側近会議
「ブラッド殿下、ご機嫌よう!」
「あ?ああ。ウルドレット皇子殿下…ご機嫌よう」
「確認したいのだが、ミラディナ公爵令嬢はどうしたの?
最近、学院で見ないし、他の生徒に聞いても誰も知らないんだ」
「あっ、ええと…休学して本家領地へ行っているそうだ」
「え?領地?休学?俺、聞いてないんだけど…」
「…私も側近から聞いたんだ」
「君、妃候補の近況も知らないの?無関心すぎない?」
「もう、候補じゃ…いや、そうだな…これからは改めるよ」
「ん~…どうしようかな。経済学で教えて欲しい所があったんだけど…」
「そうか。では、良ければ私が教えよう」
「いや、彼女じゃないとダメなんだ。
ほら、俺まだこっちの言語充分理解してないから、
彼女の正確な翻訳が必要でさ。…俺も本家領地行ってみようかな。
遊学とはいえ、このままじゃ単位取れないし。
ミラディナ公爵令嬢がいないんじゃ、学院に通っていても意味ないし…
じゃ、情報ありがとう」
「待ってくれ!本家領地へ行くのか?」
「ああ、うん。手紙出して彼女が了承してくれたらだけど」
「それ、私も同行していいだろうか?」
「何で?俺、個人的に彼女と会いたいんだけど」
「それは…彼女に恋情的な感情があるという事か?」
「は?何それ。……もし、そうだと言ったら?
まだ候補でしょ?なんか問題ある?
それに、君…彼女のこと嫌ってるよね?」
「嫌ってなど…なぜ皆同じ事を言うのだ⁉︎」
「だって、いつも男爵令嬢といたし、彼女が注意しても追い払ってたじゃん。
この前なんて大勢の前で断罪してたし。
しかも彼女否定してたのに、一方的に男爵令嬢の言葉だけ鵜呑みにしてさ。
あれはいくらなんでも、彼女が可哀想だったよ。
あ、もしかして休学して領地に行ったのって、君の振る舞いのせい?
だったら最悪なんだけど」
「あれは、私が誤解していたのだ…」
「誤解?どこが?
証拠もないのに、決めつけて男爵令嬢と一緒に責め立ててたクセに。
…もう、いいよ。俺、君嫌いだし。一人で行くから、じゃあね」
「…え…あっ…」
なんだ…これは…
そうか…私の今までの振る舞いは、
学院内でこんな風に周知されていたのか。
どうしたら…どうしたらいいのだ。
これから、どう挽回すれば…
* * * * * * *
「という訳でして、皆さん、側近として何か対策案をお願いします」
「それ、お前の仕事だろ?俺は護衛だし…」
「アスラ殿、護衛騎士は護衛だけが役目ではありませんよ?」
「僕だって護衛魔術師だし…」
「ラピレ殿も同じ事言わないで、対策案考えてくださいよ!」
「私は何度も進言いたしました。
神の教えの元、妃候補達に真摯に愛を持って優しく向き合うよう。
…これ以上どうしろと言うのです?」
「進言だけでは不十分なので、対策をとお願いしてるんです。ニーレ殿」
「もしかして、ミラディナ嬢が辞退したから?遅すぎない?
僕、彼女結構好きだったんだよね。
側近候補を了承したのは彼女がいたからなんだ。
芯がしっかりして覚悟決まってて、王妃らしく凛として格好良ったし。
あの王太子を支えるための人選なんだろうけど、
今では彼女の境遇に同情するよ」
「そうですね。彼女の事を思えば、これでよかったのでは?
あの男爵令嬢に対しての嫌がらせの言いがかりは最悪でした。
彼女がそんな下らない事をするはずないものを…」
「ちょっと!ラピレ殿もニーレ殿も、過ぎた事を蒸し返さないでください!
今いる妃候補に逃げられない為の対策を考えて欲しいのです!」
「男爵令嬢と引き離せばいいだろ。
あれは妃候補だけじゃなくて、他の生徒達にも顰蹙ものだ」
「おお、初めてまともな意見が出ました。アスラ殿、ありがとうございます。
ですが、それは私が対策済みです」
「え?僕また一緒にいるの見たけど?」
「はあ⁉︎」
「私も見ました。渡り廊下一緒に歩いていましたね」
「あーあ、ダメじゃん。お前本当に対策したの?」
「…あんのバカ王子っ‼︎」
「国王陛下に嘆願書出して相談したら?これ、僕たちじゃ無理だよ。
殿下も流石に国王陛下に言われれば、少しは反省するんじゃない?」
「そうですね…私ももう疲れました…胃がおかしくなりそうです…」
皆肩を落とし、深いため息を吐いた。
そして、そのタイミングでブラッド殿下が生徒会室に駆け込んできた。
無言で皆が問題の元凶に、一斉に冷めた目を向ける。
「ヴァニ! ミラディナの…エヴァーグリーン公爵家の
本家領地ザクレンの当主へ先触れを!」
「は?」
「謝罪して許しを乞う!そして、私の名誉を挽回する!」
「それより、聞きたい事があるのですが…」
「何だ?」
「ミラディナ公爵令嬢に、男爵令嬢へ嫌がらせをしたと、
憶測だけで皆の前で断罪したそうですが、事実ですか?」
「…あ、あれは…エリアが…」
「事実ですか、と聞いているのです‼︎」
「ああ…事実だ。そして間違いだった。影にも確認した…」
「なぜ先に、事実確認をしなかったのですか。
憶測で断罪するなど愚かにも程があります。酷い侮辱ですよ。
しかも冤罪じゃないですか‼︎
公爵家の彼女が訴えていれば、幾つ罪状が付いていたと…
…幸い公爵令嬢の恩情でことなきを得ていますが…
その件でも謝罪は必要ですし、慰謝料も発生するでしょう。
手紙は出しますが、令嬢の返事次第です。領地へ行くのはお待ちください。
あなた様の名誉挽回など後回しです‼︎ 」
「分かった…悪かった…」
「…それと、男爵令嬢と会うなと言いましたよね⁉︎」
「あ、会ってない‼︎」
「渡り廊下で一緒だったと目撃者多数ですが?」
「あ、あれはエリア嬢が勝手に寄ってきたのだ!
今後は二人きりは避けてくれと伝えた!」
「後手後手すぎです。
以前の貴方様は、そんなに愚かではなかったはず。
…一体どうしたと言うのです⁉︎」
「……エリアが…私はそのままで良いと…
貴族のしがらみなど気にせず、自分のありのままで生きろと言われた
…その言葉が心地よかったのだ。
今まで誰にも言われた事のない、私には甘美な言葉で…
己を見失っていた…」
「要は承認欲求を満たしてくれる女にフラリとしただけでしょ…
気持ちは分からない訳ではありませんが…情けない。
で、どうするのですか?その男爵令嬢の言う通りに生きていくのですか?
でしたら、王太子を…王位継承権を返上するしかありませんね」
「だ、だから、一時の熱に浮かされていただけなのだっ!
それを挽回したい!」
「先ほども言いましたが、お待ちください。
下手に動かれると、また拗れます」
「わ、分かった…」




