人類最後?
駄作の天才
守れぬ人
「第二二中隊ほぼ壊滅。我々二二中隊も他小隊も壊滅。二三区は…もう…」
二三中隊の最後の無線が入り二三区の全小隊、中隊をたった三時間で失った
地球が静まる日、終わる日は近いことがよくわかった。
「部隊司令官。残存部隊を埼玉まで撤退させました」
どうして生きているか分からなくなった。
「我々だけでも撤退しましょう。」
部隊は第二防衛線まで引き第一防衛線で三時間持ちこたえた。
横須賀先遣隊護衛隊群や護衛隊が次々と全滅しF‐一五スクランブル隊も尽く撃ち落された。
敵は光の速さで移動し対空砲火やミサイルさえも回避され反撃を繰り返される。
「隊長!貴方が報告しなくて誰が報告するんですっ!米軍も支援できない状況ではこれだけの損害がでても責めやしませんよ!未確認生命体と戦うなんて夢にも思いませんしね。第一防衛線から生存者は自分と隊長だけです。お願いです。」
アメリカも手も足も出ない状況だと前線基地に着いた時にも言っていた。だが、全部隊未帰還は自分の判断力の薄さにしか思えなかった。
部下に一旦引こうとだけ伝えた。
*
「中村一尉。まだ前進されるおつもりですか?我々も見た通り部隊は全滅、本部からは撤退命令が出されています。車両もスクラップにされてこれ以上の行動は危険です。」
米倉曹長が諦めの言葉をかけ士気を下げる。いや、それ以前に宇宙人と戦う事を無謀に思っていたのかもしれない。
内藤指揮隊長の判断が早ければと悔やむが口には出さないのが鉄則だ。あえて指揮を下げるのは自殺行為と言ってもおかしくない。
(本部より各隊へ。東京都に残存している全隊は埼玉まで撤退。集結し総力戦とす。以上)
無線が入り撤退と声が上がる。
「お前ら今撤退したら家族に会えないぞ?それでもいいなら勝手にしろ。まぁ、このルートで行けば埼玉までは確実だし、もし、敵に遭遇しても隠れられる。それにもし、生き残ってる隊や民間人が居れば一緒に脱出できる。」
「本部に任せりゃいいでしょ」
「まぁ、それまでに本部が存在すればだがな」
と、部下に言うとしばらく黙った。
*
国民の警備を任される警察は国民に不安を少なくする一手でもある。
しかし群馬まで撤退した国民は約一三〇〇万人に上るまだ、観光客や色んな地区からも約四割しか撤退が完了していなかった。
(こちら宇都宮隊。国民による暴動が発生、近くに居る警備隊に応援を要請する)
国民が暴動を起こすのも仕方ない。家も財産も無くなり職も奪われたのだから。
警察もイライラしていて宇都宮警備大隊も士気が下がっている。
「こちら上三川町警備隊。そちらに一個中隊を送る。それ以上の支援は不可とする。オーバー」
(了解。そちらの支援に感謝する。アウト)
上三川町の避難者約二八〇万人で少ないが避難活動に慣れない警察には応えた。
「真川隊長。埼玉でいよいよ始まりました」
部下の重い声に、「東京は守れずじまいか」とだけ言った。
守るべきもの
*
二〇一五年七月一五日九:三〇
「ヤバいヤバいヤバい!」
そう言いながら駐屯地に急ぐ。
朝から目覚ましをかけ忘れ、それだけならまだいい。洗濯機のエラーから電気のブレーカーは落ちるしでとことんついてない。
そんなことを言ってる間に着いた。
「遅れました!今日からお世話になる中村雄一一等陸尉であります!」
初めの挨拶を交わすとぽかんとなっている駐屯地のお偉いさんが罵声を浴びせる。
「貴様今何時だと思ってる!初日から遅刻とはいい度胸だな!」
「ただいま〇九四七であります!」
「そんな事を聞いてはおらん!」
「遅刻しました事に関しては大変失礼しました」
「言い合うだけ時間の無駄じゃ!早く着替えろ!」
「了解」とだけ言い全て聞き流した。
駐屯地には上官より下士官の方が多い。
