表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

偽りの学校1

 その転校生が来たのは、2週間前のことだ。いまから就職先を決めなきゃいけない時に転校してくるなんて酔狂がいるとは、と思っていたが。しかし酔狂なんてものではなかった。こんなにびっくりしたのは

久しぶりだった。


 「今日は、ここに転校生が来る。いきなりだと思うが、みんな仲良くしてやって欲しい。」


 いきなりの転校生の話だった。たしかにこんな時期に来るのは珍しいが、そこまで気にすることはないと思っていた。そこまでは。


 「じゃあ入ってきてくれ。」


 教室の扉が開いた。みんなが息を呑む。俺も同じだった。


 「すっごい美人・・・・。」


 「スゲェ・・・・・」


 「ありえねえよ・・・」


 入ってきた奴は神がかった美貌を持っていた。整った口元、スッとした鼻、大きい瞳、神にしか作れないような人間らしくない顔、そしてきらめく金髪。これは息を呑んでもおかしくないような顔だ。しかし多分ほかのやつらと俺の息を呑んだ理由は多分違う。あの時よりかさらにきれくなっているが、こんなやつは一人としていない。


 「では自己紹介してもらおう。」


 先生も少し息を呑んでいる。無理もない。だがみんな思い違いをしている。そいつは・・・・・・・


 「まずひとつお前らに一回いっておかなくちゃいけないことがある。」


 声もすんだ鈴のような声だ。だが騙されてはいけない。


 「こんな顔だが、俺は男だ。」


一瞬教室の時が止まった。比喩なんかではない、本当に時が止まったようにみんなが凍りついた。


 「「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」」


 こんなにみんなの意見がひとつになったのは初めてかもしれない。先生まではもっている。というか先生、性別知らなかったのかよ。


 みんながその声を出し終わるまで転校生は待つ。そして一瞬みんなが落ち着いた瞬間に喋り始めた。


 「帝国学園から転校・・いや編入してきたエイト。エイトというやつだ。」


 「「帝国学園んんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!」」


 またハモった。今回は俺も一緒になって声を出したから今度こそクラスみんなの意見が揃ったようだ。


 「ちなみに先生が仲良くしてくれなどの言葉を言ったと思うが、気にするな。どうせ今日この学校に来たら、これから2週間サボるつもりだ。」


 「いやいや、ちゃんと学校来いよ。」


 俺が心の中でつっこ・・・・・あれ、なぜかみんなの視線が俺に集まる。どういうことだ?


 「それは無理だなユーリ。俺がこれから2週間学校に来続けることは、これから先生たちを全員ハゲにして校内一周させるより難しい。」


 ま、まさか俺のつっこみが声に出ていたのか・・・・なんて失態だ。


 みんなが笑い始めている。


 「お、おい!少し戯れがすぎるぞ!」


 やっと先生としての自覚が戻ったのか転校生・・・いやエイトを叱り始める。


 「まあまあ。どうせ明日にはいなくなるんです。これぐらい目を瞑ってください。」


 「だから、その態度がいけないと言ってるんだ。」


 「先生、どこに座ればいいんですか?」


 エイトが急にべつの事を聴きはじめた。それによっていきなりのことで先生が叱ろうとする声が萎む


 「あ、ああ・・・え、えっと・・・おいユーリお前知り合いらしいな。」


 「え・・・はいたしかにそうですが。」


 先生が安心したようにエイトに言う。

 

 「あいつの後ろに座ればいい。」


  「分かりました。では先生今日限りですがよろしくお願い・・・・・・。あ、テストの時にはここに来るのでテストの時と今日限りでよろしくお願いします。」


 なんとも驚かしてくれた転校生だった。


 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 一時間目の休み時間に人がエイトの席に殺到した。


 「帝国学園から来たってほんと?」


 「どこの出身?」


 「ホントに男か?」


 「綺麗な顔してるよね。」


 「魔力どれくらい?」


 「ユーリとはどういう関係?」


 「待て待て、俺は超人じゃないんだ。一度に答えられるわけがない。とりあえず今出た質問に順々に答えていくから、一回待ってくれ。」


 みんなの質問の声が少し収まる。


 「まず、帝国学園から来たのはほんと。そして出身はここ。ホントに男。ユーリとは幼馴染というやつだ。」


 「帝国学園ってあの超有名な帝国学園?」


 「しかも出身ここなの?」


 「ユーリと幼馴染って・・・・お前なんでこんな友達いたのに教えてくれなかったんだよ。」


 そんなの教えられるわけがない。なぜなら・・・・・・


 「ユーリにそんなこと言ったって無理だよ。俺はそいつに行き先を教えてないから。幼馴染と言ったってほんと知り合い程度だ。」


 「それもそうか。、」


 全員ユーリを見たのは一瞬で、またエイトとの話に入っていた。2時間目が始まるチャイムが鳴っても誰も気づかないぐらいに。


 「ほら、いくら転校生が来たからって、授業を疎かにしてはいけないわよ。はい座って、座って。」


 結局先生が前で話すまで誰も気づかないぐらいに全員エイトの話にのめり込んでいた。


 2時間目の休み時間も3時間目の休み時間もみんなエイトの席に行き、エイトの話を聞いていた。しかも時間が経てば経つほど他クラスに情報が回ったのかどんどん人が集まっていく。


