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4-3:接触


翌朝、大洲、滴、綿花の3人は港区の怪しいビルを調査していた。表向きは一般企業のオフィスビルだが、警備が異常に厳重だ。

3人は向かいのビルに登っていた。大洲は屋上の段差に片足をかけ遠くのビルを食い入るように観察している。その堂々とした姿勢に、綿花は思わず見惚れてしまう。


「あそこか」

大洲は鋭い視線でビルを見つめた。


「政府関係らしき人物が出入りしている。あのバッジが見えるか?」

「ええ」

「中に入れるでしょうか?」

綿花が尋ねる。


「いや、まずは情報収集だ。重要人物を見極めて話を聞き出すつもりだ。闇雲に侵入したところで無駄足になる。田島の情報だと施設は3ヶ所あると言っていた、その内2つはダミーである可能性が高い」

大洲は冷静に判断した。


「それにしても、警備員の数が多いですね」

滴が静かに指摘した。


「ああ…。あの数を相手してたらキリがない。だからこそまずは、外で情報を得る必要がある」

その時、ビルから黒いスーツの男性が出てきた。


「あの男を尾行する。重要な情報を握っていそうだ」

「あの人ですか…何でですか?」

綿花が尋ねる。


「第一印象が只者ではないと俺の勘が騒いだ。探偵とはそういう経験をも判断材料にして動くべきだと俺は考えている」

「な、なるほど…?」

綿花は大洲の言葉を信じるしかなかった。彼の目には何が見えてるのだろうか?不思議でならなかった。

ひとまず、3人は慎重に男の後を追っていく。

男は次第に人通りの少ない路地に入っていった。


「チャンスだな」

大洲は滴と綿花に合図した。


「お前たちは見張りを頼む。俺が直接話を聞く」

「1人でですか?危険では?」

「心配するな」

心配する綿花を強引に納得させた大洲は、路地に入っていき男性に近づいていく。


「すみません、よければ道を聞いてもいいですか?」

男性が振り返る。しかし、その表情は警戒に満ちていた。


「さては…尾行してたな?バレバレだ」

男性が突然柔術の構えを取った。それを見て大洲は不敵に笑う。


「ほう?」

男性は不意をつくように、回し蹴りを繰り出した。しかし大洲は足をヒョイとあげて、軽々と避ける。


「やるな」

男性は続けて関節技で大洲を制圧しようと襲いかかる。しかし大洲は並外れた腕力で男性の攻撃を受け止めた。


「なっ!?びくともしない…だと」

「甘く見るなよ」

大洲は男性の腕を掴むと、圧倒的な力でねじ伏せた。


「ぐああああ!」

男性は大洲の膂力に屈服し、さらに人気のない場所まで引きずられていく。


「あんた、裏の人間だろ?」

「な、何のことだ?」

「とぼけるな。最近誘拐された探偵について洗いざらい吐いてもらうぞ」

「俺は知らん!」

大洲は腕に力を込めて、男性の首に爪を食い込ませる。


「ぐあっ!」

「昨夜、あの霊園で何があった?」

男性の顔が青ざめた。


「なぜそれを…」

「やっぱり、知ってるじゃないか」

大洲は圧力を強めた。


「勝手にボロを出した自分を恨め」

男性は愕然とした。


「くそ…姑息なマネを」

「さあ吐け。俺の親友をどこに連れて行った?」

掴む力を徐々に上げていく大洲に、男性はついに観念した。


「港区にはいない…新宿だ」

「新宿のどこだ?」

「歌舞伎町2-××-×、××ビル…地下に施設がある」

「そうか、もう用済みだ。眠ってろ」

大洲は男性の後頭部を殴って気絶させると、滴と綿花の元に戻った。


「情報を聞き出せたぞ」

「どうやって?」

滴が怪訝そうに尋ねると大洲はニヤリと笑う。


「企業秘密だ」


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