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【完結済】ミラディナは恋することをやめた   作者: 米野雪子


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13/17

エリアの孤立




「叔父様、ごめんなさい。私、昨日…眠ってしまったのね」


「ああ、うっかりワインを飲んでしまってね。

 体は何ともないか?」


「はいっ。何だかスッキリしてます」


「そうか。それなら良かった。今日は祭りは、やめておくか?」


「行きます!まだ見ていない屋台が沢山ありますもの!」


「分かった。ただし、ワインはやめようね?」


「はい…ごめんなさい」


「ふふっ、もう少し大人になったら、酔わない上手な飲み方を教えるよ」


「本当?約束よ?」


「うん。ところで、ワイン飲んだ後のことは覚えている?」


「いいえ、全く…あっ、私何かご迷惑をお掛けしました?」


「いや、全然大丈夫だ。気にしなくていい」



ミハイル叔父様…優しい…



でも、私が姪だからよね。

彼から見たら、私なんて子供だろうし。



…何だか…私、変だわ…

どうしてこんなに叔父様に、ドキドキしてるのかしら。



叔父様は、1週間のお祭り期間中に沢山私に買ってくれた。

ブドウ柄が編み込んである美しくシックなリボン、

花と葡萄を組み合わせた陶器の宝石みたいな髪留めとブローチ、

ブドウの房がぶら下がってゆらゆら揺れる綺麗なガラスのイヤリング、

青紫と赤紫のガラスが交互に並んだ、ぶどうをイメージしたブレスレット。


私は、自分用にブドウジュース1本、

お父様とお兄様にワインを2本お土産に買った。


そして、お世話になった叔父様にこっそり買っておいた

銀で出来た格好いい細工のブドウのブローチをお礼に渡すと、

叔父様は凄く喜んでくれて、騎士服の勲章の横に付けてしまった。

栄誉ある勲章と並べないで欲しいとお願いしたが、

何よりの宝物だし、お守りにすると言って聞いてくれなかった。


初めて参加したお祭りは、楽しいことだらけで、

王太子妃辞退の苦い思いは、お祭りの思い出で塗り替えられていた。


辺境はブドウ祭りが終わると、冬が来る前に毎年恒例の魔獣討伐があり、   

叔父様も討伐遠征がある為、そちらの準備で忙しくなる。


また年末に本家領地で親族で集まって、新しい年を迎えられるよう無事を祈り

再び会う約束をして、私は本家領地へ帰った。




* * * * * * *




最近、周りの反応がおかしい。


前から一部の貴族から、敵意を向けられていたけど、

そんなの比じゃない程、ほとんど全員から凍てついた空気がこちらに刺さる。



「ねえ、ブラッド殿下はどこ?誰か知らない?」


「…………」



殿下のクラスで彼の行き先を尋ねて声をかけるが、

シンと静まり返る教室。


無視というより、拒否だった。


何よこいつら。

あたしが殿下のお気に入りだからって妬んでるわけ?

ふん、下らない嫉妬ね。大丈夫、あたしは気にしない。いつものことよ。


ニコニコ笑って愛嬌を振りまいて、相手を肯定してあげて、

承認欲求を満たしてあげれば、男なんて簡単に落とせる。

あたしのお母様だって、それで貴族のお父様を落として

平民から成り上がったんだから。


お母様と同じで、あたしは可愛いし愛嬌がある。


夕焼けみたいなオレンジの髪にハニーブラウンのクリッとした瞳。

小柄で守ってあげたくなる擁護欲が湧く存在。

この女の武器があれば、教養やマナーなんて必要ないんだから。


ただし、この方法が通用するのは若い時だけだ。

だから、早くいい条件のパートナーを見つけないとね。

相手がのぼせ上せがってあたしに夢中なうちに、

既成事実を作れば逃げられなくなる。


だから、貴族学院で王太子が同学年でラッキーだったわ。

今は何だか格好つけて自分の身分を気にして私を拒否してるけど、

彼も所詮男だもの。絶対あたしを選ぶに決まっている。

あと一押しなのよねぇ。


男爵令嬢のあたしが王妃になったら、世論がひっくり返る。

身分差を乗り越えた、真実の愛を貫いた王妃。

全国民の羨望の眼差しを浴びて私はヒロインになる。

そして、低位貴族だからって馬鹿にしていた奴らを傅かせてやるわ。



「ねえ、未来の王妃に無礼じゃなくて?

 後で後悔することになるわよ」



貴族令嬢らしく自信満々に言い放つと、

ボソボソと何か言っているのが聞こえてくる。



「…何だ、あれ。聞いたか?」


「本当に何様ですの?たかが男爵令嬢如きが」


「王太子殿下と少し懇意になったからって、まさか王妃気取り?」


「どう考えても、愛妾止まりの卑しい身分だろ。いい気なもんだな」


「どれだけご自分に自信があるのかしら?恥知らずにも程があるわ」


「まさか、ミラディナ公爵令嬢に勝ったとでも?

 あの方の足元にも及ばない、教養のカケラも無い平民風情の成り上りが?」


「王妃ですって…まあ、おかしいっ。何の冗談かしらっ。ふふっ」



ヒソヒソヒソ…

クスクス



次々出てくる侮辱と失笑に、周りを見渡すが、

いつも庇ってくれる取り巻きがいないせいで、

自分が笑い者になっていると気がつき、カッと顔が熱を持つ。


そして、悔しさを覚えつつ分が悪い今の状況を理解して、足早に教室を出る。


最近、あの女…ミラディナの姿が見えないと思ったら、この状況。


前は身分違いを超えた殿下との関係に、

観劇や小説の世界みたいだと憧れて、応援してくれる人達もいたのに。



それなのに、何なのこれ… 



ブラッド殿下も急に冷たくなったし…

きっとあの女が権力でも振りかざして、裏で圧力かけているんだわ…


こうなったら、正々堂々はっきり言ってやる。

卑怯なことするなって!



実際、妃候補のミラディナ嬢への冷徹な態度と一方的な断罪と浮気で、

優しいはずの王太子の評判は、学院内でガタ落ちしていた。


そして、王太子妃候補達からもそっぽを向かれ、

学院に姿を現さなくなったミラディナ嬢。

何が起こっているのか、大体の者達は察している。


面倒ごとに巻き込まれて加害者側になるのは遠慮したい、

貴族令息と令嬢たちは、様子を見ながら、

王太子とエリア嬢から距離を置いている状況だった。


そんな最中に、いつも通り我が物顔で王太子に付き纏っている、

低位貴族の男爵令嬢にいい印象などなく、孤立するのは当然の結果だった。




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