新調装備とスキル取得券
オルさんが作ってくれた装備を一つ一つ見ていく事にしよう。
まず武器だが、一見変化のない鉄の片手剣に見えるものの、元の性能が筋力+12耐久+3から、現在では筋力+19耐久+10と、両方7ずつ上昇している事がわかる。
次にバックラー。表面の鉄はそのままに、内側を補強していた木材から、一つ目鬼の骨に変えられている。
性能は耐久+20にまで上昇し、重量も軽くなっているように感じた。
防具は全てがオーダーメイドで、革装備と同じような作りとなっており、今度は部分部分に鉄のプレートが仕込まれている。
一つ目鬼の青皮はただの革よりも伸び縮みが利き、着心地は革装備の比ではない。
剣を抜き、盾を構え、振り心地と弾き易さ、そして防具の具合を確かめる。
剣や盾使い易さは勿論の事、性能が上がった分安心感が段違いだ。
防具も補強として備えられた金属同士に距離があるため触れ合わず、戦闘において邪魔になる事はないだろう。アンダーウェアのようなぴったりとしたフイット感も良い。
防具の性能は筋力+10、耐久+17となっており、何より嬉しかったのは器用に+8が入っていた事だった。
「素材は殆どがダイキの持ち込み品で賄った。鉄はある程度在庫から回したが、費用はほぼ加工賃で問題ないぜ。ダリアちゃんの杖も渡しておく」
直接、ダリアの手に握られた杖は複雑な模様が刻まれた骨製の物で、性能は筋力+3と魔力+12となっていた。
こちらも大幅なパワーアップを遂げ、ダリアは満足そうに杖を振るって感触を確かめている。
「何から何までありがとうございます。文句無しの性能ですね」
「お陰で俺の技能レベルもだいぶ上がったからな。いやいや、フィールドボスの素材ってのはとんでもない品だな」
豪快に笑うオルさんに加工賃として16000Gを支払い、俺は新たな装備を手に入れた。
全体に青みがかったその防具と、ダリアのダークレッドは反対色になっている。
オルさんにお礼を言い、俺たちは早速レベル上げに向かう。
今日の目標は、風の町付近で新しい敵を倒すことだ。
風の町には南ナット平原へ繋がる入り口の他に、二ヶ所のポータルがあった。
それぞれが冒険の町ではないどこかに繋がっているようで、Frontier Worldのマップはまだまだ全貌が見えてこない。
俺たちは南ナット平原へ繋がる入り口からYの形に続く道の左側へと足を進める。
装備のグレードも上がり、一つ目鬼との戦闘でレベルも大幅に上がっている。
油断は禁物だが、過度に警戒する必要はなさそうだ。
フィールドへ続くポータルの前で、今一度ステータスを確認しておく。
思えば技能のレベルも上がって技も覚えている。今のうちに全て把握しておかないとだな。
名前 ダイキ
Lv 11
種族 人族
職業 召喚士
筋力__39 (+26)
耐久__20 (+55)
敏捷__20
器用__38 (+8)
魔力__24
技能
【召喚魔法 Lv.7】【調教術 Lv.1】【火属性魔法 Lv.2】【魔石生成 Lv.4】【採掘術 Lv.5】【錬成術 Lv.5】【片手剣術 Lv.12】【片手盾術 Lv.10】【鼓舞術 Lv.6】【技術者の心得 Lv.13】
【片手剣術 Lv.12】
青の閃剣 / 赤の閃剣 / 黄の閃剣 / 剣弾き / 二閃剣 / 飛閃剣
【片手盾術 Lv.10】
挑発 / 盾弾き / 盾突進 / 鋼の闘志
【鼓舞術 Lv.6】
猛攻の布陣 / 鉄壁の布陣 / 疾風の布陣 / 降魔の布陣
装備の一新により大幅に上がったステータスだが、耐久の値は純粋な盾役には劣るものの、単なる防御をするだけなら十分な数値になっている。
今後、弾きを防御の主体とするにしろ数をこなし、あらゆる場面に慣れ、対応できる技術を身につけなければならない。
LPの底上げと防御面の強化をすることで、失敗した時のリスクを減らすように備えてある。
勿論、器用にポイントを大きく振ることができれば、技術者の心得も相まって弾きの成功率は伸びる。が、器用を上げる戦士用の防具がまだ少ないらしい。
素材さえわかれば、真っ先に集めるべき項目だろう。
順調に育っている技能だが、召喚士専用として初期から組み込まれていた【調教術】、ダリアの参戦で使用頻度が極端に少ない【火属性魔法】、これらの伸びがイマイチ悪く、調教術に至っては未だ一のままだ。
召喚士専用の技能でもある調教術には使役、命令、服従等の召喚獣を支配する技が組み込まれているものの、これらはパートナーとして共に戦う召喚獣に使うにはどうかと思ってしまうので今まで意識して使った事がなかった。
初期の、言うことを聞かない召喚獣には使わざるを得なかったのかと考えると、心が痛むな……。
勿論、的確な指示で動くパートナーというのも戦闘ではかなりの強みという点はよく分かるが。