 「すっげぇ美人。」


 「でもあれ男だって言うぜ」


 「いや、おかしいだろ。あんな高い声だぜ。」


 3時間目の終わった時など、クラスの前に人だかりができているぐらいだった。そして4時間目の休み時間つまり昼休みがやってきた。


 相変わらずエイトの席には人だかりが出来ている。


 「おい、ユーリ、遊びに来た・・・・・・あれ、あの席どうなってるんだ?なんであんなに人だかりができてんだ?」


 「うん?まさか噂の転校生?」


 「なに?あのめっちゃ美人って噂の?」


 「でも、男らしいよ?」


 こいつらは俺の友達。幼い頃からずっと一緒である子供の頃からの友達である。


 「ん?なんかあいつの特徴と似てるな?」


 「いや、そんなわけないだろ。あいつはあの時にどっかいったし。」


 この二人はケイトとダグルー、先に言ったほうがケイトで後に言ったほうがダグルーだ。


 「いや、ケイトお前が言ったとおり、エイトだ。あのいきなりどっか行って行方不明になったエイトだ。」


 「へえ、あのエイトかぁ・・・・・ってうそ!!!あのエイト!?」


 「エイト、帰ってきたの?」


 この二人の女の子も俺の友達、先に言った方がアリナ、後に言ったほうがアーリア。


 二人はエイトの席に近づいていく。


 「あ!!!ほんとにエイトだ!!!!」


 エイトの席に集まっていた奴が全員アリナを見る。エイトはホンの少し驚いた顔をした後


 「よう、久しぶりアリナ。成長したな。」


 「そっちも・・・きれいになったねぇ。私より全然綺麗じゃん。なんか自信なくす・・・。」


 「男の子なのに女の子の私より綺麗・・・ショック。」


 二人共普通に比べたら綺麗である。アリナは可愛い系アーリアは綺麗系。しかし・・・・いやおかしいのはエイトの方である。あいつは何故男として生まれてきたのか・・・?


 「あはは、お前らは変わってないな。・・・・・・待てよお前らがいるってことはケイトとダグルーもいるのか?」


 「うん、ケイトー、ダグルー、こっち来てー。」


 「いや、いるならいるでいいんだ。迷惑になっちゃ困るしな。」


 エイトは少し語尾を濁す。だが、少し遅かった。


 「こんにちは、結構久しぶりだな。」


 「またお前の顔を見るとは思わなかったよ。しかし相変わらず綺麗な顔だな。」


 ケイトとダグルーがエイトの席の前に現れた。エイトはホンの少し驚いた顔をしたと思ったが、すぐに元に戻り。


 「俺もお前らの顔を見ることになるとは思ってなかったよ。そうだ!久しぶりに会ったんだ。一緒にご飯食べようぜ。」


 「え、本当にいいのか?」


 俺はどうしても聞き返してしまった。


 「当たり前だろ。逆になんでダメなんだ?」


 エイトが満面の笑みを浮かべながら、食事を誘ったのであった。


  


 「ふーんそうか。俺がいなくなってからそんなことがあったのか。」


 エイトと俺たちは屋上に来ていた。俺たちは今まであったことを話し合っていた。


 「そっちこそまさか帝国学園にいってたとは思わなかった。」


 「ほんとどうやって受かったの、エイト?あそこって普通に行っても1次試験でほとんどの人が落とされるんでしょ。」


 アリナがエイトに聞く。


 「あそこの1次試験には、少し理由があるんだよ。ある素質を調べてるのさ。」


 「ある素質ってどんな素質なんだ。」


 エイトが少し困った顔をする。


 「それは・・・・・・まあいいじゃないか。ユーリ。ちょっと言えないんだよ。」


 「帝国学園の秘密ってやつか?たしかにあそこあんなに有名なのにどんな授業してるとか全く教えてくれないからな。」

 

 ダグルーが笑いながら言う。


 「帝国学園でどんな生活してたの?」


 アリナが聞いてきた。そうしたらエイトがいきなり立ち上がった。


 「それは、いずれわかるさ。そろそろ昼休み終わるぜ。」


 見るとあと1分もしないうちに授業が始まる時間になっていた。


 「またな。」


 エイトはさっさと自分だけ教室に戻っていった。


 



 

 

 


 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