここでベリルの残り三枠の技能を決めておきたいな。色々試してみよう。
俺は銀灰さんから手解きを受けたやり方で仮想戦闘モードを選択し、目の前に現れる〝リザード族〟を模した複数隊の敵を見た。
『では皆さん、決めた通りに行きましょう』
ベリルの言葉に、全員が頷く。
俺は全員に向け、最初の技能を使った。
「皆、気分はどう?」
まず戦闘前に発動するのが俺の《空間認識の目》で、これを全員と共有する。
『よく見える』
『おもしろーい』
『おおー、空を飛んでるみたいだ!』
『高い……』
ベリルを除いた子供達は四者四様の反応を見せ、肝心のベリルは冷静に『把握しました』と答えた。
空間認識の目は場を〝俯瞰〟で捉える技能であるため、どうしても死角ができる一人称視点のこのゲームでは大きく優位に立てる――しかし、これに適応できる者は限られていると聞いたが、幸いにも全員が適応できたようだ。
俺の召喚獣だからと言われれば納得がいく。
若干名、高さに怯えている青吉もいるが……
『敵の数把握。リザード族の中に強化および弱体化に対応できる個体はボスを除いて存在しません。作戦通り行きましょう!』
『『『『「了解」』』』』
ベリルの言葉に、全員が答えた。
まず動くのは俺と部長だ――
「青吉に『野生解放』『猛攻の檄』『疾風の檄』」
『青吉に『物攻強化』『魔攻強化』」
二人から放たれた赤、緑、青の光が青吉に重なり、青吉が七色に輝く。
俺が使ったのは《野生解放》と《鼓舞術》、部長が使ったのは《強化魔法Ⅳ》。
いずれも強化と呼ばれるステータス増強の効果があり、使ったのは、その中でも効果が強力な〝一人〟を対象にした物だ。
大きく分けて範囲が〝一人〟か〝全体〟の二つがあるが、当然ながら全体に及ぶ物はその分効果が薄くなる。
しかしここで、青吉の技能である《拡散強化の陣》が発動した。
七色の光がパーティ全域に伝播。
パーティ欄の横にあるアイコンを見れば、全員に青吉に使った強化が行き届いているのが分かる。
《拡散強化の陣》
自分に付けられた〝強化〟を文字通りパーティ全員に〝拡散〟するスキル。レベル16の段階では、自分に掛けられた効果値の32%を反映とあるが、最大値であるレベル50では100%反映される。
鍛えれば相当強い。
加えて、青吉の《海竜神の加護》の効果も伝播に上乗せされ、俺と部長の強化は更に強化された状態で皆に行き届く。
《海竜神の加護》
ワールドに〝海竜神〟が存在している限り、加護を受けている者のステータスが戦闘中に限り10%上昇し、水の属性魔法と竜の属性魔法の威力も10%上昇する。
強化はこれで終わりではない――
『ダリアお姉様。今回の敵は〝風〟です』
『うん。アルデと武器に《煉獄の炎帝》』
ベリルの一言に反応し、ダリアがアルデの体と剣に向けて火属性魔法を発動。アルデはそれを《魔法武器付属》と《魔装》の効果でそれぞれ武器と体に纏い、更に《闘気》を上に纏った。
紅蓮の業火を体に纏うアルデ。
敵の属性に応じて、ダリアと青吉の所持属性と照らし合わせ、相性の良いものをアルデに付与したのだ。
ベリルの指示が止まる――攻撃開始の合図だ。
「『こっちだ!』」
俺はリザード族の敵視を一手に集めて纏め上げ、後ろから弾丸のように飛び出したアルデを見上げた。
『うりゃあああ!!』
アルデが目の前のリザード族に突っ込む。
ベリルが黒色の魔法を全体に施した直後、部屋全体が震えるほどの爆音が轟いた。
今の一撃により、リザード族は爆散。
戦闘終了を告げる音と共に、部屋が元の何もない空間へと戻っていった。
腕を組み、何度か頷くベリル。
『念のため攻撃着弾前まで待ちましたが、相手はやはり強化を使わなかったので《ヘイター》を使わず普通に弱体化を撒きました――と、こんな感じですね、戦闘直後の動きは』
なんだこの威力は……
それに、想像以上の戦いやすさだ。
自分の役割が明確化されており、加えてベリルが戦場を俯瞰で見られるお陰で、敵の数やその特性に応じて指示を変えてくれる。
これは彼女の膨大な知識量によるもの。
俺達が遊んでいる間も、彼女はずっと皆のために情報を頭に入れていたのだ。
「これなら十分戦えるよ!」
『いえ、これはまだ戦闘開始から攻撃成功時までの想定ですから、本来の戦闘はここからです』
まだまだこれからだと言うベリル。
皆を見れば、部長を除く全員が力強く頷く。
「じゃあ次は〝撃破できなかった場合〟を想定して進めようか」
『はい!』
俺はモニターを操作し、続いて格上のボスを想定した敵を選択したのだった。
新連載始めました!デスゲーム物です!
新連載の方は4/2まで毎日予約投稿されます
Frontier Worldは書き上がったら都度更新します
新連載共々、評価、ブックマークお待ちしております!評価の方法が変わりました、下の☆☆☆☆☆を押すことで評価可能です!