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更なる進化へ

 

 気が付けば既に時刻は16:30――実に三時間半近く、Oさんにはレベル上げを手伝ってもらったという計算になる。

 亡霊は物理無効化能力、亡者は異常な再生能力といった特殊な能力を持っているからか、倒すのが厄介な分貰える経験値量も相当に多い。飛竜に比べると見劣りするものの、討伐数はそれ以上に稼げていると断言できる。


 俺のレベルは53となり、ダリアが50に、部長が47に、アルデが40へと成長している。


 経験値チケットを使っているうえ、立て続けにトッププレイヤーにレベル上げを手伝ってもらっている事が、この急激なレベルアップのカラクリと言えよう。

 レベルが大きくなるにつれ俺の必要経験値量は膨大になっていき、逆に必要経験値量がまだ少ないアルデがとうとう追いついてきた。



 そして――



「おや?」


「そうか……このタイミングで、もう一段階(・・・・・)上に行くのか」


 レベルアップを告げる音と同時に起こった変化――それは、 最初のそれ(・・)と全く同じような演出でもって、唐突に開始されたのだった。


 まばゆい光に包まれたのは、ダリア。


 小さかった体がじわじわと大きくなっていき――


「こ、今回は前回と違って、随分と成長するんだなあ……」


『どうだ』


 予想外の変化量に戸惑う俺のリアクションが嬉しかったのか、ダークレッドの髪の少女(・・)がドヤ顔で胸を張ってみせた。

 彼女の身長は俺の腹部程度にまで伸びており、顔つきもやや大人びたという印象を受ける。


 姉の急激な成長に、部長は器用に前足を何度も合わせて拍手で祝福し、アルデは目をキラキラさせ素直に羨ましがっているのが見えた。

 召喚獣が50でもう一段階進化する事を事前情報として知らなかったためか、何も言葉が出ない。

 

