汽水域にて
今回の鍵言葉「川遊び」「汽水域」「ライフジャケット」「寒い」??
近所の川でライフジャケットを着て、うちの飼い犬と一緒に川の流れに身を委ねて流されている。
とにかくとても気持ちがよかった。犬もうれしそうな顔をして、わふわふクチを開けている。
空は穏やかに晴れている。魚が時々、足の間を泳いでいるのがわかった。
川岸ではバーベキューなんかしている親子連れや、川釣りを楽しむ人なんかが見えた。
そうだ、この川は鮎やヤマメが棲む清流だものな。
時々スイカや浮き袋、ゴミなんかにも追い越されたりもするけれど、まぁ順調にぼやぼやと流されていた。
そして、汽水域に到着。川幅が大きくなって潮の匂いがしてきた。
私より少し先を流されていた犬が、振りかえってきた。「これでいいのですか?」
そういっているような、すがるような少し不安な瞳。
まぁなぁ。海は広いから怖いよなぁ。塩水だし。
私と犬は川の真ん中の三角州で少し一休みすることにした。
犬を抱いて、今来た流れと、これから出ていくであろう海を見ながら考える。
これでいいのかなぁ。っつーか、いいのよ、なぁ・・・。迷い始めた私。
時間はどんどん過ぎていくようで、潮が少しずつ満ちていき、川の水位も上がっていく。
三角州の面積は少なくなっていった。結論を早く出さなければならないようだ。
というより、もう待ったなしで海に出ていくタイミングなのだろうな。
もうあまり余裕はないみたい。焦るような怖いような。不安な気持ちであらためて、
海の向こうと、今来た川をもう一度眺めた。
それから。さぁいきましょうよ。いけるところまで一緒に。一緒についていってくれるかい、犬。
運命が私たちを分かつまでは、とりあえずってことでさ。犬の頭をもう一度なでた。
流れに身を委ねる以外に道はないのなら、その中で、できる範囲で楽しく流れていきたいじゃないよ。
時々出会う同じような流され人と、ぶつかりあったり挨拶したりしながら、
とりあえず浮いていけるところまでいきましょうや。途中でお互い、沈みゆくことはわかりきっている。
私たちは広く深い海に、これから流されていくんだし、目的地が決まっているわけではないんだから。
不安と期待半分で、空を見上げたら、宵の明星が見え始めていた。
海の水は冷えている。
仕方ねーな。おくれんじゃねーぞ。犬がつぶやいた気がした。
私たちは海の向こうへ、互いを温めあいながら流されていく。




