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トーナメント一日目 混合戦にむけて#8

 

 時刻は午後12時25分。

 混合戦の開始時刻まで一時間を残した状態で、団体戦の一日目が終了した。


 膨大な数のプレイヤーが参加したトーナメントであるが、ここまですんなり進んでいるのが不思議である。

 続く混合戦・個人戦も、運営の手品によって成功に導かれるのだろうか。


 参加する俺たちからしたら、トラブルが無いのは願ったり叶ったりだが……。


「だ・か・ら! あれは俺に落ち度はねーの! 誰が予想できるんだ、あんな反則級の魔法!」


「だからもっと慎重にって言ったのに! せっかく私と金太郎丸で一人倒せたのに、ね! ダイキさんもそう思うでしょ!?」


 先ほどからあーじゃない、こーじゃないと騒いでいるのは、ギルド《Seed》創立メンバーであるケンヤとライラさん。

 正直なところ、紋章ギルドvs姫の王ギルドの試合が凄すぎて目が離せず、申し訳ないが彼らの試合は殆ど観られていない。それを知ってか知らずか、雨天さんが二人を(なだ)めるように仲裁に入っていた。


 ――負けても、本気で誰かを責める様子がない部分、はたから見れば仲良しギルドのじゃれ合いである。

 ゲームの楽しみ方は、この形が一番正しいと切に思う。

 嫉妬や恨みなんて感情は、試合に持ってきてほしくない。


「だ、ダイキさん。それにダリアちゃんと部長ちゃん……それから、えっと」


「こっちはアルデって言います。少し恥ずかしがり屋ですが、人懐っこい元気な娘ですよ」


 隣に座るクリンさんが、俺からダリア、部長、そしてアルデへと視線を向け、首を傾げた。

 彼女達のギルドホームにお邪魔した時は、アルデはまだ召喚されていなかったから、今回が初めましてという事になる。


 クリンさんの膝上には、寝息を立てながら小さな熊と狼が丸くなっているのが見えた。

 レベル不足か、あるいは意図的かは判断できないが、彼女はまだ三回目の召喚を行っていないようだ。


「アルデちゃんって言うんですね! よろしくね、アルデちゃん!」


 屈託のない笑顔をクリンさんに向けられたアルデは、俺の陰からコソコソと身を乗り出し、『よ、よろしく』と恥ずかしそうに挨拶してみせた。

 俺が通訳してみせると、クリンさんは嬉しそうに顔を赤らめながら、何かの感情を誤魔化すようにテーブルのケーキをパクついたのだった。


 次の混合戦までの時間を利用し、俺は六回戦目で無念の敗退となったSeedの面々に会いに来ていた。

 現在は石の町にある食事処で、ステータス強化(バフ)も掛けたいからと、皆で昼飯を取っている。


 現実(リアル)での食事は素早く済ませてあるから、この自由時間はフル活用できそうだ。


 暗い雰囲気を一切見せず、頑張った自分達への祝杯だと言わんばかりに騒ぐケンヤ達。

 彼らも練習を積んでいたのは知っていたし、当然、悔しさもあるだろうが、それよりも“やりきった”という達成感の方を強く感じる。

 “取っ組み合いを始めるのでは?”という勢いでふざけていた二人は、「なんにせよ、お疲れー!」と、謎の締めくくり方をした後、まるで優勝したような雰囲気のまま、ジョッキ片手に他のSeedメンバーの元へと絡みに行っていた。


 どこもかしこもお祭り騒ぎのような店内でも、彼らは一際目立っている。そのせいかは分からないが、前の席の人がこちらをチラチラ見てくるのがやけに恐い。

 どこかで悪い噂として晒されたりはしたくないが……


 ともあれ、従業員であるNPCも、今日くらいはと楽しそうに仕事をこなしている事から、この世界では毎度の光景として認知・黙認されているのかもしれない。


 ケンヤ達が別の席へと消えた後、ボックス席に残された俺たちと、クリンさん、雨天さん。

 本当はトルダや港さん、できれば紅葉さん達やアリスさんと銀灰さんも呼びたかったのだが、用事があるとの事で、集まる事は叶わなかった。


 ともあれ、トーナメントが終わった後にでもいくらでも会う機会はあるのだから、今回はSeedの面々との親睦を深めよう。


 残り半分となったカレーを(すく)いながら、雨天さんへと視線を向ける。


「それにしても、ブロック決勝まで進出とは凄いですね。これならギルドへの参加申請も期待できるのでは?」


 のちに港さんに聞いた話だが、プレイヤー間では第六戦目を“ブロック決勝”と呼んでおり、注目度が非常に高いのだという。

 一日目が六戦目までしかない、というだけの話なのだが、区切られる最後の試合というのは出場するだけでも“(はく)”がつくようだ。


 雨天さんは(こぼ)れる青髪を片手で耳に掛けながら、海鮮スープを掬ったスプーンを口に運んだ後、少し照れ臭そうに語り出す。


「そうですね。恐らく一日目の団体戦で、もっとも再生されるのは、ブロック決勝である六回戦目の試合です。一番再生される動画がどこかは予想できますが……それでも、それなりの収穫はあると予想できます」