「驚いたなあ……さっきまでのお子様モードが見る影もないじゃないか! 進化を間近で見たのは初めてだったよ」


 幼女から少女へと変身したダリアの頭をぽむぽむと撫でながら、Oさんは感心したように笑ってみせた。

 ダリアの額にデカデカと怒りマークが出たように見えた瞬間――Oさんの手が無慈悲に払われる。


『貴方にされるのは 違う』


「ああダイキ君、通訳はいらないよ。だいたい予想つくけど、内容聞いたら僕泣くと思う」


 不憫な人である……しかしまあ、ダリアの甘えん坊な部分はまだまだ健在な様子。


 俺は成長した彼女の姿をしっかり目に焼き付け、頭に手を置いた。

 髪も少し伸びたな……ぐっと大人に近づいたように思える。


『おめでとう。一段と可愛くなったな』


 今回は素直に、そして直球に褒めておこう。

 ダリアは手こそ払ってこなかったものの、ぷい――と、そっぽを向きながら一言『ありがとう』と呟いた。



*****



 レベル上げによるボーナスや、ダリアの進化に伴う変更点の確認のためステータス画面を眺める俺に、Oさんが周囲を見渡すように顔を動かしつつ、声をかける。


「そろそろ休憩を挟もうかッ! この中に入ってほしい!」


 そう言って取り出したのは、またなんともゴージャスな巨大テントだった。


 形は名前から連想される通りの三角形で、入り口が四角く切り取られていた。


 入り口の上部分にはカンテラが揺れている。


「これ、他のプレイヤー方の迷惑になりませんかね?」


 見た目の派手派手な感じはこの際置いておいて、大人6人が悠々と入れそうな大きさを誇るこのテント……非常に邪魔な位置に設置されている。


 Oさんが言うように、ここは効率のいい狩場なので、当然利用プレイヤーは多い。

 フィールドにこんな障害物があっては戦闘の邪魔になる。


「ほほう、面白い疑問だね! でも心配なし!」


 俺の言葉にOさんは「その疑問を待ってました」と言わんばかりの表情でテントの中に入っていくと、次の瞬間――テントが半透明になった。

 光学迷彩ではなく、テントに触れることすらできなくなっているもよう。


 テントの上には《天才が休憩中》という吹き出しが浮かんでいる。


 しばらく経ち、中から天才がゴソゴソと這い出してきた。


「こんな風に、中で設定を弄れば景色とほぼ一体化して干渉不可能領域が形成されるんだッ! 便利なアイテムだよね」


 とても得意げに、そして満足したような顔で語るOさんに、一応お約束の質問を追加で聞いておくことにする。


「……因みに、幾らしたんです?」


「200円。テントは使い捨て」


 Oさんの言葉を肯定するかのように、先ほどまで半透明化していたテントが、まるで空気が抜けたように萎みだし消え去った。


 今の実演がリアルマネー200円分……Oさん(この人)が課金に対し、かなり麻痺していそうで心配になる。


「再構築! ささ、入ってくれッ!」


 俺の心の声は彼に届かず、再び200円のテントをアイテムボックスから取り出した。

 俺を置いて、ダリアと部長がモゾモゾとテントの中に侵入していくのが見える。


 Oさんも言っていたが、確かに遠慮がない。


「ボーナス割り振りもこの中でするといいよ! このテントの中で休んでいる間は、モンスターだろうとPKだろうと僕らを殺すことはできないからね」


 突撃ーッ! と、まるで虫のような動きでOさんもテントの中に入っていき、俺は残ったアルデと顔を見合わせ、続くようにテントの中へと入っていった。


 中は――例のごとくひたすらに広く、ワンルームではあるが全ての設備が整っているように見える。

 何かに見立てたチェス駒のような置物が数体置かれた長テーブルを囲うように設置されている質のいいソファと、赤と金の絨毯。


 部長は早速、ソファに座る俺の膝上へとやってきたかと思えばグースカと寝息を立て始める。

 アルデは進化して大人っぽくなったダリアにあれこれ聞いているのか、ダリアが何かを言い、ドヤ顔を決め込むたびに『すげー!』と素直なリアクションを取っていた。


 ――しばらくは自由時間だな。


 とりあえず、ボーナス割り振り等は俺が全部行っておこう。



名前 ダイキ

Lv 53

種族 人族

職業 存在愛の召喚士

筋力__108 (140)【248】

耐久__62 (391)【453】

敏捷__62 (31)【93】

器用__100[20](190)【310】

魔力__66 (69)【135】


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値



名前 ダリア

Lv 50

種族 中級魔族

状態 野生解放

筋力__69[31](51)【151】

耐久__69[31](380)【480】

敏捷__69[31](45)【145】

器用__69[31](45)【145】

魔力__198[81](283)【562】


召喚者 ダイキ

親密度 137/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ



名前 部長

Lv 47

種族 魔鼠族

状態 野生解放

筋力__49[38]【87】

耐久__66[41](202)【309】

敏捷__49[38]【87】

器用__66[41]【107】

魔力__116[49](135)【300】


召喚者 ダイキ

親密度 116/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ



名前 アルデ

Lv 40

種族 小人族

状態 野生解放

筋力__220[65](203)【488】

耐久__48[38](414)【500】

敏捷__58[39]【97】

器用__55[63]【118】

魔力__48[38]【86】


召喚者 ダイキ

親密度 95/200


※【 】内が総合計値

※[ ]内が技能スキル強化値

※( )内が装備の強化値

※小数点第一位を切り上げ



 進化に伴うステータスの増加により、ダリアの基礎魔力値が上昇。俺の技能(スキル)による効果も相まって、彼女の魔力合計値は既に600目前まで迫ってきていた。


 こうして見ると、この一日で全員のレベルがかなり上がったことが分かる。しかし、単純に経験値だけを稼ぐこのやり方では技能(スキル)の熟練度は上がらないため、新たな(アーツ)の取得率は低い。


 直接的な強さに繋がるステータスではあるが、謙也が以前言っていたように、皆のレベル帯が上がるにつれ本質的な強さは技能(スキル)に依存する場面が増えると考えられる。


 クラスアップがひと段落したら、今度はレベル上げだけでなく、技能(スキル)の方も鍛えていく必要がありそうだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  テントの上には《天才が休憩中》という吹き出しが浮かんでいる。  しばらく経ち、中から天才がゴソゴソと這い出してきた。 Oさんが消えた。
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