第一話 《drop of sun》にかける想い
なにか感想、意見などくださると嬉しいです。
部屋中にパソコンのキーボードを打つ音が鳴り響く。真夜中の12時。眠気などお構い無しに必死に打ち続ける。部屋のテレビからはニュースが流れていた。
『パソコンゲームの及ぼす影響ですか……?』
『はい。悪質なことに使う。パソコンゲームなら犯罪は成り立たない。そう思って犯すんですよ。例えばですね……。』
パソコンゲーム《エンジェリックヴァイパー》。ここで事件は起きた。とあるプレイヤーが日本政府のサーバーに攻撃をしかけ、アメリカまで攻撃をし、人工衛星の軌道を変更し約十の人工衛星が破壊したのだ。そして人工衛星の燃えた欠片が墜落したのだ。それによって死者は出なかったが、日本は戦争勃発の危機にさらされた。
『原因は?』
『《アマテラスオオミカミ》というプレイヤーへの妬みとみられますね。事件を起こしたのは低ランクのプレイヤーですが……。』
そう。原因は一人の高ランクプレイヤーだった。
それが《アマテラスオオミカミ》。数日後に逮捕された犯人は《アマテラスオオミカミ》との戦いだ、俺は決して悪くないと犯行を否認していた。
やがてキーボードを打つ手が止まる。ディスプレイに《作業終了》と表示される。少女はため息をついてパソコンを閉じた。
*
―――三年後。天地鷹矢は高校二年生になった。新学期が始まるこの日、鷹矢は早く親友に会いたくて早く学校に来てしまった。4月で桜は少し散っていたのだが晴れ晴れしい気分だ。
「よう!久しぶりだなぁ、鷹矢!」
後ろからいきなり声をかけられた。そこには件の親友の綾瀬崇がいた。崇は鷹矢の隣に並んで歩き出した。
「久しぶり。そういえば、春休み中に新パソコンゲームの予告があったね。」
「あー……あれか?《drop of sun》。」
崇はそう言った。
《drop of sun》。それは夏頃から始まる新しいパソコンゲームだ。色んな種族があるらしく、アバターも組み立てるのは楽しそうでしかも職業も多い。パーティは上限が8人らしく今までのパソコンゲームを根からひっくり返すシステムもあるそうなのだ。
彼は物凄いゲーマーで鷹矢自身も影響されつつある。
「お前……やるの?」
「もちろん。あ……。」
クラス表を見つけ、二年のクラス表を見る。『月組』に俺と崇の名前があった。去年は別のクラスだったので残念に思っていたのだ。
「今年は一緒だ。良かった。」
「あぁ。そういえば、パソコンクラブ……今年も三人だけだと。」
「マジ?」
俺と崇、もう一人のメンバーの萩原聖夜の入るパソコンクラブは人気がないのでクラブ解散の危機があった。最低でも3人必要なので誰かが抜けてしまえば解散だ。一応顧問はついているがほとんどパソコンゲームをしている。もちろん自前のノートパソコンを使用しているので怒られはしない。すると後ろから声をかけられた。
「よう、おはよう。二人とも久しぶりだ。」
「聖夜!」
そこには聖夜がいた。
「《drop of sun》。」
聖夜はニヤリと笑いながらそう言った。彼も崇と肩を並べるぐらいのゲーマーだ。彼もチェックしていたらしい。
「お、俺は《星組》か。残念。」
「でもパソコンクラブあるからいいじゃん。」
などと話していると後ろから声をかけられる。今度ははじめて聞く、凛とした声だった。
「……どいて。クラス表が見えないじゃない。」
後ろに女子が現れた。眼鏡をかけていて髪をおろした女子だった。肩ぐらいまでの髪が揺れた。
「……あ、ごめん。」
そう言って3人はクラス表の前から離れる。
「……同級生?」
崇が尋ねると女子はこちらを見つめてきた。
「二年の松三浦咲枝というけど……。」
「あ、同じクラスだね。」
鷹矢は笑ってそう言った。さっき流し読みでみたクラスメイトの名前の中にあったのを覚えていたのだ。咲枝はきょとんとしばらく鷹矢の顔を見つめてこう言った。
「そうだね。3人はパソコンゲーマーなんだね。」
「そう!なんなら君も……。」
「お断りするわ。」
彼女はにっこり微笑んでそう言った。
*
萩原聖夜は二人と別れた後、自分のクラスには行かずに屋上に行った。そして誰もいないのを確認し、ノートパソコンを開いて電源を入れる。ディスプレイ上に《drop of sun》の名前が表示される。
(。三年間かけて作った。君が帰ってくるのを待つために。《drop of sun》は悪者のいない……パソコンゲームにするよ。もう二度とあの事件が起こらないように。だから……帰ってきてくれ。――《アマテラスオオミカミ》……。)
彼は心でそう呟いた。
前書きにも書きましたがなにか感想、意見などを下さい!