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課金衣装

活動報告にてキャライラストを公開しました!

 

 分断部屋での戦闘を終え、その先の通路で待つ事約30秒――やや遅れて部屋から出てきた花蓮さんが、俺たちの無事を確認したからか、安堵の表情を浮かべた。

 ウルティマの後ろからひょっこりと顔を出す風神雷神は、俺たちを見るなり「な、なにぃ?!」と驚愕の声を上げる。


「多数の敵が相手の時は大兵器の本領発揮、ですね」


「悪いが僕はいつ如何なる時も最強なんでね! さあ君達! 敗者は勝者の言うことを何でも聞くのが決まりだったねッ!」


 高笑いするOさんを胡散臭そうに睨みながら「初耳、です」と、俺に耳打ちする花蓮さん。


 奇遇だ、俺も初耳である。


「僕のセンスを君達がなぜ馬鹿にしたのか考えた結果……嫉妬から来る暴言であることが判明したんだよ! 水臭い!」


 そう言って、Oさんは目にも留まらぬ速さでメニュー画面を操作し、何かしらのアイテムを花蓮さんの元へと贈りつけた。

 それを訝しげに開く彼女の隣で、アイテム群を盗み見る。


【ジーニアス・スーツ】

【ジーニアス・ドレス】

【ジーニアス・ハット】

【ジーニアス・ペンダント】

:

:

:


 ずらりと並んだ装備品を見て、花蓮さんは思わず「ハイ、センス」と呟いた。


 スーツの方は趣味の良い(・・・・・)ゴールドで、ドレスの方は眩く輝くピンクゴールド。

 カラーもさる事ながら、その奇抜で派手なデザインも相まって、着こなすのは至難の技だろう……それが花蓮さんパーティの人数分、性別に分けられてセットで贈られてきている。


「これ、いくらしました?」


 俺はつい、反射的に聞いていた。


「トータル一万二千円だね! いやあ、時たま自分の高すぎるセンスが恐ろしくなる事があるよ! 因みにコレには《技能(スキル)成長度上昇》が付いてるんだ」


 見事に、性能極振り装備である。


 ヘルヴォルが花蓮さんの元へと歩み寄り、花蓮さんは何度か頷いてみせる。


「……ヘルヴォルが『これを着るなら裸でいい』と言って、ます。どちらにせよ、負けたほうがご飯をご馳走するという話しか聞いていませんので着るのは風神雷神だけでお願い、します」


「えっ?!」


 きっぱりと断ってみせた花蓮さんは、男性用のスーツ二組だけを受け取り、メニュー画面から召喚獣の装備変更を行った。


「待って! 待ってください花蓮ちゃん! いや、花蓮様! 俺たちが悪かった!」

「謝るから勘弁して! この服装に時代が追いつくには、あと二世紀ほど掛かる!」


 血相を変え許しを乞う二人の体が光に包まれ――次の瞬間には、体にぴったりフィットした金色のスーツが装備されていた。

 風神と雷神はお互いの格好を確認し、他人事のようにゲラゲラと笑っている。


「なんだ――これじゃあ何着か余ってしまうな! ではダイキ君、これは小悪魔ちゃん達用にあげよう」


 送り返されたアイテムをスライドしてもてあそびながら、Oさんはこちらに矛先を向ける。


「……ありがとうございます」


 とりあえず受け取りながら、チラリと視線を三姉妹の方へと移動。反応を見る。


『ほしい』

『いらなーい』

『拙者は……えっと……』


 普通に嬉しそうな反応を示すダリアと、予想してはいたが無関心の部長。

 アルデは表示されたドレスと地面とで視線を行き来させながら、顔を赤らめモジモジしている。

 今まで彼女はかっこいいものにばかり反応していたが……ちゃんと女の子らしい感情も育っているようだ。


「お!」


 いただいたドレスを二人に着せてやる――と、これがまたよく似合う。色も女の子が好きそうなピンクであるし、体に合わせてサイズが縮小された結果、かなり可愛らしい見た目となった。


 感動しているのか、前側を見たり後ろ側を見たりしながら、ダリアは『おー』と呟く。


 そしてアルデだが――



『ダイキ殿。これ、変じゃないよね?』



 ボーイッシュな印象を受けるいつもの衣装から一変、完全な女の子用の服に身を包んだアルデは、恥ずかしそうに、俺を見る。


「すごく似合ってるよ。ダリアは様になってるし、アルデもこういう服に興味が出てきたとなると……」


『出てない! ち、ちょっと着てみたかっただけだよ!』


 そのままアルデはダリアの後ろに隠れるよう移動し、口を尖らせ、こちらを睨んだ。


 恥ずかしがり屋な部分は健在だ。


 ダリアとアルデのドレス姿を堪能した後、そんな二人を無我夢中で写真に収める花蓮さんに声を掛ける。


「花蓮さん」


「すみません止めないでください。お金は払いますから」


 色々と様子がおかしいが、特に止める必要も無いのでこのまま続ける。


「廃城のフロアはあといくつあるのでしょうか? 部長のレベルが上がりすぎてしまうと進化してしまう恐れがあるので……」


「それに関しては問題、ありません。次のフロアがボス部屋、なので」


 俺の質問に素早く答える花蓮さん。

 言葉には出ていないが分かる。邪魔しないでくれという意思が伝わってくる。


「いやーたまげた! 僕のセンスに付いてこれる逸材がいるなんてッ!」


 花蓮さんに黙って写真を撮られる二人に視線を向けながら、Oさんは感心するように頷き、拍手した。

 デザインはともかく、性能はかなり良い。レベル帯の高い場所では装備させられないが、技能(スキル)上げ作業の時に重宝するだろう。


 ドレス姿を羨ましく思ったコーラルもそれに着替え、仲良く並ぶ可愛らしい三人の姿に癒されながら辺りを見渡した。


 三人をひたすら写真に収める花蓮さんと、自分の目に狂いはなかったと高笑いするOさん。

 楽しそうな姿を、ウンウンと頷きながら眺めるウルティマに、無表情のまま腕を組むヘルヴォル。


 一方――


「雷神さ、この世で一番惨めな仕打ちってなんだと思う?」

「そりゃあお前……変な格好させられた挙句、皆に触れられずに放置されることだぜ」


 風神雷神は、寂しそうだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後、大笑いさせてもらいました
[一言] 風神雷神ちょっと可哀想w
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