第八話 《アマテラスオオミカミ》からの挑戦状
鷹矢はパソコンクラブに帰ってきた。そして自分のノートパソコンを開くなり悲鳴をあげた。
「どうした?」
崇が近付くとぎょっとした。パソコンゲーム画面には1通のメールが入っていて《アマテラスオオミカミ》からだった。横を見ると咲枝はニヤニヤ笑っていた。
「何かチェス申し込まれてるみたいだな。」
「うん。やっぱり復活したってことかな?どう思う?」
鷹矢は崇に尋ねる。崇は深刻な表情をしていた。
「どうかした?」
「いや、何で今さら現れたか予想もつかん。鷹矢は《アマテラスオオミカミ》と接点あったか?」
「あの《ノア》の前に1つメールが入ってた。」
ふーんと言いながら咲枝を見る。そんなことしてたか……道理で《ツクヨミ》のことを知ってたわけだ。
「偽りはないと思う。やってみるだけの価値はあるだろうな。それよりも鷹矢は《アマテラスオオミカミ》と対戦する為にパソコンゲームの世界に入ったんだろうが。」
「冷静だね。」
「いつでも冷静だよ。」
崇は笑った。そして自分のパソコンゲームを覗いてぎょっとする。《アマテラスオオミカミ》からのメールが入っていて内容がコレだ。
『チェスは容赦しないからね?君ならまだしも彼なら30秒でやっつけちゃうよ?』
「……鷹矢、俺も手伝っていいか?」
「え?いいけど。俺も自信ない。」
崇は椅子を鷹矢の隣まで持ってきてパソコン画面を覗く。しばらくして咲枝は俺達の後ろにやって来た。
「私も見ていいかな?」
「あ、うん。チェスだよ。」
「お前……自分の事はいいのか?」
咲枝は微笑んだ。
「こっちの方が興味あるもん。」
五分後、《ツクヨミ》は見事破れた。
「やっぱ強いなー……。」
鷹矢は机に伏せていた。後ろで咲枝は笑っていた。
「凄いね。《アマテラスオオミカミ》。」
「うん。」
「……でも……私は彼女のことが嫌いだな。強すぎて誰にも必要とされなくて妬まれるって悲しいもん。」
崇は咲枝が《アマテラスオオミカミ》と知っているからか本心を聞いたような気がして黙りこんでいた。
「……《アマテラスオオミカミ》と会ったことあるの?」
「え?」
「だって彼女って言ったし……。」
「《アマテラスオオミカミ》って女の神様だからてっきり女の人かと……。」
「え!?そうなの?知らなかったな。」
鷹矢は笑っていた。崇も頷いていた。
「俺も知らなかった。」
「でもさ。《アマテラスオオミカミ》を探していたから、崇と出会うことができたから。《アマテラスオオミカミ》はほんとに神様だよ。俺をパソコンゲームの世界に導いてくれた神様。」
咲枝は鷹矢の後ろでハッとして微笑んだ。
「パソコンゲームの世界は様々な人との繋がりがあるんだよ。」
「?そうだね。」
鷹矢は笑っていた。崇がふーとため息をついた。
「お前さ……全然分かってないだろ。」
「そうだね。くすっ。」
困惑する鷹矢を他所に崇と咲枝は笑っていた。それはパソコンクラブが終わるまで続いていた。