年末の再会
「ミハイル叔父様!」
「やあ、ミラディナ」
「ご無事でしたのね。魔獣討伐ご苦労様です。お怪我はありませんでした?」
「ああ、大丈夫だよ。いつもの仕事だ」
「…あら、ブローチいつもしていらっしゃるの?」
「うん。お守りだからね」
「勲章の横になんて…恐れ多いですわ」
「ミラディナから貰ったお気に入りだから、外さないよ」
「まあ~…もう。仕方ありませんわね」
「それより、帝国の繊維産業と貿易始めるって?」
「はい、ウルドレット皇子との縁ですの。私、運が良かったのです」
「何を言っている、ミラディナが頑張って出来た縁だろう?」
「そうですわね。今まで学んだ知識は、無駄ではありませんでしたわ。
こうして、私に可能性を与えてくれました」
「その通りだ。お前は本当に賢い。お陰で公爵家は益々発展するぞ」
「うふふっ、お役に立てて嬉しいですわっ」
「髪留めとイヤリング、してくれてるんだな。凄く似合うよ」
「本当ですか?これお気に入りなんです。素敵な物をありがとうございます」
ああ、昔の彼女の笑顔だ。
ブドウ祭りの時、酔ったとはいえ、あんな泣き方をした彼女が心配だったが、
どうやら、もう吹っ切れているようだ。
「おお、来たかミハイル。魔獣討伐ご苦労だった」
「兄上、ご無沙汰しております」
「ミラディナも世話になったそうだな」
「世話など…ブドウ祭りに招待しただけです」
「凄く楽しかったです!ふふっ」
「ははっ、未だにブドウ祭りのことを聞かされるのだ」
「そうですか。ミラディナが楽しめたのなら、良かったです」
「また参加したいです!」
「勿論いいよ。来年もおいで」
「ですって!いいでしょう?お父様」
「分かった、分かった。ミハイルよろしく頼む」
「ふふっ、来年その期間は予定を空けておかなきゃ。
晩餐の用意ができてますわ、行きましょう、叔父様!」
年末に誰一人欠けることなく親族全員集まれて、喜びを分かち合い、
そして晩餐会の会話の中心は、主に帝国との繊維産業貿易。
私は、皆に褒め讃えられ一生分の栄誉をいただいた気分だった。
* * * * * * *
年末の親族の集まりで、晩餐を頂きながら持参した辺境のワインを振る舞った。
食後の談話室で皆それぞれ自由に過ごしていると、
ワインを禁止されたミラディナがワイングラスを持ってちょこんと横に座る。
「あの、叔父様?」
「ん?」
「酔わない飲み方を教えてくれるのですよね?」
「ああ、覚えていたのか仕方ないな。少しだけだぞ?」
「もう子供ではありませんわ!」
「ふふっ、そうだったな。グラス貸してご覧」
「はいっ」
トクトクと音を鳴らしてグラスに注がれるワインを
キラキラした瞳で見ている彼女が、子供みたいで可愛くて仕方なかった。
少なめに入れたワインを見て眉を顰めたが、構わずグラスを押し付ける。
「少ないですわ…」
「悪酔いすると気分が悪くなるから、初めは少量だよ」
ツマミを食べさせて、水だけのグラスも渡して交互に飲みながら、
フルーツも一緒に食べさせる。
「な、なんだか…鼻から香りが抜けて、喉にツーンと強い刺激がっ…
なんですの、この感じっ」
「はははっ、なれると美味く感じるようになるんだ」
「………………」
「…ミラディナ?大丈夫か?」
どうやら彼女は弱い体質らしく、
こんな少量でもすでに目がトロンとしてきていた。
これは、またすぐ寝るな…
「……叔父様ってぇ、…どぉんな女性が…お好きなの?」
「…え?」
「すぅっごく素敵なのに、ずっと独身でしょう?
だからぁ、女性にこだわりが、あるのかな~と…思ってぇ」
「こら、酔ってるな?」
「起きてますぅ!こだぁわりあるんですの?」
「いや、特にはないな…」
「ご結婚は…なさらないのぉ?」
「魔獣討伐が忙しいしね…あんまり考えたことないな…」
「そうなん、ですのね…素敵ですのにぃ…もったいないですわぁ」
「ミラディナが、お嫁さんになってくれるのかい?」
「嬉しいですわ!いいんですの?…あっ!うふふっ、
いやだわぁ、揶揄ってますのねぇ?」
「私が嫌い?」
「いいえ、大好きっですわっ!」
「じゃあ、結婚してくれる?」
「はいっ!」
そして、元気に返事をすると彼女は、コテンッと眠ってしまった。
私の隣で安心しきって無防備に眠るミラディナを見て、
私は、彼女の父と兄にある相談を持ちかけた。