 明日まで団体戦の試合動画は更新されないから、中でも実力者達が多くいるであろうブロック決勝の動画は、たとえ無名のパーティ同士だとしても再生数は多くなると考えられる。この中から優勝チームが決まるのだから。

 もちろん、明日になれば更に質の高い試合が行われるのは想像に難くないが、ブロック決勝まで残れれば、良い具合にギルドの宣伝ができたと考えられる。


 いつものポーズで待機する部長の口に、ダリアがリンゴを運んでやる風景を見た雨天さんとクリンさんが、クスクス笑っているのが見えた。


「すっかりお姉さんですね、ダリアちゃん」


「本当ですよね! 微笑ましいです」


 彼女達は、ダリアの世話を俺がしていた頃から一緒に食事をとっていたから、そのダリアが部長に世話を焼いている姿が新鮮だったのだろう。

 手がかからないアルデは一人でパフェを食べているから、ダリアは部長の世話に専念できている様子。

 俺も彼女達に目を向けながら、ダリアが世話焼きを始めた頃を、しみじみと思い出す。


「午後から始まる混合戦、ダイキさんはどの子と一緒に出場するんですか?」


 微笑みながら、召喚獣の三人をじっくり観察した雨天さんは、探るような口調で云う。

 クリンさんも興味がある様子で、期待するような眼差しを向けてきている。


「俺は新入りのアルデと出ます」


 俺は横にいるアルデをポンポン撫でながら、少しだけ悪戯っぽい声色でそれに答えてみせた。


「ダリアちゃんではなく?」


「団体戦、お留守番だったようですしね……いや、もしかしたら彼女はダイキさんの奥の手だったり? でもダリアちゃんの火力から考えたら……」


 俺の答えに雨天さんは驚いた様子をみせ、クリンさんはあれこれ考察しているのか、なにやらぶつぶつと独り言を語り出した。

 雨天さんは、最初の頃からダリアを知る人物であるし、クリンさんも共にボスを倒した経験がある。故に、うちのパーティの最高火力であるダリアではなく、アルデを出す事に引っかかりを感じている様子がみてとれる。


 確かに留守番させて可哀想という気持ちもあったが、彼女の火力は底が見えていない。相手が魔法職であれば、高確率で活躍するだろう。


「乞うご期待って事で」


 個人戦より可能性がある混合戦、気を抜かずに勝ち進んでいきたい。


 現在《20》となっているイベントの鍵、“注目度”。報酬が絡んでくるとなれば、稼がなければ損だ。

 港さん達やダリアと部長の支援が無いのは心細いが、アルデと共に、やれるだけの事はやってみよう。










【剣闘士の集い】トーナメント情報 37[転載禁止]



1.名無しグラディエーター

http://**********← お約束


>>980が次のスレ立ててね



100.名無しグラディエーター

>>97 胸糞だわ


101.名無しグラディエーター

>>90 こんなん即退場やろ!


102.名無しグラディエーター

>>100.101 俺らに代わって銀竜様が抹殺してくれたから許してやれよ


103.名無しグラディエーター

【悲報】ワイ将、う○こしてたら試合に間に合わず【除名の危機】


104.名無しグラディエーター

>>103 いや、危機というか、余裕で除名でしょ


105.名無しグラディエーター

>>103 出、出ーww カプ持無奴ww


106.名無しグラディエーター

>>105 カプセル持ってる富裕層と一緒にするな! こちとら六畳一間の敷き布団でプレイしとるんや!


107.名無しグラディエーター

>>106 ガチ勢はトイレ行く必要ないカプセルで快適ゲームライフやで


108.名無しグラディエーター

にしてもマイヤたそが負けたかー

え? いや、信者ちゃいますよ?


