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新たな召喚獣

 

 ダリアの杖を体に受け、ナットラットはその身を経験値へと変えた。最初のフィールドということもあり、出てくる敵はダリアの物理攻撃でも一撃で倒すことができる。

 近くで戦っていた初心者プレイヤー数名は、自分たちが苦戦する敵が少女の持つ棒に当たった瞬間倒されていく様子を、ただポカンと眺めていた。


「お、あの場所だな」


 遠くに見えてきたのは俺と召喚獣たちが最初に出会う思い出の場所。先頭を行くダリアはその場所までの行き方をしっかり覚えていた。


『ダイキ殿、この場所は何があるんだ? 確か拙者が姉御たちと会ったのもこの場所だった気が……』


『何があるというわけじゃないさ。ただ、新しい家族は必ずこの場所で呼ぶことに決めてるんだ』


 新しい召喚獣が召喚されるのを近くで見ているダリアや部長は、この後何が行われるかを察している。あらかじめ言ってはいたものの、アルデは不思議そうにその場所に視線を向けている。


 近くにプレイヤーは居ない、問題なさそうだな。


『三人は木の近くで見守っていてくれ。万が一……戦闘になる可能性もあるからな』


 今まではそんな事もなく最初から全員が友好的だったものの、召喚時に戦闘に発展する場合もあると聞く。とはいえ、呼び出される召喚獣はレベル1であるから、敗北する心配は無いのだが……


『ベリル、どんな子かな』


『空飛べるかなー?』


 早くもギャラリーと化したダリアと部長は木の根の部分に腰をかけ、事の行く末を見守っている。アルデもそれに習い、不思議そうにこちらを見つめている。


 呼び出す召喚獣はほとんど決めている。機人族の阻害役(ジャマー)メイン、名前はベリル。


『皆、ベリルを呼んだらご飯食べに行こうな。そこでベリルの好物を聞き出せればなお良し!』


『任せて』


 アイテム欄から魔石を取り出し構える。視線を三姉妹の方へと向け、合図を送った。


 ベリル――果たしてどんな子になるか。




「『来たれ我が(しもべ)召喚(サモンモンスター)』!」




 俺の声に反応した魔石が光を放ち、お馴染みのスロットが現れた。


 選択できる範囲は全て指定してあるためランダム要素はタイプと種族値のみとなるが、機人族はカスタムが可能である。俺の理想とする阻害役の構成にすることができる。


 手に持っていた魔石が5つ浮かび上がり、スロットの中に吸い込まれていく。



【人型:機人族】


【種属値:5】


【タイプ:万能役(オールラウンダー)



 俺の体を中心に黄色の魔法陣が展開され、発生した光が徐々に召喚獣の姿を形成していき――現れた。


 その黄色の髪と青色の瞳はフランス人形を彷彿とさせ、顔立ちもまた端正。

 顔の所々に機械的な特徴も見られるが、一見すると人間の女の子と相違ない。体の機械的特徴も、想像していたより少なかった。


『な、なんで何も着てないんだ?』


『? あなたは誰?』


 挨拶よりも先に、動揺が口から出ていた。

 対する機械少女は俺を見つめ、警戒するように顔を歪めてみせた。


 幸い、下着を着ける場所は機械で覆われているが、ダリアやアルデの時にはあった衣服が存在しない。また、ベリルはそれに関して何も感じていない様子である。


『とりあえず、場所を変えようか! と、先に1つ質問いいかな?』


 アイテム欄から服のお下がりを探しながら、召喚された場所にボーッと立つベリルへ質問する。


『どうぞ』


『君は――女の子かな?』





*****





 冒険の町――レストラン


 多くのプレイヤーたちが今後の攻略先、購入予定の武器、戦利品の分配で盛り上がる中を抜け、俺たちは四人用のテーブル席に腰をかけた。

 俺の横には部長が座り、向かい側にダリア、ベリル、アルデが座る。


『ダイキ、あの質問は悪い』


「すまん……過去に二度も勘違いしたから先に聞こうと思ってだな」


『見ればわかるのにー』


 三姉妹からの猛烈なブーイングを浴びながら来たレストランだが、ベリルは興味津々だった。現在彼女はダリアが前に着ていたダークレッドのワンピースを着ている。


 メニュー表を広げ、慣れたように料理を選ぶダリアとアルデ。その後、挟まれたベリルは二人から好きな食べ物を聞かれているのが見える。


「部長はリンゴの入ったサラダでいい? 大盛りにできるけどどうする?」


『普通でいいかなー。はやく食べさせて』


 彼女はテーブルへと顎をつけ、前足は宙ぶらりん状態のまま既に待機している。今日は俺が彼女の世話役だ。

 ダリアが店員を呼び出し、俺は先に部長の分と自分の分を注文する。


『これとこれとこれ、あとこれとこれとこれ』


「待て待て、頼みすぎじゃないか?」


『だって、好きなもの分からないって言ってるから』


 メニュー表にある料理を素早く指差すダリア。店員はそれらを繰り返した後、店の奥へと消えていった。

 俺は気を取り直し、正面に座るベリルへと視線を移す。


「じゃあ改めて自己紹介かな。俺は君……ベリルを召喚したダイキ、そしてダリアと部長、アルデだ。これからよろしく」


 そのまま、ダリア達の紹介も済ませる。それを聞いていたベリルは小さく頷き、口を開く。


『私はベリル?』


「ああ。君の名前だよ」


 彼女がその名前を気に入っているかどうかは不明であるが、小さい声で『ベリル……ベリルかぁ……』と繰り返しているのが聞こえる。


『私はベリル。好きなものは分からないけど、全部食べて決めようと思う』


「よろしくベリル。でも、全部はやめよう! この後発表する内容にも影響出るから!」


 ニッコリと答える彼女の横で、ダリアが満足そうに頷いているのが見える。彼女は俺を破綻させる気のようだ。


「ベリルも家族になった事だし、ご飯が運ばれたら皆に話したい事があるんだ。いいかな?」


 俺の提案に全員が頷き、料理が来るまでの間、雑談タイムへと移行したのだった。







名前 ベリル

Lv 1

種族 機人族

筋力__30

耐久__30

敏捷__30

器用__30

魔力__20


召喚者 ダイキ

親密度 13/200


技能(スキル)がカスタマイズされていません!

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