第二話 事件の予兆
正午。放課後を告げるチャイムが鳴る。それを聞いて鷹矢と崇はすぐにパソコンクラブへ駆け出す。
「ん?二人ともお疲れ~。」
パソコンクラブには聖夜がいてサンドイッチを食べていた。
「……入学式の準備……。」
「あー……仮病使ってサボった。あ、サンドイッチひとつしかないけど食べる?」
「要らねぇよ!俺と崇は頑張って準備したんだ!聖夜、お前が仮病使ったとは許せーん!」
「うるさい!」
ドアの方から声がしたのでその方を振り向く。そこには松三浦咲枝がいた。
「廊下まで聞こえたわ!もうちょっと静かにしなさいよ!」
「松三浦さん。サンドイッチ食べる?」
咲枝は聖夜を凝視した。
「……なに?」
「何でもない。サンドイッチは要らないわ。さっきおにぎり食べたし。」
「ふーん。」
聖夜はそう言いながらサンドイッチを一気に食べた。
*
鷹矢は家に帰ってからテレビをつける。両親は共働きで今日も出張しに外国へ渡っていた。
「あら?お帰りー。」
「……嶋さん……。」
キッチンには家政婦の嶋さんがいた。
「今日はハンバーグですよ。トマト煮込みです。」
「ありがとうございます。トマト煮込み……大好きなのでとても嬉しいです!」
そう言いながら席につく。嶋さんは皿を持ってきてご飯からハンバーグを並べた。
「嬉しいわ。……今日もパソコンやるの?」
「んー……宿題を終えたらやるつもりです。」
「そう……。今日ニュースでパソコンゲーム絡みの事件が起こっていたから気を付けてね。」
「……事件?」
嶋さんは頷いて向かいの席に座る。
「そうなの。110人の個人情報が流出してしまったり……。」
ふーん……と呟きながらご飯をかきこんだ。
鷹矢はニュースを見ながら崇に電話をしていた。
『嶋さんのご飯美味しいよな~!』
「崇……。」
『はいはい。そのニュースは昼頃にやっていたんだと。110人ってもう盗めるレベルじゃないからハッカーだと思う。』
ハッカー……。鷹矢はそう呟く。電話の向こうからそう、と呟くのが聞こえた。
『ちなみに俺らが今やってるゲームだから警戒した方がいい。』
『アナザーワールド』
それが俺の今やっているゲームだった。三人のパーティで組み、共同戦するゲームだ。クエストによって魔法しか使えなかったり、剣しか通じないモンスターなど出現するので奥が深かった。
「どうやって……。」
『パソコンゲームは会社員や政府の人間も入り浸っているから攻撃ルートとしては格好の餌食だと思う。』
「それは崇の見解?」
『まぁな。』
実は俺はあるプレイヤーに出会わなかったらゲーマーではなかったかもしれない。《アマテラスオオミカミ》。それを名乗る者はパソコンゲームの中でもゲームを知り尽くしたように最強だった。戦い方もそれぞれで面白く、一瞬でパソコンゲームの世界に惹かれた。神の名を名乗る者は俺が現れる頃にパソコンゲームから消えてしまった。