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藤っぽい何かと花冠

注)これは「もしも」の小話です。

この先の展開次第では、こうなるかも?ならないかも?みたいな。


もしも、ラヴェラーラとアルビレオがよりを戻したらどんな感じ?


考えてみたらちょっと書きたくなったので。

全体的にほのぼの風味で、アルビレオ視点。

Bを応援されている皆様には、あまり面白くないかもしれません。

 アルビレオのもう一つの姿は、獅子だ。

 それもただの獅子じゃない。

 蝙蝠の翼が生えていて、尾は毒蛇。

 それから頭に角が生えている。

 マンティコア、メメコレオウスとか呼ばれる魔獣の亜種を先祖に持つからだ。

 だけど亜種だから、牙は三列に生えていないし、尻尾は毒針じゃない。

 そんな自分を、何と呼ぶべきか。


 アルビレオは思った。


「めんどくさいから、【変わったライオン】でいいや」


 それで良いのか、アルビレオ。




 斯くして本人曰くの所「変わったライオン」に当る青年は、のんびりと花を摘む。

 今日の収穫は、ちょっと変わった藤?っぽい何かだ。

 形状、色は藤に似ている。

 でも何かが違う気がした。

 だからアルビレオにとって、これは「ちょっと変わった藤っぽい何か」だ。

 でも花の名前なんて、アルビレオにとっては重要じゃない。

 彼にとってそれよりもっと重要なのは、その花が贈る相手の気に召すか否かだ。

「似合うと思うんだよなー」

 小さな花が連なって房を作る、愛らしい姿。

 慎みと深みを感じさせる、奥ゆかしい紫。

「うん、絶対にラーラに映える」

 記憶の中の面影と目の前の花を重ね、アルビレオは納得の頷きを見せた。


 ようやく納得のいくモノが狩れた。

 百花の咲きみだれる、香しき美し庭園。

 魔境の異常な自然が作り出したにしては、格別に美しい。

 若い恋人達の逢い引きによく使われる。

 だけどアルビレオは、そんな他人の都合に頓着して花を摘めないのは嫌だった。

 

 結果、チラチラと此方を邪魔そうに見るアベック(笑)の群を黙殺して花を摘んでいる。


 篭はもう花で一杯で、そろそろ満足しただろう? もう良いだろう?という無言の圧力。

 それも気にすることなく、にぱっとアルビレオが笑う。

「やっと見つけた」

 見つけたのは、一輪の百合。

 でもただの百合じゃない。

 この花畑で、この季節に、ほんの数輪しか咲かない特殊な百合だ。



 もう十何年も前。

 初めてあいつ(・・・)に持っていった時、格別の笑顔を見せてくれた百合。

 気持ちが嬉しかったって、あいつは言った。

 そうそう滅多に見つからないし、入手は困難。

 それを知っていたから。

 だから、わざわざ探してきた俺の気持ちが嬉しいって。

 そう言ってくれた。

 それ以外にも、此処には思い出の花がチラホラ。

 どれもこれも、一度は贈った花。

 その中でも思い出深いモノを選んで、摘み取っていく。

 篭の中には、保存用の魔法を底に詰めて。

 絶対に花が枯れない様に、特別な花篭を作っていく。

 その一番上の、目立つところに。

 あいつが喜んでくれた百合を、そっと置くんだ。


 それから初めて見た、藤っぽい何か。

 贈ったことはないけど、あいつが絶対に好きそうだと思った。

 それに、あいつの黒い髪に飾ったらきっと綺麗だ。


 あいつの好きな花は、淡い色合いの花や可憐で素朴な花。

 豪奢だったり、華美すぎる花はちょっと苦手。

 贈られて嬉しいのは、清楚さが一番大事。

 地味すぎず、派手すぎず。

 あいつの好みに外れていないか、考えて嬉しく笑う。


 ようやく、満足がいった。

 これで良し。

 充足を感じて、立ち上がる。

 勢いよく膝を伸ばして、すっくと。

 ぱらぱらぱらって、花が落ちる。

 どこから?

 ………俺の、髪から?