109.名無しグラディエーター

>>108 奴等は幼女神信教の教祖により物理的に滅んだ


110.名無しグラディエーター

>>108 姫の王に賭けてたのにオジャンですわ……


111.名無しグラディエーター

>>110 無難に銀騎士に賭ければよかったものを


112.名無しグラディエーター

仕事から帰って早速ログイン

団体戦面白い試合教えてクレメンス


113.名無しグラディエーター

>>112

http://**********

(Coat of Arms vs Loveマイヤ)

http://**********

(戦乙女 vs レオ)

http://**********

(大兵器 vs LIKos)

http://**********

(Coat of Arms vs お義父さん)

http://**********

(Coat of Arms vs ひろやん)


114.名無しグラディエーター

>>113 サンクス……って、割と少ないな


115.名無しグラディエーター

>>114 竜の戦士も金色も出てないからな


116.名無しグラディエーター

>>115 なんで?


117.名無しグラディエーター

ヒント:友達がいない


118.名無しグラディエーター

>>117 答えやんけ


119.名無しグラディエーター

しかし紋章ギルドは安定して強いな。特に姫の王倒した一番隊とか、所属メンバーエグすぎるわ


120.名無しグラディエーター

>>119 銀騎士と銀竜を除いても強い


121.名無しグラディエーター

お義父さんの試合もあるんだな


122.名無しグラディエーター

>>121 ここに載ってるのはいい戦いしてる動画だけど、二つ前の試合は胸糞。動画は自分で探してね


123.名無しグラディエーター

俺なんか一回戦敗退だぞ……注目度なんて最初にあった8だけだわ


124.名無しグラディエーター

結局、注目度ってなによ? てか、一回戦目開始直前に数ポイント増えたのは王様に見られたから?


125.名無しグラディエーター

>>124 質問は一つにしようね


注目度とは→知らん。これが上がると後のイベントに影響する。報酬も変わる。王様に気にされてる証


増えてた→これは名声の上部分を取った数字だと推測されてる。名声86とかなら、上部分の8になる。四捨五入で9かもしれんが知らん


126.名無しグラディエーター

>>125 知らんと言いつつ答える優しいニキ定期


127.名無しグラディエーター

大会で出たスキルで強いのなにかある?

強いならなけなしのスキル取得券使いたい


128.名無しグラディエーター

>>127 魚のフリ / マヤカシの剣 / 速度転換


129.名無しグラディエーター

>>128 ありがと!


130.名無しグラディエーター

どれも屑スキルばっかで草


131.名無しグラディエーター

魚のフリとか誰得だよww


132.名無しグラディエーター

マジレスすると、やっぱ竜属性魔法は強かったな


133.名無しグラディエーター

>>132 種族から変えないとやんけ


134.名無しグラディエーター

>>133 課金アイテム使えば種族変更もステータス振り直しもできるよ


135.名無しグラディエーター

課金といえば、ネタ装備ガチャが始まるな


136.名無しグラディエーター

>>135 モンスターなりすましとか楽しそうだった


137.名無しグラディエーター

スレ違いばっかやん


138.名無しグラディエーター

確かにな

混合戦も銀騎士&銀竜の無双かな?


139.名無しグラディエーター

>>138 ペアで思いつく強いプレイヤー他に知らないからな


140.名無しグラディエーター

お義父さんには是非とも幼女神様を連れて出場してほしい。団体負けて個人に召喚獣連れてこれないから、チャンスはここしかない


141.名無しグラディエーター

>>140 過保護になりすぎかもしれんが、幼女神様は試合に出られるコンディションなのか?


142.名無しグラディエーター

>>141 そのあと二試合出てたけど、特に変わった様子はなかったけどな


143.名無しグラディエーター

http://**********

こんな風に、元気ですよ


144.名無しグラディエーター

カピバラに世話を焼く幼女神様ぐうすこ


145.名無しグラディエーター

>>143 なんで一個前のテーブルで盗撮してるんや……


146.名無しグラディエーター

これは悶絶ですわ

俺もあーんされたい


147.名無しグラディエーター

金色「よかろう。さあ脱げ」


148.名無しグラディエーター

>>147 絶 許


149.名無しグラディエーター

屋台で大量におつまみ買ったから午後も張り切って応援できるぜ


150.名無しグラディエーター

混合戦、誰が活躍するのやら

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― 新着の感想 ―
やっぱりまともな人達の方が多いんだよなあ〜 姫の王の所、全部じゃないだろうけど厄介ドルオタの感じで単純にヤベー奴状態なんだろうねえ……() 注目度、主人公の初期値が違和感あるけど、名声クエを拒否し続…
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