――これに関しては、この機会に新しい技能に組み替えようと思っている。
片手剣術では新しく飛閃剣という技を習得。
内容は、斬撃による遠距離物理攻撃。状況に応じて使う場面が出てきそうなため、今後の期待値が高い技の一つだ。
片手盾術では鋼の闘志という、一定時間敵からの攻撃で出るCriticalの確率を下げる効果がある。
使いどきにセンスが問われる技だな。
そして鼓舞術には待望の新強化技の疾風の布陣と降魔の布陣が追加され、疾風の布陣では敏捷値が微量アップ。降魔の布陣では魔力値が微量アップする。
猛攻や鉄壁と効果時間も同じ300秒と長く、クールタイムは一分とやや短め。戦闘の直前に使っておきたい技となっている。
名前 ダリア
Lv 7
種族 魔族
筋力__26 (+3)
耐久__26 (+10)
敏捷__26
器用__26
魔力__82 (+49)
召喚者 ダイキ
親密度 26/100
技能
【火属性魔法 Lv.13】【闇属性魔法 Lv.9】【魔法強化 Lv.11】【魔力回復 Lv.10】【オーバーマジック Lv.3】
【火属性魔法 Lv.13】
火弾 / 火壁 / 爆発 / 火炎弾 / 火炎柱
【闇属性魔法 Lv.10】
闇弾 / 闇霧 / 闇矢 / 影縛り / 黒の破壊核
杖やブレスレットとペンダントによる恩恵で、防御面と魔法攻撃面を底上げしたダリア。魔力に関しては合計値131と破格の数値を出し、怒らせると本格的に命が危ないことがわかる。
赤い宝石が付いたイヤリングもそうだが、属性強化の効果も重なれば、数値以上の威力が出るのは想像に難くない。
技能はダリア本人が好んで使う火属性魔法と、特殊効果で敵を翻弄する闇属性魔法。
これら二つも順調な為、同時に魔力回復と魔法強化も上がっている。
オーバーマジックはやはりMPを大きく消費するためか、あまり多用していないようだ。
鍛えれば化けるスキルだとは思っているものの、一度MP切れで死なせてしまっているだけに強要はできない。
火属性魔法の技には新たに火炎柱が追加され、大きくMPを消費する分、敵に大きなダメージを与える事ができるようになった。
闇属性魔法の技には影縛りと黒の破壊核が追加された。
影縛りは名前の通り、地面から生えた影の手が相手の動きを封じる魔法だ。逃走前の足止めや、逆に逃げる敵を捕まえる時に重宝しそうだな。
黒の破壊核は大量のMPを消費して、高威力の闇属性魔法攻撃を敵単体に与えるという、聞くからに強そうな技。
今後手強い敵との戦いの勝敗を分ける鍵となりそうだ。
「さて。まずはスキル取得券で……」
調教術を控えにいれ、新たに有用な技能を取得する。
職業や種族毎に変わるともされる数多の技能は、それでも膨大な量が存在している。
その中から慎重に、使い勝手の良さそうなものを厳選していく。
【野生解放】#Active
モンスターのステータスを強化する。技能の効果が残ってる状態のモンスターを倒した場合、取得経験値アップ。
【起死回生の策】#Passive
自身の残りLPと総耐久値を超える攻撃を回避した場合、次回の攻撃に二倍のダメージ量を加える。
【体術】#Passive
軽やかな身のこなしを会得する。無手での攻撃の際、ダメージ量アップ。
そして最終的にこの三つが候補に残る。
野生解放は一見クレイジーな技能ではあるものの、モンスターの見方を変えれば召喚獣も含まれそうな気がしないでもない。
実際のところ非常に曖昧なため保留となった。
起死回生の策は、効果にあるところの回避が『その身一つで攻撃を受けずに避ける』だけなのか、それとも『弾きなどで攻撃を流し、一撃必殺をやりすごす』にも適用されるのかで悩んだ。こちらも保留だ。
体術はオーソドックスな技能の一つだが、軽やかな身のこなしは場面場面で必要になってきそうだと感じ、候補に入れておいてある。
残念な事に、野生開放も起死回生の策も取得した人がいないのか、掲示板等で調べても俺の疑問が晴れることはない。
技術者の心得を弾きに活用できたりと、自由度と汎用性の高い技能達ではあるが、曖昧な説明文に苦悩するプレイヤー少なくなさそうだ。
スキル取得券はケンヤ曰く、かなり希少価値の高いアイテムらしい。
無駄遣いで終わらせるわけにはいかないが――どうしたものか。
無難なところを取れば、間違いなく体術一択になるが……。
「ま、誰かが先陣切ってやらないと次の人が進めないよな」
定位置にいるダリアを意識しながら、俺は【野生解放】を習得した。
召喚獣が懐いて言うことを聞くようになったことにより、召喚士は地雷職から脱出できたと言える。
――後は最強職にまで上り詰めるまでだ。
俺がそのきっかけを作れば他の召喚士が更なる境地を開いてくれる。と、願いを込め、俺たちは新たなフィールドへと向かった。