駐屯地であるため仕方ない。
「着替え終えたか。」
呆れたように言うのも無理はない。
頷くと、配置場所を教えると言う。
配置は第一普通科連隊第三大隊第一六中隊隊長に任命された。
あまり隊長経験のない自分にとって少し隊長という言葉に違和感があった。
そんな事を考え山口二佐に見張られ腕立て四〇〇回を命じられやっと三〇〇回を越えた。
*
産経新聞より
昨日日本時間午後一一時NASAから緊急記者会見が行われた。
NASAから発表された情報によると木星付近で地球の約一〇分の一の大きさの球体が確認された。
これに対し日本政府は地球外生物の可能性はあり得ないとし、あくまで災害派遣で国民を避難させ自衛隊を動かす方針を明らかにした。
尚、避難勧告が出されたのは太平洋海岸地域半径一〇キロ圏内であると示している。
*
「ではミーティングを始める。今日、全国ニュースと新聞の一面を飾った„謎の物体“だが、太平洋沿い一〇㎞圏内の避難勧告が出されている。国民の避難には多少混乱は見られるとは思うが東日本大震災を経験した君たちなら冷静に対応できるだろう。では、忙しい一日となるがよろしく!」
と署長が挨拶をし、一日が始まる。そして地獄の一週間が始まる。
「宇宙人なんか居ると思うか?」
と、友人が聞き「俺たち自身が宇宙人じゃねーか」と小学生の様な返事をした。
警察署を出ると何時もはうるさい国道が嘘の様に静かだった。
ある音と言えばヘリの音と自衛隊の車両の音、警察の車両の音だけだった。
配置場所が東京駅周辺の警備と国民の避難誘導の隊長を任された。
「なんで、よりにもよって東京駅なんだよ」
と舌打ちをした。
「落ち着いて避難してください!押さずに避難してください!焦らずに!お子様が居られる方はお子様と手をつなぎ逸れない様にしてください!」
警察の声も聞こえないかの様に国民の渓谷ができた。
*
腕立て四〇〇回をようやく終えたところに集合の放送が流れた。格分隊長、小隊長が集められた。
自分の紹介だと思った。
しかし、あまり当たりとも言えないどころかメインが全く違った。
「まぁ、集めた理由を説明する前に、新入りを紹介する。中村。」
「はっ!今日からお世話になります、中村一尉であります!」
はじめに交わした挨拶と同じように自己紹介をすると、全員暗い顔で会釈をした。
「まぁ、そんな訳だ。それよりもだ、今日NASAから深刻な情報が流れたのを皆知らないと思うが日本政府も災害派遣ではなく、戦闘に意向を示すらしい。地球外生物は存在すると、とうとう認めたらしい。空自は既に出撃準備が出来ており、海自は一〇分前にASEAN諸国との海の連携や太平洋の警備を急いでいる。」
そう聞くと泣く者も居れば動揺、恐怖、別れをも想像したのかもしれない。
「我々の訓練は災害派遣のためでも、国を守る為にやった訳じゃねぇ。家族を守るためでもない。我々の訓練は生き残る為にあった。もし、行きたくないなら行かなきゃいい。勝手に死ねばいい。もし、犬死がいいならな。」
なんて酷いことを言ったのか。だが、犬死よりはましだ。
「中隊長!」
「戦闘装備に着替えろ。目標は太平洋海岸線だ。」
そう言い、自分も支度に出た。
*
NHKニュース速報
一〇分前NASAが発表した謎の物体は地球外生物の物であると発表した。警察機動隊の出動と一般警察の指示に従って行動してください。
また、一般道には自衛隊の車両が多数通るとの発表をした。
避難勧告が出された地域。
北海道海岸線全域、関東全域、三重県、和歌山県、関西都市圏全域、瀬戸内海に面する地域全域、沖縄国民、九州の海に面する五〇㎞圏内の地域に避難勧告です。
*
