表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/304

ダンジョン『機械仕掛けのトラップタワー⑩』

 

――

――――

――――――



『それにしても、流石だなダリア』


『任せて』


 ボックスに収まる《鏡の欠片》という、MVP報酬によって出現したアイテムをちらりと確認。そして、幸運の女神であるダリアに感謝する。

 あの競争率の中、有無を言わせず高得点を叩き出した彼女の運は底知れない。


 しかし、手に入ったのはアイテムやお金だけではない。



名前 ダイキ

Lv 56

種族 人族

職業 存在愛の召喚士

筋力__112 (140)【252】

耐久__66 (391)【457】

敏捷__65 (31)【96】

器用__105[20](190)【315】

魔力__66 (69)【135】


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値



名前 ダリア

Lv 53

種族 中級魔族

状態 野生解放

筋力__72[36](51)【159】

耐久__72[36](380)【488】

敏捷__72[36](45)【153】

器用__72[36](45)【153】

魔力__204[77](283)【564】


召喚者 ダイキ

親密度 144/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ



名前 部長

Lv 50

種族 純血魔族

状態 野生解放

筋力__52[33]【85】

耐久__69[36](202)【307】

敏捷__52[33]【85】

器用__69[36]【105】

魔力__159[70](135)【364】


召喚者 ダイキ

親密度 125/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ



名前 アルデ

Lv 45

種族 小人族

状態 野生解放

筋力__230[71](203)【504】

耐久__53[33](414)【500】

敏捷__63[40]【103】

器用__60[64]【124】

魔力__53[33]【86】


召喚者 ダイキ

親密度 103/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ



 今回のボス討伐で得られた膨大な量の経験値により、俺のレベルは56にまで上がった。

 そして、ダリアのレベルは53、アルデのレベルが45……部長のレベルが50となっていた。


 予想外の報酬量に驚きの声を上げていたメンバー達も今は大人しくなり、ギルド単位で固まってステータスボーナスの割り振りに勤しんでいる様子。


 準備が終わるまで、もう少し時間が掛かりそうだ。


「まずは部長、進化おめでとう」


 足元で横になっている部長のお腹をさすってやると、彼女は気の無い声で『いつもよりやる気が出なーい』と答えてみせる。


『小さい角が可愛いね』


『あねさん、空飛べそうだよ!』


 早速、鼻ちょうちんを作る部長の姿にダリアとアルデは興味津々。

 それも当然かもしれない。

 部長には、二本の小さな角と、可愛い羽根が生えているのだから。


「唯一着てくれた羽根と相まって、なんだか天使みたいだね。アルデが言うように、本当に空を飛べるんじゃないか」


『飛べたとしても、しんどそうだからやらなーい』


 俺の言葉を興味なさそうに一蹴する部長。

 ぐうたら度は間違いなく上がっている。


 進化を嫌がっていた彼女であったが、フレイルさん達からのアドバイスなどを受け自分の中で解決してくれたらしく、落ち込んでいるような様子はない。

 種族名は魔鼠族から《純血魔族》へと変わり、見た目もその名の通り悪魔っぽく変化しているのが分かる。

 しかし、大きく変化があったとはいえ彼女の見た目は変わらずカピバラである。《鼠族》が取れたのは違和感を覚えるが……


「あぁああああ!!!?!!」

「きゃああああ!!?!!」


 ボス部屋に鳴り響く、悲鳴と奇声が入り混じる甲高い女性の声。

 そのまま半狂乱気味で疾走してくるトルダとマイさんによってたちまち拉致された部長は、それでも構わず寝息を立てていた。


「天使だわ! 天使がここにいる!」

「神様は信じてないけど、天使の存在はたった今ここで確認したわ!」


 そのまま、危なそうな崇拝者と化した2人にわっしょいわっしょいされる部長。起きる気配は無く、されるがままである。


「2人とも、部長を起こさないように崇拝してあげてください」


 俺の一言に、2人は千切れそうなほど首を縦に振ったのだった。


「やはりこの子は“故郷不明7種類”の一角。掲示板で予想が立てられてはいましたがこの姿を見たらなおさら……」


 トルダとマイさんの部長争奪戦を眺めている俺に、神妙な面持ちで花蓮さんが声をかけてきた。

 

「部長の進化先について何か知っているのですか?」


 最初はただの《鼠族》だった彼女の進化先がこうも変化してくると、進化の行く末が全く予想できない。部長が以前悩んでいた“進化したくない”という気持ちに、何か関係しているのだろうか?

