デブの中身
今回の鍵言葉は「ざくろ」「お腹一杯」「黒服」「デブ」どうしようもないです。ええ。
ザクロの実を食べている。
クチの中に粒がたまるが飲み込むことができない。飲み込めないものは要らないのだ。ザクロを置いた。
すると、黒い服のこわもての人が出てきていう。
「なんじゃおどれは。喰いかけたものは最後まで喰えばいいんじゃ」
ザクロの粒を私の口に押し込む。私は飲み込めばいいのにザクロを飲み込むことができない。逃げようとすればこわもて仲間が押さえつける。ザクロをドンドン放りこんでくる。しまいにはザクロを包むラップや、その他色々な食べられるかどうかわからないようなものを放りこんでくるんだ。
お前らそんなんしてたらしまいにははいてやるぞ。ウゲウゲ吐いてやるぜ。そういうフェイントを見せるために、グエグエいってみた。すると、「な、ここではくのは辞めろきたねーから」黒服達が手を一瞬手を離した。
そのすきを見て必死で逃げた。ビルの陰のゴミ捨て場の裏まで逃げた。
私はそこでクチの中の物を全部吐きだそうと思った。するとゴミ捨て場にいたかわいらしい子猫達が「ココではくなきたねーからウゲウゲ」という。
仕方ないからコンビニのトイレに行った。そこでありったけ吐こうと思った。するとトイレに張り紙がしてある。
「吐くな」
そんな事かまっていられませんわ緊急事態ですのよ。なんで出すのが構わないのに吐くのはいかんのですか。無視してはこうとしたら、店員さんにドアを開けられる。
「いました!ここに」店員さんはさっきの黒服を案内してきた様子。
「なんじゃおどれは。まだ喰うとらんかったんか。いさぎよくない奴だ」
知らない知らない。無視してクチの中のものを出すつもりだったが、押さえつけられクチにガムテープを貼られる。「飲み込んでしまえすべて飲み込んでしまえ」「一切合財飲み込んでしまえ飲み込め」黒服だけではなく、コンビニの店員さん、ゴミ捨て場の子猫達、その他色々な人がわたしに飲み込むことを強要するのだ。
飲み込め 飲み込め 飲み込め。
私は強要に負けて飲み込んでしまう。
飲み込んだ私は瞬間、お腹の中がいっぱいになり、身体が膨らみ今よりさらに太ってしまう。
間髪いれずに黒服は色々なものを私のクチに入れていくのだ。
世の中の人たちはみなスリムで闊達に見える。
皆色々な物事をスマートに解決したり割り切ったり、他に委ねたり、あるいは棚上げして少しずつ片づける術を知っているようだ。うまくやり過ごす方法もよくわかっている様子。
軽いって快適ですか。幸せですか。重さがないってどんな感じですか。
一度いってみたいと思うのですが、なかなか難しいもんですね。
そういう風にひがみ丸出しでスリムな人につぶやいた。
すると、実は私より何十倍の重力に耐えているにも関わらず、ふわりと軽々羽ばたいていたのを知ってしまったこともあった。
私は清濁併せのみ貯めこむ器量もないくせに、たくさんの物を毎日飲み込まなけばならぬ日々を過ごしている。今のところ、脂肪にかえてとりあえず貯めることは出来てはいるが、この未消化分をどうにかしないといずれ破裂、いや破滅するだろう。元々のチカラを鍛えていないからこういうことになっているんだろうな。
一旦、色々なものを棚上げしておく場所が欲しい。しかし私はそういう場所を探せずにいる。
朝起きると、今日もそういう日々が続く事を感じてうんざりする。しかしこの世界で生きているうちは、この自分に課せられたGに耐え、あるいは未消化分を消化することに費やすことになるんだろう。
空を見上げると軽々とふわりと雲が浮かぶ。私の足は重力で地面につながっている。
楽しいことがないわけじゃない。しかし自分自身が重い。