 伸ばしっぱなしの、髪。

 いつの間にか長くなった、髪。

 地面に体を近づけて、花を摘んでいる間。

 長い髪は地を這い、草花の上を這い回って。

 どうやら気付かない間に、花々の茎を引っかけて髪に沢山付いていたよう。

 何時の間にやら、髪は花々を滝に流したかのような有様で。

 天然自然の髪飾り。

 ……髪に付いた花を全部取っ払うのに、それから更に時間がかかった。

 

 だけど、ふと思いついて髪にくっついていた花を回収する。

 全部、丁度良い長さで茎が残っている。

「……………」

 アルビレオは、集めた花を無言で編み始めた。

 変わったライオンさんは、大雑把な性格にそぐわず器用で几帳面だった。

 そして完成する。

「おお、我ながら良い出来!」

 手の中、完成したのは一つの花冠。

 多種多様な花が使われて、とても豪華だ。

 使われた花色は赤・桃・白・黄・橙。

 それぞれの色が順番に連なり、グラデーションを描きながら一繋ぎの輪になっている。

「あー…良い出来、だけど」

 最初は、あいつに持っていこうと思っていた。

 けど、完成品を見て気が変わる。

 完成した花冠は、太陽みたいな温かな色合いで。

 似合わないことはない、と思う。

 きっと可愛い。

 だけど今日渡したいモノとは、イメージが違った。


 ラヴェラーラには太陽よりも、慎ましく穏やかな月が似合う。

 それは勝手な押しつけのイメージかも知れない。

 太陽だって、きっと似合う。

 でも今日は。


 一番の目玉が、百合の花と藤っぽい花。

 それに暖色系ばりばりの花冠は、統一感がなさすぎる。


「……………」


 ちょっと考えて、アルビレオは完成した花冠を自分で被った。

 そのまま、長い髪の毛を尻尾の様に揺らして。

 ご機嫌に鼻歌を歌いながら。

 彼は、花を摘めた篭を引っかけ、花園を後にした。



 数時間後、ラヴェラーラの元に沢山の花が届けられる。

 贈ったのは、勿論アルビレオで。

 きらきらとお日様みたいに輝く頭上には、花冠。

 見た目は優雅で格好良い男の人なのに、愛らしい花冠。

 その愛らしくも不釣り合いな、格好。 

 不格好でも滑稽でもないけれど。

 なんだかとっても、ちぐはぐな感じがして。

 でも、なんだか。

 なんだかそれが、物凄く可愛い。

 可愛く、感じた。


 ラヴェラーラは思わず顔を綻ばせ、笑顔になる。

「かわいい…!」

 アルビレオが贈った花も、嬉しかった。

 だけどそれよりも嬉しくなれる気持ち。

 花を摘んで贈ってくれた、アルビレオのおこないが嬉しい。

 それを、花よりも気持ちを贈って貰えたから。

 ラヴェラーラの笑顔は、アルビレオのちぐはぐな姿に反応した時よりも尚、深くなる。

 そのことに気付かないアルビレオは、自分の姿に笑っていると思っていたけれど。

 それでも、ラヴェラーラが笑ってくれたことに満足げに頷いている。

 その反応が、またどこかずれているように見えて。

 ラヴェラーラは、心の底からおかしくなった。


 ラヴェラーラは満開の笑顔で、アルビレオの手をきゅっと握る。

「ありがとう、レオ君」

 そう言って笑うラヴェラーラの笑みは、アルビレオの期待通りのモノで。

 アルビレオも満足げに、にまりと笑う。

 そうして本日一番の獲物、藤の様な花をラヴェラーラの髪に挿して贈るのだった。


 藤に良く似た花房は、ラヴェラーラの黒い髪に良く映えて。

 それに殊更、満足に頷いて。

 照れて頬を染めるラヴェラーラが可愛くて。

 今日はとっても良い日だなぁと。

 胸がぬくもる様な幸せに、彼も彼女も楽しそうだった。


 

割とマメな男、アルビレオ。

取り敢えず日常的で唐突な贈り物は絶やしません。

奴はラーラお姉ちゃんの好きな色・花・お菓子を把握しています。

ラーラお姉ちゃんから聞き出したのもあれば、経験則で覚えたものもアリ。


二人が再度くっついたら、多分こんな感じでほのぼの暮らすと思います。



アルビレオの髪

 アルビレオは、性格的には短髪が好み。

 一回、髪の毛をざっくり短くしたことがある。

 でもそうしたら、魔獣姿になった時、鬣が悲惨なことに…

 以来、髪の毛は伸ばしています。

 そうなると今度は無造作に伸ばしっぱなし状態のロン毛です。

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