(こちら本部、関東全域避難指示。海上自衛隊より輸送艦が到着、国民の避難指示は横須賀と電車に分けて行うように、尚、避難は一五〇〇までに完了とセヨ。アウト)
動揺を隠しきれんように焦る。
「船遅すぎ。全く!」
文句を言いつつ避難の声を出す。
すると、となりに居た友人が「仕方ないよ。災害派遣だと日本政府は腰が重いからな」と言って笑った。
日本政府はあまりこういうことに器用ではない。と確信した。
相変わらず避難誘導を続けていると電話をしていた人たちが「もしもし」とさわぐ。
「SF映画に出てくる通信電波の妨害か?」
一人の男性がそう言う。
その瞬間違和感のある聞いた事もない音が鳴る。
次の瞬間爆発音が鳴り爆風が襲う。
何人かは生きていたものの、友人と国民の多数が負傷、火傷を負った。
通路は血まみれ、廊下は渓谷になった。
「おい!中沢!生きろ!家族どっするつもりや!」
ちまみれになった友人を胸に抱き、「ありがとう」と言い最後を終えた。
*
着替え終えた隊員は車両に待機した。
連隊長の乗る指揮通信車両が先頭に一個中隊約二〇〇名が駐屯地内に装甲車や軽装甲機動車両が並ぶ。
出動には第一師団全域の戦力が費やされた。
(連隊長より各隊へ。東京駅周辺域が攻撃された模様。部隊集結を急げ。)
「こちら一六中隊了解」
色々な無線が入りついに民間人が攻撃され戦争が始まった。
(こちら指揮車両。これより東京防衛作戦を開始する)
無謀な抵抗がいよいよ始まった
犠牲と謎
*
(指揮大隊より各隊へ。渋谷区はほぼ壊滅。以上)
淡々と話す本部に少しイライラした。
しかし、指揮官が冷静でいる事には少し安心はした。
「人間は…地球外生物に勝てるのでしょうか…」
弱めに言う部下に「大丈夫だ」とだけ言った
(中隊長より各隊へこれより三鷹一帯に散開。二三〇〇に国立に集結。以上)
「こちら、第六二小隊。了解」
陣形は前方からレンジャー隊、軽装甲車、装甲車、警戒車両と続く。
(指揮隊より各隊へ。武蔵村山隊全滅)
「待て、次は東村山、東大和を狙うかもしれん。」
「根拠は?」
「渋谷は人が集まり過ぎた。しかし、東京を孤立させ、応援を来れなくさせ、これ以上の国民避難を遅らせるとすれば話は成り立つ。」
「まぁ、なんとなく分かりました。」
と言い無線を出し本部へ仮説を報告する。
すると隣から爆音がした。
(こちら先遣偵察隊!敵の…ギャァァァァァァァァ…)
爆発音と叫び声で通信が途切れた
防衛線を展開し一時間、出発して二〇分、散開して一〇分で飛んだ損害だった。
「ん?」
「どうした?何か見えるか?」
驚いたように見る先に軽装甲機動車が無傷で放置してある。
小銃を準備し、外に出ようと試みる。
「いいか。もし、俺たちがやられたらその時は後進して他の中隊と合流しろ。いいな!」
そう言うと頷く部下を見て少し安心感が出たのか出てないのか…
「周囲人影確認出来ず!」
「安全確保良し!」
「12.7㎜機関銃装填良し!」
「小銃確認!…良し!」
「いいか。外に出たらまず安全確保。いいな!」
「了解!」
「突撃3秒前2・1」
いっきに外に飛び出し先頭安全確認、次で二方向に別れ安全確保、といったペースで制圧した。
「軽装甲機動車を確認!」
「誰も確認できず!」
「一旦引くぞ!」
その瞬間爆音が鳴り響いた。装甲車からだ。
「誰か状況を報告しろ!」
無線で呼びかけても誰も応じないのは少し違和感があった。全く繋がらなかった。
「本部。本部。応答願います。」
(隊長!御無事ですか!)
「俺は大丈夫だ!何が起きた!」
(分かりません!)
やっと無線がつながった。しかし、一行とし状況は改善しなかった。
「一旦国立まで行く装甲車まで行こう」
(了解!)
「こちら六二小隊。本部の応答願う。」
(こちら本部。そちらには既に撤退命令が出ている)