 少なくとも花蓮さんの口振りは、何かを知っているように思えてならない。


「では単刀直入に聞きます。部長ちゃんのスキル欄に新しいスキルが追加されていませんか?」


「スキル欄?」


 真剣な声色で告げる彼女に促されるがまま、俺はステータス画面を再度開き、部長のスキル欄へと指をスライドさせていく――



 技能(スキル)


【回復魔法 Lv.27】【強化魔法 Lv.29】【弱体化魔法 Lv.24】【魔力強化Ⅱ Lv.10】【魔力回復 Lv.28】【アイテム効果上昇 Lv.22】【分配Ⅱ Lv.9】【回復魔法の心得 Lv.21】【支援魔法の心得 Lv.27】【緊急睡眠 Lv.6】


 控え【魔王術〈怠惰〉 Lv.1】



 確かにある――が、なんだこれは?

 

 魔王術……怠惰?


「部長そのものを表すようなスキルを覚えてますね。でも、なぜそれを花蓮さんが?」


 魔王という字面は物凄く強そうだが、続く怠惰という二文字が見事にそれを中和している。

 俺の言葉に、花蓮さんは『やはりそうか』と納得したように大きく頷くと、何かを思い出すようにして語り出した。


「これは召喚士に関係する掲示板にあった内容です。数名で結成された“検証専門”のパーティーが各種召喚獣達の故郷を探す作業を行って、いました――」


 花蓮さんが語ったのは……以前俺も掲示板で見たやりとりについてだった。

 凄腕の検証メンバーがFrontier Worldのエリアというエリアを探し回り、召喚獣達の故郷を見つけていった。その中で、メンバーがどこを探しても結局見つける事のできなかった種類が7つ挙げられ、その中の1つに“カピバラ”の名前があった事を記憶している。


 しかし、そのやりとりには続きがあったようで……


「後日、ある召喚士が貼った画像に、誰かの仮説を証明するかのような内容が記載されていま、した。彼の召喚獣は“故郷不明7種類”の一体、レッサーパンダでした」


 そのまま、花蓮さんは素早く画面を操作し、その画像を見せてくれた。



 ――魔王術〈憤怒〉



 そこには、部長が持つスキルと似た、しかし別種類の魔王術が載っていたのだ。


 レッサーパンダのは憤怒、部長のは怠惰……故郷不明7種類(・・・)


「これは正しく……」


「7つの大罪、ですね」


 俺の言葉を、花蓮さんが続けた。


「この検証メンバーの代表は“天界・魔界・幻界の三箇所に動物型Mobは住めない”という前提のもと、捜索を打ち切りとしていました。しかし、そもそもこの7種類の動物型召喚獣が見当違いの種族だったら?」


 そのまま、視線を部長の方へとゆっくり移動させる花蓮さん。


「魔王術を使った際の感想についてなぜか書き込みがされてい、ません。その召喚士に予期せぬ状態が起こってしまったのかもしれ、ません。知らずに使ってしまう前に、それだけは先に承知しておいてほしかったので」


 長々とすみません――と、花蓮さんは少し慌てた様子で謝罪した。

 彼女からの情報が無ければ、確かに俺は、何も知らずに試していたかもしれない。


「とんでもない! わざわざありがとうございました。しっかりと胸に刻んでおきます」


 俺の言葉を受け、花蓮さんは安心したような表情を見せた。


 それにしても――この、魔王術〈怠惰〉というスキル。一体どんな力を持っているのだろうか……


「出発の時間よ! 次の階からより一層、罠も敵も手強くなるから気を引き締めてね!」


 魔王術についての情報を掲示板で探しているさなか、出発の召集が掛かった。

 召集を掛けたのはアリスさん。

 約束の時間きっかりである。

 メインクエストの延長上であるためレイドのリーダーは俺なのだが、紋章ギルドの人達がまとめ役を買って出てくれている。故に、現在まで極めて順調に攻略できていると言えよう。

 俺は開いていた掲示板を閉じ、戻ってきていた三姉妹を連れ、アリスさん達の方へと向かった。


「ほらエミリ。何してんだ、召集掛かったぞ」


「え? あ、すみません!」


 俺たちと時同じくしてケンヤ達も動き出したが、何かに没頭していたのか、遅れるエミリさんが注意されているのが見えた。


 俺はその事よりも、彼女のことを見つめるアリスさんの表情だけが、深く印象に残ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